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「負けると泣く」「ズルをする」——勝負にこだわる子どもの感情コントロールを育てる5ステップ

「負けると泣く」「ズルをする」——勝負にこだわる子どもの感情コントロールを育てる5ステップ

トランプで負けた瞬間にカードをぐちゃぐちゃにする。かけっこで1番になれないと泣きじゃくる。すごろくでこっそりサイコロを振り直す——。
「うちの子、負けず嫌いが強すぎるかも……」と感じたことはありませんか?

じつは、勝ち負けへの強いこだわりは、幼児期から小学校低学年の子どもにとってごく自然な発達の姿です。

しかし、泣く・怒る・ズルをするといった行動が繰り返されると、友だちとの関係にひびが入ったり、遊びそのものを楽しめなくなったりすることも。今回は、「勝負にこだわる子」の気持ちの背景を理解したうえで、感情コントロール力を段階的に育てる5つのステップをご紹介します。

「負けると泣く」「ズルをする」は、じつは”成長の証”


わが子が勝負のたびに泣いたり怒ったりすると、「わがままなのでは」「社会性が足りないのかな」と不安になる方もいるかもしれません。でも、まずはこの行動の裏にある子どもの心を理解しておきましょう。


幼児期から小学校低学年にかけては、スイスの発達心理学者ジャン・ピアジェが「前操作期」から「具体的操作期」への移行期と呼ぶ時期にあたります。

この段階の子どもは、まだ他者の視点に立つことが難しく、自分の気持ちが世界の中心にある状態です。「勝ちたい」という強い気持ちは、「自分の力を確かめたい」「認めてもらいたい」という自己肯定感の芽生えとも深く結びついています。 *1

また、ズルをしてしまうのは、「ルールよりも自分の感情が勝ってしまう」状態であり、脳の前頭前野が司る 実行機能(衝動を抑え、計画を立て、気持ちを切り替える力)がまだ発達の途上にあるためです。京都大学大学院の森口佑介准教授は、「実行機能は幼児期から児童期にかけて急速に発達する」と述べています。つまり、ズルをしたり泣いたりするのは、この力が「これから育つ途中」であるサインなのです。*2

大切なのは、負けず嫌いの気持ちそのものを否定しないこと。この気持ちは、将来の向上心や粘り強さの原動力にもなります。
問題なのは感情の「出し方」であって、感情そのものではありません。

「負けると泣く」「ズルをする」——勝負にこだわる子どもの感情コントロールを育てる5ステップ


感情コントロールを育てる5ステップ “その瞬間”から始める親の関わり方


ここからは、勝負の場面で親がすぐに使える5つのステップをご紹介します。一度にすべてをやる必要はありません。まずはステップ1から試してみてください。

ステップ1 |「悔しいね」と感情に名前をつける


子どもが泣いたり怒ったりしているとき、つい「泣かないの!」「負けたくらいで怒らないの」と言ってしまいがちです。しかし、こうした声かけは、子どもにとって「自分の気持ちは間違っている」というメッセージとして受け取られてしまいます。

まず最初にすべきなのは、子どもの感情をそのまま受け止めること。
「負けて悔しかったんだね」 「1番になりたかったんだよね」
たったこのひと言で、子どもは「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じ、興奮が少しずつ落ち着いていきます。


これは心理学で 「感情のラベリング(affect labeling)」 と呼ばれる手法です。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のリーバーマン教授らの研究では、感情に言葉のラベルを貼る行為が、脳の扁桃体(感情の暴走を起こす部位)の活動を鎮める効果があることが示されています。*3
重要ポイント「泣くな」と止めるのではなく、「悔しいね」と名前をつける。これだけで、子どもの感情コントロールの第一歩が始まります。

ステップ2 | 「体のどこが熱い?」と体の合図に気づかせる


感情を言葉で表現するのが難しい年齢の子どもには、体の感覚を手がかりにするのが効果的です。
「怒ったとき、体のどこが熱くなる?」 「お腹がギュッてなった?それとも手がグーになった?」
こんなふうに問いかけてみましょう。

子どもは「顔が熱い」「胸がドキドキする」「手がギュッてなる」など、自分の体で起きている変化に気づけるようになります。これは、感情を「心の天気」のように、目に見えるイメージに置き換える作業です。


怒りや悔しさという漠然とした感情が「体のサイン」として捉えられるようになると、「あ、いま自分は怒っているんだ」と一歩引いて自覚できるようになります。

この「気づき」こそが、感情に飲み込まれずに行動を選ぶ力、つまり感情コントロールの土台になるのです。

ステップ3 | 「落ち着きスイッチ」を平常時に一緒に練習する


ステップ2で「体の合図」に気づけるようになったら、次はその合図が出たときに使えるクールダウンの方法を親子で決めておきましょう。たとえば——

「負けると泣く」「ズルをする」——勝負にこだわる子どもの感情コントロールを育てる5ステップ

深呼吸 | 4秒吸って、4秒吐く(2回)

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グーパー体操 |両手をギューッ→パッ(3回)

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10秒 |目を閉じて、1〜10まで数える


大切なポイントは、怒っている最中にやらせようとしないことです。感情が爆発しているときに「深呼吸して!」と言っても、火に油を注ぐだけ。クールダウンの練習は、必ず穏やかなときに遊び感覚で行いましょう。
「今度トランプで悔しくなったら、どれをやってみる?」と子ども自身に選ばせるのもおすすめです。

自分で選んだ方法は、いざというときに実行しやすくなります。


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ステップ4 | 落ち着いたあとに「プロセス」を振り返る


感情が収まったあとが、じつは最も大切な学びの時間です。ここで親がすべきなのは、「悔しかったね。でも、最後まで走りきったのはすごいよ」 「途中であきらめないで最後まで勝負できたね」と、結果ではなくプロセスに目を向ける声かけをすること。

スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授が提唱する 「グロースマインドセット」 の考え方では、「才能」や「結果」ではなく「努力」「工夫」「挑戦」に注目する声かけが、子どもの成長意欲を高めるとされています。*4
「勝った・負けた」という結果から、「どうがんばったか」「次はどう工夫できるか」へ。視点を少しずらすだけで、負けた体験が「次こそは」という前向きなエネルギーに変わっていきます。
なお、ズルをしてしまった場合は、頭ごなしに叱るのではなく、「ルールを守って遊ぶと、勝ったときもっとうれしいよね」と、ルールを守ることのメリットを伝えるほうが効果的です。

ステップ5 |「勝ち負け」以外の楽しさを日常に埋め込む


ここまでのステップ1 〜 4は、勝負の「その瞬間」に対処するための方法でした。
最後のステップ5は、もう少し長い目で見た “土壌づくり” です。

勝ち負けにこだわりやすい子どもには、勝敗のない遊びを意識的に取り入れてみましょう。親子で一緒に何かをつくる工作、協力してゴールを目指すボードゲーム、自然のなかでの探検遊びなど、「楽しかった」「おもしろかった」という体験そのものが目的になる活動です。

たとえば、家庭内で「チャレンジカード」をつくり、「今日がんばったこと」を子ども自身が書いて貼るのもよい方法です。勝った日も負けた日も、「がんばった自分」を認められるようになります。

そしてもうひとつ、親自身が「負ける姿」を見せることも大切です。

じゃんけんやゲームで負けたときに、「あー、負けちゃった!でも楽しかったな」と笑って見せる。この何気ないふるまいが、子どもにとっては最高のお手本になります。


「負けると泣く」「ズルをする」——勝負にこだわる子どもの感情コントロールを育てる5ステップ


やってしまいがちなNG対応3つ


最後に、よかれと思ってやってしまいがちだけれど、じつは逆効果になりやすい対応を3つ挙げておきます。


1.「負けたっていいじゃない」と軽く流す

大人にとっては励ましのつもりでも、子どもにとっては「この気持ちをわかってもらえなかった」と感じる原因に。まずはステップ1の「悔しいね」で気持ちを受け止めてから、言葉をかけましょう。


2. わざと負けてあげる

一時的には笑顔になりますが、子どもは意外と鋭いもの。「本当は手加減してくれた」と薄々気づいてしまい、かえって自信を失う原因になることがあります。本気で勝負するからこそ、勝ったときの喜びも、負けたときの悔しさも本物になるのです。


3.「泣くなら遊ばないよ」と脅す

感情を出すこと自体を「悪いこと」として学んでしまい、将来的に感情を抑え込むクセがつく可能性があります。問題なのは「泣くこと」ではなく、「泣いたあとにどう行動するか」。感情の表出そのものを禁止しないようにしましょう。


「負けると泣く」「ズルをする」—— 親からすると困ってしまう行動の裏には、「もっと強くなりたい」「認めてもらいたい」という子どもの切実な気持ちが隠れているのです。

***
感情コントロールは、生まれつき備わっているものではありません。繰り返し練習することで少しずつ育っていく “スキル” です。
まずは今日、お子さんが悔しがったときに「悔しかったね」のひと言から始めてみませんか?その小さな一歩が、子どもの「負けても立ち上がれる力」をじっくりと育てていきます。

FAQ|よくある質問


Q1. 負けず嫌いは何歳くらいまで続くものですか?
A. 個人差はありますが、勝ち負けへの強いこだわりは4〜7歳頃にピークを迎えることが多いです。脳の実行機能が発達する小学校中学年(8〜10歳)あたりから、少しずつ感情をコントロールできるようになっていきます。ただし、「自然に治る」という意味ではなく、日々の関わりのなかで練習を重ねることで育っていく力です。
Q2. 「悔しいね」と共感しても、まったく泣き止まない場合はどうすればいいですか?
A. 共感の言葉は「泣き止ませるための魔法」ではなく、「気持ちを受け止めているよ」というサインです。すぐに効果が見えなくても、焦らず静かにそばにいましょう。「悔しかったね」と一度伝えたら、あとは無理に言葉を重ねず、子どもが自分のペースで落ち着くのを待つことが大切です。
Q3. きょうだいで勝負すると毎回ケンカになります。どう対処すればいいですか?
A. きょうだい間の勝負は、年齢差や能力差があるぶんトラブルになりやすい場面です。ハンデをつけて条件を近づけたり、「協力して親チームに挑む」形に変えたりするのも一つの手。また、記事で紹介した「勝ち負けのない遊び」を意識的に取り入れ、きょうだいで一緒に何かを作る・探す体験を増やすのも効果的です。
Q4. 「わざと負けてあげる」のは本当にダメなのですか?
A.  一時的には笑顔になりますが、子どもは意外と大人の手加減に気づいています。「本気じゃなかった」と感じると、勝っても達成感が薄れ、かえって自信を失う原因になることも。本気で勝負するからこそ、勝ったときの喜びも負けたときの悔しさも本物になります。ただし、あまりに実力差がある場合は、ルールにハンデを設けて「本気で勝負できる条件」を整えてあげるのがおすすめです。

(参考)
*1 | Kesselring, T. & Müller, U. (2011). New Ideas in Psychology, 29(3), 327-345.|The concept of egocentrism in the context of Piaget’s theory
*2 | STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|エビデンス多数あり。「目標を達成する力」のある子どもは幸せになる!*3 | STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どものいろいろな “イヤな気持ち” にどう寄り添う?「感情のラベリング」で育てる心の力
*4 | STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「まだ」が持つ言葉の力――失敗を恐れない前向きなマインドセットで子どもの人生が変わる


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