2030年、79万人のIT人材が不足する!? 「論理的思考力」が必要なこれだけの理由
思い込みや経験則を離れ、科学的なデータを重視する「エビデンス・ベースド」の考え方に立って、理数系教育を見つめ直してきた本連載。子どもたちの「ニガテ」の原因から、効果的な学習法、未来の学びの姿まで、算数にまつわるさまざまな知見をお伝えしてきました。
第14回目は視野を大きく広げ、「算数を学ぶことが、子どもたちの将来にどのように役立つのか」ということをお話ししたいと思います。
算数が「論理的思考力」の土壌を育む
「算数って、なんのために勉強するの?」
お子さまにこんな質問を投げかけられて、戸惑った経験のある方は多いのではないでしょうか。たしかに、算数で学ぶ単元のなかには、日常生活と直接結びつかないものも多いですから、お子さまが「こんな公式覚えても、テストでしか使わないじゃん!」「こんな複雑な計算、なんの意味があるの?」と言うのも、無理はありません。
算数は一見、ただ面倒な問題を解くだけの教科に思えますよね。でもじつは、算数を学ぶことによって身につけられる力は、今後どれだけ科学技術が進歩しても必要になってくる能力です。その能力とは「論理的思考力」。
論理的思考とは、物事をひとつひとつ筋道立てて、わかりやすく説明できるような考え方のこと。これは、直感や感情とは対立する考え方です。
たとえば、志望校を決めるとき、「この学校が気に入った!」「なんとなく好き!」と直感で決める人もいれば、「偏差値や家からの距離、学費などを考えると、この学校がいい」「将来〇〇になりたいから、そこにつながる学校にしよう」と論理的に考えて決める人もいます。
もちろん、お子さまが自分の将来を考えるうえで、直感と論理的思考のどちらが正しいか、ということは一概には言えません。ただ、周囲を説得したいときには、論理的思考を経ているかどうかが大きな意味をもってきます。理由がしっかりしているほうが、多くの人を納得させられるからです。
たとえば、文章題を解くときのことを考えてみましょう。式を立てるには、問題文の要素をひとつひとつ分析し、検討して、適切に組み合わせることが必要です。
「なんとなく」で立てた式では、正しい答えは導かれませんね。算数・数学では、「文章を式にして落とし込む」トレーニングが繰り返し行なわれます。これはまさに、論理的思考の訓練です。分析的に物事を考え、それを適切に使って式を立てることによって、のちの論理的思考の土台がつくられていくのです。