「なぞなぞ好き」は語彙力の宝庫。ことば遊びが子どもの言語発達を加速させるメカニズム
「パンはパンでも食べられないパンは?」— フライパン!
子どもがこのなぞなぞを聞いて笑ったとき、その頭のなかでは大人が想像する以上に高度な言語処理が行われています。
「パン」という音が「食べ物のパン」と「フライパンのパン」の両方を指しうることに気づき、文脈から意味を切り替える — たったひとつのなぞなぞで、子どもは「ことばには複数の意味がある」という言語の本質に触れているのです。
なぞなぞやだじゃれ、しりとりといった “ことば遊び” を「くだらない」と片づけるのは、じつはもったいないこと。近年の研究では、ことば遊びが語彙力だけでなく、読解力の土台となる重要な能力を育てることがわかっています。
なぞなぞが鍛える「メタ言語意識」とは?
なぞなぞが子どもの言語力を伸ばすカギは、「メタ言語意識」 と呼ばれる能力にあります。メタ言語意識とは、ことばを「意味を伝える道具」として使うだけでなく、ことばそのものを客観的に観察・分析できる力のことです。ことばそのものを客観的に観察・分析できる力のことです。
「”はし”って、橋? お箸? 端っこ?」と考えられること自体が、メタ言語意識の働きです。
茨城大学の研究によれば、4歳後半から6歳頃にかけて、子どもは言語を抽象的にとらえ、ことばそのものを遊びの対象にできるようになります。ちょうど年長から小学校低学年にあたるこの時期に、メタ言語意識は急速に発達するのです。 *1
そして、なぞなぞはこの力を最も自然に鍛えられる遊びのひとつです。なぜなら、なぞなぞを理解するには「ことばの音」「ことばの意味」「文の構造」という3つのレベルで、ことばを “対象化” する必要があるからです。
なぞなぞが言語力を伸ばす3つのメカニズム
メカニズム1 |「同じ音なのに違う意味」に気づく語彙の深さが育つ「かいはかいでも、海にいるかいは?」— 貝!
このなぞなぞを楽しむには、「かい」が「貝」「甲斐」「回」「階」「会」など複数の意味をもつことを(少なくとも2つ以上)知っている必要があります。なぞなぞは、子どもが “知っているつもり” のことばに「こんな意味もあったの?」と気づくきっかけを与えてくれます。
語彙力には「広さ」(どれだけ多くの言葉を知っているか)と「深さ」(ひとつの言葉をどれだけ多面的に理解しているか)の二つの側面がありますが、なぞなぞは特にこの「深さ」を育てる効果が高いのです。
メカニズム2 |ことばの音に敏感になる読み書きの基礎力が育つ
しりとりやだじゃれは、ことばの「意味」ではなく「音」に注目する遊びです。
「音」に注目する遊びです。「きつね」の最後の音は「ね」だから、次は「ね」で始まることばを探す — この作業を繰り返すうちに、子どもは “ことばは音の組み合わせでできている” という感覚(音韻意識)を身につけます。
この音韻意識はひらがなの読み書きの基礎になる力で、「き・つ・ね」と一音ずつ分解できる子どもは文字の習得もスムーズに進む傾向があります。
メカニズム3 |「ことばを操る」経験が読解力につながるプロビデンス大学のジプキ准教授らは、小学3年生46名を対象にした実験で、なぞなぞや多義語を使った言語トレーニングを受けたグループが、統制群と比べて標準読解テストの成績が有意に向上したことを報告しています。 *2
つまり、なぞなぞで「ことばには複数の意味がある」と体感した子どもは、文章を読むときにも文脈に応じて意味を柔軟に切り替えられるようになります。これはまさに、読解力の核心ともいえるスキルです。
年齢別・家庭で楽しめることば遊びガイド
メタ言語意識の発達段階に合わせて、年齢ごとに最適なことば遊びは変わります。
【3〜4歳】音で遊ぶ時期この時期は、ことばの「音」そのものが面白い段階です。
手拍子をしながら「り・ん・ご」と音を区切る遊びや、「”あ”のつくもの、なーんだ?」といった簡単な音あそびから始めましょう。しりとりもこの時期から少しずつ楽しめるようになります。
【5〜6歳(年長)】意味で遊べるようになる時期メタ言語意識が本格的に芽生え始め、「パンはパンでも……」のような定番のなぞなぞを理解して笑えるようになります。「答えが2つあるなぞなぞ」を親子で考えたり、なぞなぞを子どもに “出題” してもらうのも効果的です。出題する側は、ことばの多義性を意識して問いを構成する必要があるため、より高度なメタ言語意識が求められます。
