完璧な子育てを目指さなくていい。親はもっとわがままに“自分の幸せ”を追求しよう
かつてないほどに教育熱が高まっているいま、多くの親が、よりよい子育てをしようとたくさんの教育情報に触れています。でも、そのことの危険性を指摘するのが、スクールカウンセラーの経験も豊富な心理学者である、明治大学文学部教授の諸富祥彦先生。「完璧な子育てをしようとすることなどではなく、親は自分の幸せを追求することがなにより大切」と諸富先生は語ります。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
親が自己否定に陥りがちな現代の情報化社会
現在の情報化社会のなかでわたしが懸念しているのが、親が自己否定に陥ってしまうという問題です。いまは、ママタレントと呼ばれる芸能人の子育てブログなど、あらゆるところから子育てや家庭教育の情報が入ってきます。そうして、「わたしの子育ては不十分じゃないのか……」というふうに不安になってしまう親が増加しています。
その根底にあるのが、少しでも他人より優位に立ちたいという心理です。
これは、学生時代の学業や部活となんら変わりません。勉強でまわりより少しでもいい成績を残したい、部活でまわりより少しでも活躍したい。そういう願望を多くの人が持っていたはずです。そして、子育てでも同様に、「わたしは他人よりいい子育てをしている」と感じ、安心したいと思うようになるのです。
でも、そう感じるためには他人と比較することが必要となってきます。すると、安心するどころか、逆に「わたしの子育ては不十分じゃないのか……」と不安を感じ、自己否定に陥ることになってしまう。
そうならないために意識してほしいのは、「完璧な親なんていない」ということ。どんなに完璧に見える親も完璧ではありませんし、そもそも完璧になる必要なんてないのです。
これは、『Nobody’s Perfect』というカナダで生まれた親向けの教育支援プログラムの名称にも表れている考え方です。1980年代にはじまったこのプログラムは、親たちがグループのなかで互いの経験や不安を語り合うことで子育てのスキルを高めること、そしてなにより自信を取り戻すことを目的としています。子どもをしっかりと導いていくべき親が自信を失って不安になっていては、いい子育てができるはずもありません。
子どもを目一杯愛して、親ばかになってもいい
そして、「完璧な親なんていない」ということと同時に、子育てのゴールというものも意識してほしいと思います。