延長保育・学童は、子どもにとって「かわいそう」じゃない ──親が抱えがちな罪悪感が、ふっと軽くなる理由
「うちの子、長時間預けて大丈夫だろうか」「わが子に申し訳ない気持ちでいっぱい」——4月から延長保育や学童を利用する親御さんのなかには、そんな不安や罪悪感を抱えている方も少なくないのでは?
でも、東京・久我山幼稚園の運営に携わる一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希氏は、「心配する必要も『申し訳ない』という気持ちをもつ必要もない」と断言します。それどころか、延長保育や学童には、通常保育や学校では得られない意外なメリットがたくさんあるというのです。
子どもの順応性は親が思う以上に高い
延長保育を常時利用する場合、幼稚園なら通常保育が終わる13時半頃から4、5時間、延長保育の時間が続きます。
もちろん、とくに年少など幼い子どもの場合は、延長保育を嫌がるケースもあります。友だちはお迎えに来たママと一緒に帰るのに、自分はそこから5時間もママを待たなくてはいけない。ナイーブになる子がいるのも事実です。
とはいえ、野上氏は「子どもの順応性は親が思う以上に高い」と言います。最初はとまどっても、たいていは慣れていくのです。
通常保育では園が決めたカリキュラムをこなすことが多く、子どもはある程度緊張しています。一方、延長保育では時間がたっぷりあるため、以下のような活動を楽しめるのです。
延長保育でできること
- 自分で選んだ遊びを徹底的にやり込む
- 積み木を使って、みんなで大きな城をつくる
- 季節のイベント(例:年長さんが冬に向けてマフラーを編む)
このような、通常保育とはまったく違う活動を経験するなかで、子どもたちは延長保育をどんどん楽しめるようになっていきます。
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延長保育・学童の3つのメリット
では、延長保育や学童には、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
メリット1:縦割り交流で育つコミュニケーション力
延長保育や学童の大きな特徴が、年齢の違う子どもがいる「縦割り」のコミュニティーに身を置くこと。同い年の子どもと過ごすことの良さと、縦割り社会で過ごすことの良さの両方を味わうことが、子どもの幅を大きく広げると野上氏は言います。
縦割り交流で起こること
- 上の子が下の子に遊びを教える、話しかける
- 下の子が上の子の真似をして新しいことに挑戦する
- 「私たちもやりたい!」とシナジーが生まれる
いまはひとりっ子が多く、年齢が違う子ども同士のかかわりが希薄です。でも、学童でなら、年齢が違う相手とのコミュニケーションをしっかり学ぶことができます。また、自分の思いが必ず通るわけではないという現実を、小学生のときから学べるメリットも。
メリット2:多様な体験で非認知能力が育つ
一般的に、子どもが小学校で過ごす時間は年間1,200時間。一方で、放課後と長期休みを合わせた時間は約1,600時間。小学校で過ごす時間以上に長いのです。
しかも、小学生の時期は、自発性や主体性など「非認知能力」に磨きをかける時期。小学校の勉強は認知能力を高めるものですから、放課後や長期休みをどう過ごすかが重要だと野上氏は言います。
学童での活動例
- 英語学習、料理体験、科学実験
- 造形教室、プログラミング、茶道
- 子ども新聞のプレゼンテーション
- ディベート
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メリット3:好きなことに没頭して自己肯定感が育つ
延長保育や学童のもうひとつの大きなメリットは、好きなことに没頭できる環境があるということ。
友だちがいるから頑張れる・挑戦できる
- 自宅では飽きてしまうことも、友だちが頑張っているから頑張れる
- 友だちの作品がすてきに見えたら、真似したり自分で工夫したりする
- ひとりだったら手を出さない遊びも、友だちがやっているからとやってみる
- 「もっとやってみたい」と新しいことに対する意欲が生まれる
野上氏は、こうした好きなことに没頭する体験が「自己肯定感」を育むと語っています。
自己肯定感とは、「自分は自分であっていい」という揺るぎない気持ち。グローバル化が進むこれからの社会で、自分とは異なる価値観に出会ったとき、自分に核となる部分がないとつらいはず。
その核になるものこそ、自己肯定感なのです。
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「申し訳ない」気持ちは不要です
もちろん、延長保育や学童にデメリットがないわけではありません。幼い子ほど身体的ストレスになりやすく、疲れが残って午前中に眠くなったり集中力がなくなったりすることもあります。ただし、体が成長するにつれてこうした問題は自然となくなるので、心配しすぎる必要はありません。
延長保育や学童を利用している保護者の多くが、「申し訳ない」という気持ちをもっています。でも、子どもは親が思う以上に延長保育や学童の時間を楽しんでいるので、どうか安心してください。
そしてなにより、親が「申し訳ない」なんて気持ちをもっていれば、せっかく子どもと過ごせる大切な時間もいいものにはなりづらいのではないかと野上氏は指摘します。
変に心配したり「申し訳ない」気持ちをもったりするのではなく、延長保育や学童のなかでしか味わえない経験や気持ちを、子どもからどんどん聞き出してみてください。
一緒に過ごせる時間がたとえ短くても、あるいは短いからこそ大切な時間としてとらえられ、親子の絆をより濃密なものにできるはずです。
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FAQ:よくある質問
Q1. 延長保育を嫌がる子どもにはどう対応すればいいですか?A. 最初はとまどっても、子どもの順応性は高く、たいていは慣れていきます。園での楽しい活動の話を聞き出したり、「今日は何して遊んだの?」と興味を示すことで、子ども自身が前向きに捉えられるようサポートしましょう。
Q2. 学童での活動は、すべての施設で充実しているのですか?
A. 施設によって活動内容は異なります。
入所前に見学し、どんな活動があるか、子どもがどう過ごすかを確認することをおすすめします。活動内容が充実している施設を選ぶことも大切です。
Q3. 疲れで集中力がなくなるのが心配です
A. 幼い子ほど身体的ストレスになりやすいのは事実ですが、体が成長するにつれて自然と解消されます。睡眠時間をしっかり確保し、週末はゆっくり休ませるなど、家庭でのフォローも大切です。
Q4. 親子の時間が短くなることへの不安があります
A. 時間の長さではなく、質が大切です。短い時間でも、子どもの話をしっかり聞き、一緒に過ごす時間を大切にすることで、親子の絆は深まります。「申し訳ない」という気持ちより、限られた時間を楽しむ姿勢が重要です。
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延長保育や学童は、決して「仕方なく預ける場所」ではありません。
縦割り交流、多様な体験、没頭できる環境ーー通常保育や学校では得られない、貴重な成長の機会がそこにはあります。
「申し訳ない」という気持ちを手放し、子どもが得ている経験に目を向けてみてください。限られた時間だからこそ、親子の時間をより大切にできるはずです。
4月から新しい生活が始まる親子のみなさんが、安心して前向きに一歩を踏み出せることを願っています。
(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの順応性は親が思う以上に高い。「申し訳ない」という気持ちは不要です
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