【小学校低学年】ことばを”つくる”時期だじゃれの自作や、「〇〇なのに△△なものなーんだ?」と自分でなぞなぞを考える遊びが効果的です。おすすめは「なぞなぞノート」。思いついたなぞなぞを書き留めるだけで、語彙の整理・発想力のトレーニング・書く力の練習が一度にできます。
じつはプロビデンス大学のジプキ准教授の研究でも、なぞなぞを解くだけでなく自分で作る活動が、最もメタ言語意識を高めたと報告されています。
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「くだらない」が最高の学び親の関わり方のコツ
ことば遊びで最も大切なのは、「正解を教える」のではなく「一緒に笑う」ことです。
子どものだじゃれが的外れでも、なぞなぞの答えがめちゃくちゃでも、「面白いね!」「もっと聞かせて!」と反応してあげてください。ことば遊びは、正しさを競うものではありません。子どもが「ことばっておもしろい」と感じる体験こそが、その後の語彙力・読解力につながります。
***
「くだらない」と思えるしりとりの繰り返しやだじゃれの嵐のなかで、子どもの脳はことばを分解し、組み立て直し、新しい意味を発見する。その遊びの時間が、じつは将来の国語力を育てる “最高の教材” なのです。
FAQ(よくある質問)
Q. なぞなぞが好きすぎて、ずっとふざけています。
勉強に悪影響はありませんか?
A. 心配ありません。なぞなぞに夢中になっている時間は、脳の中でことばの多義性や音の構造を処理するトレーニングが行われています。研究でも、ことば遊びに多く触れた子どもほど語彙力や読解力が高い傾向が示されています。「ふざけているように見える時間」が、実は最も効率的な言語学習になっていることが少なくありません。
Q. 子どもがなぞなぞの答えを間違えたとき、正解を教えるべきですか?
A. すぐに正解を教えるよりも、「惜しい! もうちょっと考えてみて」「”パン”って他にどんなパンがある?」とヒントを出す方が効果的です。自分で答えにたどり着く過程で、ことばの多義性への理解が深まります。ただし、悩みすぎてつまらなくなる前に教えてあげるバランスも大切です。
Q. なぞなぞの本を選ぶとき、おすすめのポイントはありますか?
A. 子どもの年齢に合ったものを選ぶことが一番のポイントです。
年長〜小1なら、イラスト付きで「パンはパンでも……」のような定型パターンのなぞなぞ本がおすすめ。小学校中学年以降は、同音異義語やことわざを使ったやや高度ななぞなぞ本にステップアップすると、語彙の「深さ」が一段と育ちます。図書館のなぞなぞ本コーナーは子どもに大人気なので、ぜひ一緒に選んでみてください。
Q. しりとりやだじゃれも、なぞなぞと同じ効果がありますか?
A. はい、どれも「ことばそのものに注目する」メタ言語意識を鍛える効果があります。ただし、それぞれ鍛えるポイントが少し異なります。しりとりは音韻意識(ことばの音の分解・操作)、だじゃれは同音異義語への気づき、なぞなぞは文脈に応じた意味の切り替えが中心です。どれかひとつに偏るよりも、日常の中でいろいろなことば遊びをまんべんなく楽しむのが理想的です。
(参考)
*1 | 佐藤・小川・神永(2021)『茨城大学全学教職センター研究報告』|「幼児期における言葉の発達——絵本の読み聞かせに関する一考察」pp.39-52
*2 | Zipke, M., Ehri, L. C., & Cairns, H. S. (2009). Reading Research Quarterly, 44(3), 300-321. DOI: 10.1598/RRQ.44.3.4|Using Semantic Ambiguity Instruction to Improve Third Graders’ Metalinguistic Awareness and Reading Comprehension: An Experimental Study
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