料理する子は「先を読める子」になる! 計画力・時間管理能力が育つキッチン体験
朝、歯磨きしているとき「給食袋も用意しておこう」と思い出す。宿題で「漢字は時間がかかるから先にやって、計算ドリルはあとで」と順番を考えられる、遊びで「雨が降りそうだから、早めに片付けよう」と行動できる——。こんなふうに動ける子は、「先を読む力」が育っています。
じつは、この力を育てるのに最適な場所のひとつが、毎日のキッチンなのです。料理を通じて、子どもの脳は自然に「計画力」や「段取り力」を鍛えていきます。今回は、料理と子どもの「先を読む力」の関係を、科学的根拠とともにご紹介します。
「先を読む力」って何?料理が子どもの脳を育てるワケ
「先を読む力」とは、全体を見渡して何が必要か把握し、順番を考えて効率よく動き、時間を逆算して間に合うように準備する力のこと。予想外のことが起きても、臨機応変に対応できる力も含まれます。
この力は、心理学や脳科学の分野で「実行機能」と呼ばれる脳の働きに関係しています。実行機能とは、目標を達成するために考えや行動をコントロールする力のこと。特に重要なのが「計画・組織化」「ワーキングメモリ(作業記憶)」「柔軟性」といった要素です。
では、なぜ料理がこの「先を読む力」を育てるのでしょうか?鳥取大学医学部教授の浦上克哉氏によると、料理は段取りが必要なため、脳が活性化し、実行機能を鍛えることができると言います。たとえば、夕食作りを考えてみましょう。
「今日は何をつくろう」と考え(目標設定)、「冷蔵庫に何が残っているかな」と思い出し(ワーキングメモリの活用)、「まず野菜を切って、そのあいだに肉を下味につけよう」と順番を考え(計画と優先順位付け)、実際に料理を始めます(課題の開始)。そして「あ、塩がない!」という予想外の出来事に対応し(柔軟性)、煮物の火加減を見ながらサラダもつくる(注意の持続と分配)——。
この一連の流れが、子どもの脳の「先を読む力」を自然に鍛えているのです。
料理の「段取り」が、勉強や生活すべてに活きる
料理における段取りとは、レシピを見て全体の流れを把握し、必要な道具や材料を揃え、どの工程から始めるか、何を同時進行できるか考えることです。「ご飯を炊くのに30分かかるから、そのあいだにおかずをつくろう」と時間を逆算する力も含まれます。
カレー作りで考える「先を読む力」
まず、レシピを確認して全体像を把握します。次に、野菜とお肉、調味料を冷蔵庫から出して準備。「玉ねぎは時間がかかるから最初に切ろう」と優先順位を考え、「野菜を煮込んでいる20分の間に、サラダも作れるかな」と時間の有効活用を思いつきます。そして調理中に「あ、ルーが足りない!カレー粉で代用しよう」とトラブルにも対応——。
こどもまなび☆ラボの料理体験の記事でも、子どもが包丁の使い方や火の扱い方を学びながら、複数の工程を組み合わせて料理を完成させる過程が紹介されています。「夏野菜たっぷりおかずマフィン」や「冷や奴のカリカリじゃこのせ」といったレシピを通じて、子どもたちは自然と段取りを考える力を身につけていくのです。
勉強や生活へ「先を読む力」を応用する
この段取り力は、勉強や生活のあらゆる場面でいきてきます。
- 宿題: 「漢字は時間がかかるから先に。音読は最後」と優先順位をつけられる
- 朝の支度: 「着替えながら今日の時間割を確認」と複数の作業を同時進行できる
- 夏休みの宿題: 「工作は時間がかかるから早めに、ドリルは毎日少しずつ」と計画を立てられるように
ライフコーチで非認知能力教育の専門家として知られるボーク重子氏も、子どもの自主性を育む上で「計画力」の重要性を指摘しています。料理を通じて身につけた「先を読む力」は、子どもが自分で考え、自分で動ける力の土台となるのです。
年齢別・子どもができる「先を読む力を育む料理体験」
では、具体的にどんな料理体験が、年齢に応じて「先を読む力」を育てるのでしょうか。
幼児期(3〜6歳):「次は何?」を意識する
この時期は、2〜3工程の短いレシピで「次は何するんだっけ?」と声かけをしながら進めましょう。
おすすめ料理おにぎり、サラダ、サンドイッチ進め方の例「ご飯をよそったね。次は?」
「そう、手を濡らして塩をつけるんだよね」目標順番を覚える、次にすることを予測する習慣をつける
この時期は、まだ複雑な段取りは難しいもの。
