長期休みの「暇」が創造力を伸ばす——予定を詰め込みすぎない冬休みのすすめ
冬休みに入ると、「何かさせなきゃ」と焦っていませんか?
帰省、習い事の特別レッスン、クリスマスイベント、年末年始の集まり……。気づけばカレンダーが予定でびっしり。子どもが「暇だ〜」と言い出すと、なんだか不安になってしまう。
でもじつは、その「暇」こそが子どもの脳にとって大切な時間なのです。
脳科学の研究では、「何もしていない時間」が創造性やひらめきを育てることがわかっています。今回は、予定を詰め込みすぎない「余白のある冬休み」のすすめをお伝えします。
なぜ親は子どもの「暇」を埋めたくなるのか?
「暇=無駄な時間」「何もしていない=成長していない」——それは親の思い込みです。SNSを開けば、ほかの家庭の「充実した冬休み」の投稿が目に入ります。
旅行、体験教室、イベント参加……。「うちも何かさせなきゃ」という気持ちになるのは自然なことです。
子どもに「暇だ〜」と言われると、親として何かしてあげなければと感じてしまう。つい予定を入れたり、動画やゲームを与えたりしてしまいがちです。
しかし、子どもにとっての「暇」は、大人が思う「暇」とは違います。子どもの「暇」は、次の行動を自分で考え始める準備時間。大人が先回りして埋めてしまうと、その貴重な機会を奪ってしまうことになるのです。
なぜ「暇」が子どもの脳に大切なのか?
「ぼーっとする時間」に脳で起きていること脳は「何もしていない」ときも、じつは活発に動いています。
この状態を「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼びます。*1
DMNは、外からの刺激がないときに活性化する脳のネットワークです。ぼんやりしているとき、空想にふけっているとき、何も考えていないように見えるとき——じつはこのときこそ、脳は重要な仕事をしています。
DMNが活性化すると起こること:
- 創造性・ひらめきが生まれやすくなる
- 記憶の整理・定着が進む
- 自己内省——自分の気持ちや考えを振り返る力が育つ
- 問題解決のアイデアが浮かびやすくなる
常に刺激を与え続けると、DMNが働く時間がなくなります。動画、ゲーム、習い事……次から次へと刺激を受け続ける生活は、脳にとって「休みなく働き続けている」状態なのです。
「退屈」が創造性のスイッチを入れる
「退屈」というと、ネガティブなイメージがあるかもしれません。しかし研究では、退屈が創造性を高めることが示されています。*2
イギリスのセントラル・ランカシャー大学の研究では、退屈な作業(電話帳の番号を書き写すなど)をした後のほうが、創造的なアイデアが多く出たという結果が出ました。
退屈 → 創造性が育つプロセス
退屈を感じる
↓
「何かしたい」と自分で考え始める
↓
工夫して遊びを生み出す
↓
創造性・主体性が育つ
動画やゲームなど「与えられた刺激」ばかりだと、子どもは受け身になります。退屈を感じ、自分で何かを生み出す経験こそが、創造性を育てるのです。
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冬休みに「余白」をつくる3つの工夫
では、具体的にどうすれば「余白のある冬休み」をつくれるのでしょうか。3つの工夫をご紹介します。
工夫1:1日に「何もない時間」を意識的につくる
午前中だけ、午後だけでもOKです。予定を入れない「空白の時間帯」を意識的に設定しましょう。カレンダーに「フリータイム」と書き込んでおくのも効果的です。
工夫2:「暇」と言われても、すぐに解決策を与えない
子どもが「暇だ〜」と言ったら、5分待ってみてください。すぐにスマホを渡したり、「じゃあ〇〇しなさい」と指示したりしない。「何したい?」と問い返すだけで、子どもは自分で考え始めます。
工夫3:親も一緒に「ぼーっとする」
親がスマホを見ていると、子どももスマホを欲しがります。一緒に窓の外を眺める、何もしない時間を共有する。親が「暇」を楽しんでいる姿を見せることで、子どもも安心して「暇」を過ごせるようになります。
予定を詰め込みすぎるとどうなる?
過密スケジュールの子どもには、いくつかの共通した傾向が見られます。
予定を詰め込みすぎた子どもに見られる傾向
・疲労やストレスが蓄積する
・「次は何?」と指示待ちになる
・自分で考える力が育ちにくい
・「やらされ感」で意欲が低下する
ベネッセ教育総合研究所の調査では、「忙しい」と感じている小学生は51.2%、「もっとゆっくり過ごしたい」と感じている小学生は74.2%にのぼります。
*3
冬休みは、学校生活で疲れた心と体を休める「充電期間」でもあります。この時期にまで予定を詰め込んでしまうと、新学期に向けたエネルギーが回復しません。
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よくある質問(FAQ)
Q. 暇になるとすぐ「スマホ貸して」と言われます。どうすればいい?
A. スマホやタブレットは「暇つぶしの道具」ではなく「特別なもの」として位置づけましょう。「〇時から〇分だけ」とルールを決め、それ以外の暇な時間は自分で考えさせます。最初は不満を言いますが、次第に別の遊びを見つけるようになります。
Q. 予定がないと「つまらない」と不機嫌になります。
A. それは「暇に慣れていない」サインです。
最初は短い時間から始め、少しずつ余白の時間を延ばしていきましょう。不機嫌になっても、すぐに予定を入れたり娯楽を与えたりせず、「つまらないって感じるんだね」と気持ちを受け止めるだけでOKです。
Q. 兄弟がいると、暇になるとケンカが始まります。
A. これも自然なことです。ケンカも「暇から生まれる体験」のひとつ。危険でない限り、すぐに介入せず見守りましょう。ただし、それぞれが一人で過ごせる場所や時間を確保することも大切です。
Q. 祖父母が「かわいそう」と言って予定を入れたがります。
A. 祖父母世代には「暇=かわいそう」という感覚がある方も多いです。「最近の研究で、暇な時間が脳の発達にいいとわかっているんです」と伝えてみましょう。この記事を見せるのも一つの方法です。
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「暇にさせる=放置している」と感じてしまうかもしれません。でも、それは違います。見守っている。いつでも話を聞く姿勢がある。それだけで十分です。
子どもは暇な時間なかで「自分で決める」経験を積んでいます。何をするか、どう過ごすか、自分で選ぶ。この積み重ねが、主体性や自己決定力を育てるのです。予定を「入れない」という選択も、立派な子育てです。むしろ、あえて余白を残す勇気が、子どもの成長を支えます。親子で一緒にぼーっとする時間。それがじつは、この冬休みで一番贅沢な過ごし方かもしれません。
(参考)
*1 Perspectives on Psychological Science|Immordino-Yang, M. H., Christodoulou, J. A., & Singh, V. (2012). Rest Is Not Idleness: Implications of the Brain’s Default Mode for Human Development and Education. 7(4), 352-364.
*2 Creativity Research Journal|Mann, S., & Cadman, R. (2014). Does Being Bored Make Us More Creative? 26(2), 165-173.
*3 ベネッセ教育総合研究所|第2回 放課後の生活時間調査 報告書(2013)
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