「 “なりきり” の魔法」で子どもの自信が育つ! 家庭でできる5つのアイディア|「キッザニア白書2025」の調査から
子どもは “なりきる” ことで、ぐっと伸びる瞬間がありますよね。エプロンをつけただけで小さなシェフの顔になったり、名札をつけた途端に自信満々になったり──。
じつはこうした「なりきり」は、子どもの自己効力感(できると思える気持ち)を高める大事なスイッチです。そしてこのたび、ユニフォームのような “リアルさ” のあるアイテムが、子どもの意欲や自信を押し上げることが、キッザニア ジャパン(KCJ GROUP 株式会社)が実施した3か国比較調査で実証されました。
この記事では、「キッザニア白書2025」に掲載された、ミシガン大学グレゴリー・ローレンス教授監修の国際調査をもとに、「ユニフォーム・マジック」と呼ばれる効果のしくみを解説。さらに、キッザニアで実証された「なりきり体験」の力を、家庭でも活用するための5つのヒントを紹介します。
※本稿は、ミシガン大学グレゴリー・ローレンス教授とKCJ GROUP(キッザニア ジャパン)アカデミーラボによる国際調査をもとに、家庭での実践を加えて編集部で作成しました。研究全文は「キッザニア白書2025」でご覧いただけます。
なお、KCJ GROUPでは、大学・大学院などの教育機関や専門家の皆さまと共同研究を実施し、その結果を「キッザニア白書」として 2014 年に創刊以来、発行を重ねています。
グレゴリー・ローレンス教授とキッザニアが名付けた “ユニフォーム・マジック“
ミシガン大学のグレゴリー・ローレンス教授がキッザニアで、ユニフォームを着た子どもたちが輝いて見えることに注目し、2024年に日本・韓国・メキシコの3カ国・1,443名の子どもを対象にした国際調査を実施しました。
その結果、ユニフォーム着用が子どものチームワークに関する自己効力感を大きく高めることが統計的に実証。その結果から、「リアル」を感じられるセッティングが重要だということが見えてきました。たとえば、ユニフォームを着ることで、年齢とは関係なく、自信のスイッチが入る、と考えられます。
「キッザニアのような本格的な環境がないと難しいのでは?」──心配はいりません。家庭でできる工夫はたくさんあります。今日からできる、子どもの自信にスイッチを入れる、効果バツグンな “なりきり” アイディアを5つご紹介します。
なりきりアイディア① 「役割アイテム」を用意する── これがまさに “ユニフォーム・マジック”
グレゴリー・ローレンス教授とキッザニアの調査チームが名付け、今回の調査で実証された「ユニフォーム・マジック」。その効果は驚くべきものでした。
調査では、ユニフォームを着ることで「自分がその会社の一員だと感じた」という回答が大幅に増加しました。統計分析では、ユニフォーム着用によりチームワークに関する自己効力感の説明力が約50%向上しました。つまり、その役割に適したリアルなアイテムを身に着けると、子どもの「できる」という感覚がより大きくなるといえるでしょう。
全部そろえる必要はありません。大切なのは「完璧さ」ではなく「リアルさの感覚」。お手伝いについても、部分的なアイテムを揃えてみると、子どもにとって「リアル」と感じられれば、「自分も役に立てる」「家族の一員だ」という実感が湧いてきます。
たとえば、
- クリップ式名札
- エプロンや三角巾
- 帽子
- 軍手やヘルメット
- 小さなポーチなど
大事なのは、それらしく見えること。100円ショップで手に入るもので十分です。子どもの五感はとても鋭いもの。リアルであること、本気であることが、ポジティブな影響を与えます。
キッザニアでは、企業ロゴ、素材、道具など、丁寧に作り込まれたユニフォームをパートナー企業さんとしっかり話し合って用意しています。
身の安全を守るための道具、軍手やヘルメットなども子どものモチベーションをあげる道具の一つ。「危ないから使わせない」のではなく、「危ないけど一緒に使ってやってみよう」という姿勢で取り入れてみるのはいかがでしょうか。
なりきりアイディア② 呼び名を変えて “大人扱い” する
キャリア教育の専門家によると、役割を与えられると「責任」や「期待」が生まれ、子どもが主体的に動き出すと示されています。
今回の調査でも、キッザニア来場後に子どもたちの協力意識が向上したことがわかり、それに伴い主体性も高まることが考えられます。
アイテムを用意したら、次は言葉がけです。呼び名を変えるだけで、子どものなかで “役割モード” のスイッチが入ります。
- 店長さん、今日の準備はどうします?
