任せて、失敗させて、考えさせる。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎
少子化が進んだいま、限られた数の子どもに愛情をたっぷり注ぐ親が増えていることで、新たな問題が生じています。それは、「子どもが失敗をしないようにする親」の増加です。失敗をしないことは悪いことではないようにも思えますが、いったいなにが問題なのでしょうか。教育ジャーナリストとして活躍する、中曽根陽子さんに教えてもらいました。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)
子どもに失敗させまいとするのは、親が「安心したい」だけ
子どもが失敗することがわかっていて、みすみすその道を進ませるのは忍びない――。子どもに失敗させたくないというのは、我が子を思う親として当然の感情であり、親が持つ本能ともいえます。ただ、その感情の裏にあるのはなにかというと、多くは親自身が「安心したい」という気持ちのように思うのです。
いまは世の中の先行きが不透明な時代です。だからこそ、自分が受けてきた教育や体験をそのまま子どもに与えるだけでは通用しないということも親は薄々感じています。すると、「学歴をつけておけばいい」というふうに、「これをやらせておけばいい」といった策が見つからないということになる。その不安を解消して自分が安心したいがために、「せめて子どもがなるべく失敗しないですむようにしたい」という発想に至るのだと思います。「わたしの子どもは失敗しないから、子育てや家庭教育がうまくいっている」と感じたいわけです。
そう考えると、子どもに失敗させまいとして取っている言動も含め、自分の言動の裏にある親自身の気持ちをときどき振り返ることが大切になってきます。「いまの言葉かけや行動は、本当に子どものためのものなのか?」「そもそも自分が安心したいだけではないのか?」というふうに疑問視するのです。
子育てに追われる忙しい生活のなかでは、どうしても目先のことばかりに目が向きがちですが、自分自身を俯瞰することはとても大切です。
困難に立ち向かう力は、失敗からしか学べない
でも、なぜ親が安心したいがために、子どもに失敗させまいとすることがよくないのでしょうか?親が安心することがよくないわけではありません。子どもに失敗させまいとすることがよくないのです。なぜなら、失敗の経験から子どもは多くのことを学び、たくましさを身につけていくからです。
新型コロナウイルス感染の拡大という事態で、世の中は一気に変化を余儀なくされています。