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黒豆は「まめに暮らす」、海老は「腰が曲がるまで」——おせちから学ぶ食育と日本文化

黒豆は「まめに暮らす」、海老は「腰が曲がるまで」——おせちから学ぶ食育と日本文化

「これ何?」「なんで黒い豆食べるの?」「この卵、なんでクルクルしてるの?」

元日の食卓で、おせち料理を前に質問攻めにあう——そんな経験、ありませんか?

「縁起物だから」「昔からそうだから」で終わらせてしまうのは、実はとてももったいないこと。おせち料理は、「食育」と「日本文化」を同時に学べる年に一度の最高の教材なのです。

今回は、子どもが「へぇ!」と目を輝かせる、おせちの声かけをご紹介します。

おせち料理は「願いの詰め合わせ」

おせちの一品一品には、先人たちの願いが込められています。*1 語呂合わせ、見た目、由来——すべてにストーリーがあるのです。
「まめに働けますように」「子孫が繁栄しますように」「お金に困りませんように」——おせち料理は、新年への願いを「食べ物」で表現した、日本人の知恵の結晶です。

「なぜこれを食べるのか」を知ることは、食育の入り口。そして、子どもに説明しようとすることで、私たち大人も改めて日本文化を学び直すきっかけになります。


黒豆は「まめに暮らす」、海老は「腰が曲がるまで」——おせちから学ぶ食育と日本文化


子どもに伝えたい「おせちの意味」と声かけ例


代表的なおせち料理の意味と、子ども向けの声かけ例をご紹介します。 「へぇ!」と興味を持ってもらえたら、食べてみたくなるかもしれません。

【祝い肴三種】お正月に絶対欠かせない3品
■ 黒豆

意味:「まめに働く」「まめに暮らす」(まめ=元気に、真面目に)

声かけ例:「『まめ』って『元気』って意味もあるんだよ。元気いっぱい遊べますように、だって」

■ 数の子

意味:子孫繁栄(卵がたくさん=子どもがたくさん生まれますように)

声かけ例:「ニシンっていう魚の卵なんだよ。卵がいっぱい=赤ちゃんがいっぱい生まれますようにってこと」

■ 田作り(ごまめ)

意味:豊作祈願(昔、小魚を肥料にして田んぼに撒いた)

声かけ例:「昔はこの小さい魚を田んぼに撒いてたんだって。なんでだと思う?」

【口取り・焼き物】彩り豊かな人気メニュー
■ 栗きんとん

意味:金運上昇(黄金色=お金・財宝)

声かけ例:「金色でしょ? キラキラのお宝みたいだから、お金持ちになれますようにって意味なんだよ」
■ 伊達巻

意味:学問成就(巻物=昔の本の形に似ている)

声かけ例:「クルクル巻いてあるでしょ? 昔の本は巻物だったから、賢くなれますようにって」

■ 海老

意味:長寿(腰が曲がるまで長生き、赤色=魔除け)

声かけ例:「海老さんの背中、曲がってるでしょ? おじいちゃんおばあちゃんみたいに長生きできますようにって」

■ 鯛

意味:めでたい(語呂合わせ)

声かけ例:「『たい』と『めでたい』、似てるでしょ? ダジャレみたいだよね」

【煮しめ】根菜に込められた願い
■ れんこん

意味:見通しがきく(穴から向こうが見える)

声かけ例:「穴がいっぱい開いてるね。向こうが見えるでしょ? 将来が見えますようにって意味だよ」

■ 里芋

意味:子孫繁栄(親芋に小芋がたくさんつく)

声かけ例:「里芋って、大きいお芋のまわりに赤ちゃんお芋がいっぱいつくんだよ。家族がたくさんって意味」

■ こんにゃく(手綱こんにゃく)

意味:縁結び、心を引き締める

声かけ例:「ねじってあるのは、みんなと仲良くできますようにって。
結ばれてるでしょ?」

黒豆は「まめに暮らす」、海老は「腰が曲がるまで」——おせちから学ぶ食育と日本文化

重箱の「段」にも意味がある

「なんで箱が何個もあるの?」——重箱にも意味があります。
正式なおせちは四段重。それぞれの段に入れるものが決まっています。


一の重:祝い肴、口取り(黒豆、数の子、田作り、かまぼこなど)