でも、「ご飯をよそう→塩をつける→握る」という簡単な流れを繰り返すことで、「次は○○だ」と予測する習慣が育ちます。
小学校低学年(6〜8歳):「同時進行」を体験する
少し複雑な料理にチャレンジし、「○○している間に△△もできるよ」と提案してみましょう。
おすすめ料理カレー、お味噌汁、ホットケーキ進め方の例「お鍋がグツグツしている間に、テーブルにお皿を並べておこうか」
「ホットケーキを焼いている間に、フルーツを切っておくと早いよ」目標複数の作業を組み合わせる、待ち時間を有効活用する
こどもまなび☆ラボ食品メーカー取材記事でも、子どもが料理をすることの重要性を繰り返し紹介しています。子どもが主体的に調理に関わることで、自然と「次は何をすればいいか」を考える力が育つのです。
小学校中学年(8〜10歳):「時間を逆算」して計画する
この年齢になると、時間の概念がしっかりしてきます。「6時に食べたいから、5時半には作り始めないとね」と、ゴールから逆算する練習をしましょう。
おすすめ料理炒飯とスープのセット、パスタと副菜進め方の例「パスタを茹でるのに10分。その間にソースをつくろう。
サラダは先につくっておけるね」
「ご飯を炊くのに30分。その間におかずを2品つくれるかな?」目標ゴールから逆算して計画を立てる、時間内に複数のタスクを完了する
10歳頃までに、こうした「時間を意識した段取り」ができるようになると、中学受験の勉強計画や、将来の仕事での時間管理にも大いに役立ちます。
「先を読む力」を伸ばす!子ども料理の3つのコツ
最後に、料理を通じて子どもの「先を読む力」をより効果的に伸ばすコツをご紹介します。
1. 最初に「全体の流れ」を一緒に確認
料理を始める前に、レシピを最初から最後まで一緒に読みましょう。「どんな順番でつくるか、イメージできた?」と声をかけることで、「見通しをもつ」訓練になります。
この習慣は、宿題や予定を立てるときにも応用できます。「まず全体を見る」癖がつくことで、あとから「あ、これ忘れてた!」という失敗が減っていきます。
2. 「次はどうする?」と考えさせる声かけ
指示を出しすぎず、子ども自身に考えさせることが大切です。
「お鍋が煮えるまで5分あるよ。何かできることある?」と問いかけてみましょう。
自分で判断する経験の積み重ねが、「先を読む力」を育てます。最初はうまくいかなくても、「そっか、お皿を出しておけばよかったね。次からやってみよう」と前向きに声をかけることで、子どもは学んでいきます。
3. 失敗も大切な学び
順番を間違えた、時間が足りなかった——そんな失敗は誰にでもあります。大切なのは「次はどうすればうまくいくかな?」と一緒に振り返ること。
トライ&エラーの経験が、子どもの脳を育てます。
実行機能は、失敗から学び、次に活かす力も含んでいます。料理での小さな失敗が、子どもの成長の大きな糧になるのです。
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料理は、「先を読む力」を育てる最高の教材です。毎日の食事作りが、子どもの将来の「計画力」「時間管理能力」につながっていきます。10歳までに身につけた段取り力は、中学受験や将来の仕事でも必ず役立ちます。まずは週末、親子で一品作ることから始めてみませんか?キッチンでの体験が、お子さんの「先を読む力」を大きく育ててくれるはずです。
(参考)
Active Brain CLUB|調理は認知機能をアップさせる
石井由紀子 著(2017),『こどもキッチン、はじまります。』, 太郎次郎社エディタス.
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを成長させる料理体験を!『夏野菜たっぷりおかずマフィン』
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|包丁は本物を。熱の危険は”温度体験”で覚える。『冷や奴のカリカリじゃこのせ』
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|親と子が一緒にキッチンで料理をすることが大事【食のまなび探検隊「キユーピー(株)」その3】
鳥取大学医学部|判断力や実行機能を鍛えて 認知症を予防しましょう。
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