- シェフ、食材のチェックお願いします
- 先生、今日の出席カードはこちらです
「ちょっとやってみたら」「面白いと思うよ」といったポジティブな声かけも効果的です。
キッザニアでは、建物、車、道具──すべてが子どもサイズ。街の構造自体が「自分が主役の舞台」になっています。大切なのは、子どもをひとりの人間として向き合うこと。大人と対等な個人として自覚することで、子どもは自ら考え、動き出します。
一人ひとりがもつ “らしさ” を認めてあげることが、何より大切です。
なりきりアイディア③ 家族の一員としての「役割」を与える
今回の調査では、キッザニアでの体験後に、3カ国すべてで「他の人と協力できた」と答えた子どもが増加しました。役割をもつことで、責任感と協力する意識が育つと考えられます。
日常のお手伝いを、少し言い換えるだけで立派な「仕事」に変わります。ポイントは、毎日または定期的に行なうお手伝いを「その子の仕事」にすることです。
- お皿係:食事の前後にお皿を運ぶ
- お布団係:毎朝お布団を整える
- 洗濯係:洗濯物を取り込んでたたむ
- ゴミ係:ゴミをまとめてゴミ箱に入れる
成果を認めるときも、「お皿運んでくれてありがとう」ではなく、「お皿係さん、完璧です!」と役割として評価してあげましょう。
キッザニアでは、子どもたちはロールプレイングによる職業・社会体験を通して、自分の行動と責任について学ぶことができます。またキャリア教育の先生によると、子どもたちに役割をもってもらうことがキャリア教育につながることがわかっています。
ご家庭でも、その子がやらないと回らない役割があることで、家族の一員であることを自覚でき、責任感も自己効力感も育まれるように思います。
なりきりアイディア④ 「振り返り」で考える癖をつける
「キッザニア白書2021」の調査では、キッザニアでの自立経験が自己効力感を高めることが示されました。その鍵となるのが「振り返り」です。仕事の後、お手伝いの後には、必ず「どうだった?」と振り返る時間をつくりましょう。
- どこがよくできた?
- どこが難しかった?
- 次はどうしたい?
- 何か発見はあった?
大切なのは、親が答えを与えるのではなく、子ども自身に考えさせること。「こうすればよかったのに」と道筋を示したくなりますが、ぐっとこらえて見守ります。
キッザニアでは、仕事の後に必ず振り返りをして客観的に自分自身を見てもらいます。そして、スーパーバイザー(スタッフ)からフィードバックをするのですが、きっとそれは本人の自信にもつながります。
お子様を観察してみて、その子らしさをぜひ発見してほしいです。
また、考える癖をつけることで、子どもは「自分の好き」を見つけられるようになるのではないでしょうか。
なりきりアイディア⑤ 「お給料」や「ごほうび」の使い道を自分で決める
調査のテキスト分析では、子どもたちのなかで「働く」ことがポジティブな感情と結びついていることが明らかになりました。このポジティブな感覚をさらに育てるのが、「自分で決める」という経験です。
働いて得たお金やポイントを「どう使うか」「何のために貯めるか」を子ども自身が選ぶことで、働くことが単なるタスクではなく、自分の人生を形づくる行動になります。
この「働く→得る→自分で選ぶ」という一連の流れが、主体性と計画性を育てます。家庭でも、子どもが選択できる余地をつくることで、お手伝いは「自分の未来をつくる行動」に変わります。
- 目標を決めて貯める
「何が欲しい?」「いつまでに貯める?」と子ども自身に計画を立てさせる - 使い道を3つに分ける
「今使う」「貯める」「人のために使う」など、使い道の配分を考える習慣 - 使った後に振り返る
「買ってどうだった?」「満足した?」と、お金の使い方を見直す機会をつくる
大切なのは金額や物ではなく、「自分で決めた」「自分で選んだ」という体験そのもの。この経験が、働くことへの主体性と、お金を管理する力を同時に育てます。
キッザニアでは、独自通貨「キッゾ」で経済が機能しています。働いて得たキッゾで、買い物をしたり、銀行にお金を預けたり、キッザニア東京では、株式投資をして学ぶこともできます。自分で稼いだ「キッゾ」をどう使うかも自分次第なのです。
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なりきりアイテムは、子どもの自己効力感を押し上げる強力なスイッチです。
- 役割アイテム → “役に立てる” という実感
- 呼び名の変更 → “大人と対等であるという自覚” が生む主体性
- 家族の役割 → “任されている” という責任感
- 振り返り → “自分を知る” という自己認識
- 自分で選ぶ・決める → “自分で決める” という自己決定の力
キッザニアでの「ユニフォーム・マジック」の要素を、ご家庭の日常にもぜひ取り入れて、子どもに「自分はできる!」という感覚を育んでみてはいかがでしょうか。次のお手伝いに、小さな “なりきり” を添えてみると、子どもの新しい表情が見えてくるかもしれません。
© KCJ GROUP「キッザニア白書2025」
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