二の重:焼き物(海老、鯛、ぶりなど)

三の重:煮物(煮しめ、筑前煮など)

与の重:酢の物、和え物


ちなみに四段目は「四の重」ではなく「与の重」と呼びます。「四」は「死」を連想させるため、縁起を担いで「与」の字を使うのです。
「なんで『よん』じゃなくて『よ』なの?」——こんな質問が来たら、日本語や文化について話すチャンスですね。

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「食べなさい」より「選ばせる」

おせちを子どもが嫌がる——よくある悩みですが、無理に食べさせるのは逆効果です。
甘い黒豆や栗きんとんは食べるけれど、数の子や煮しめには手をつけない……。
そんな子どもは多いですよね。
こで「食べなさい!」と強制すると、おせち=嫌な思い出になってしまいます。

おすすめは「選ばせる」こと。

【選ばせる声かけ例】
・「この中で気になるの、ひとつ選んでみて」
・「れんこんと里芋、どっちが気になる?」
・「これ何だと思う?当たったら食べてみる?」
・「パパは海老にする。〇〇ちゃんは?」
由来を知ると、興味が湧いて食べてみたくなることもあります。筆者の子どもは、黒豆を「忍者が元気になるために食べてた」と言ったら、急に興味を持って食べ始めました(諸説あります)。

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おせち以外の正月文化も伝えるチャンス


お正月は、日本文化を伝える絶好の機会。 おせち以外にも「なんで?」のネタがたくさんあります。


【お正月の「なんで?」に答えるヒント】
お雑煮:地域によって丸餅・角餅、味噌・すましが違う。「おばあちゃんの家のお雑煮と違うね」から話が広がる
鏡餅:丸い餅を重ねるのは「円満に年を重ねる」という意味。鏡は昔、丸かった
しめ縄・門松:神様をお迎えするための目印。神様が来てくださる場所だという合図
お年玉:もとは「お年魂」。年神様の魂を分けていただくという意味だった
祖父母と一緒に過ごすなら、「おじいちゃんの家のお正月はどんなだった?」と聞いてみるのもいいですね。世代を超えた文化の継承が、自然と生まれます。

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よくある質問(FAQ)


Q. おせちを全然食べてくれません。どうすればいいですか?

A. 無理に食べさせなくて大丈夫です。
まずは「見る」「触る」「由来を知る」だけでもOK。栗きんとんや伊達巻など甘いものから始めて、「おせちって楽しい」という印象をつくりましょう。一品でも興味を持てたら成功です。


Q. 由来を聞かれて答えられないものがあります。

A. 「いい質問だね! ママもわからないから調べてみよう」で大丈夫です。一緒に調べる体験自体が学びになります。農林水産省のサイト「おせち料理ってどんな料理?」などが参考になりますよ。


Q. 市販のおせちでも食育になりますか?
A. もちろんなります。
手作りでなくても、「これは何?」「どんな意味があるの?」と話しながら食べれば、立派な食育です。重箱を開ける瞬間を子どもと一緒に楽しんだり、盛り付けの美しさを味わったりするだけでも価値があります。


Q. 何歳くらいから意味を教えるといいですか?

A. 3歳頃から「お豆さん、元気になれますようにって意味だよ」程度の簡単な説明ができます。5〜6歳になると語呂合わせの面白さがわかってきます。小学生なら歴史的な背景も少しずつ理解できるようになりますよ。


***
おせち料理は、年に一度の食育チャンスです。「なんでこれ食べるの?」という質問は、子どもが文化に興味を持った証拠。

「縁起物だから」で終わらせず、「〇〇って意味があるんだよ」と一言添えるだけで、食卓が学びの場に変わります。


今年のお正月は、おせちを「食べる」だけでなく「語る」時間にしてみてください。子どもの「へぇ!」という声が、きっと聞けるはずです。

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(参考)
*1 農林水産省|おせち料理ってどんな料理?
*2 農林水産省|おせちは一年の幸を願う料理。おせちを知って作ってみよう!
*3 一般社団法人和食文化国民会議|和食文化とは

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