「失敗してもいいんだよ」では響かない。子どもの”失敗耐性”を本当に育てる親の関わり方
「失敗してもいいんだよ」「大丈夫、次があるよ」
子どもが何かにつまずいたとき、多くの親がこうした声かけをしているのではないでしょうか。 でも、この言葉を何度繰り返しても、わが子が失敗を怖がる姿は変わらない。新しいことに挑戦しようとしない。うまくいかないとすぐに泣いてやめてしまう。そんな経験はありませんか?
じつは、スタンフォード大学の研究チームは興味深い事実を明らかにしています。子どものマインドセット(知能や能力は変えられると信じるか、固定されたものだと信じるか)を左右するのは、親が「どんな言葉をかけるか」ではなく、親自身が「失敗をどう捉えているか」だったのです。*1
この記事では、「失敗してもいいんだよ」が響かない理由を心理学の研究から読み解き、子どもの”失敗耐性”(フラストレーション・トレランス)を本当に育てる親の関わり方をお伝えします。
「失敗してもいいよ」が子どもに届かない科学的な理由
Haimovitz & Dweck(2016)の研究では、73組の親子を対象に、親の「知能観」と「失敗観」のどちらが子どものマインドセットに影響するかを調べました。
*1
結果は、多くの人にとって意外なものでした。親が「知能は伸ばせる」と信じているかどうか(いわゆるグロースマインドセット)は、子どものマインドセットとほとんど関連がなかったのです。 子どものマインドセットを予測したのは、親の「失敗観」、つまり失敗を「成長のチャンス」と捉えるか、「有害でダメージになるもの」と捉えるかでした。
なぜ言葉が届かないのか。それは、子どもが見ているのは親の「言葉」ではなく「態度」だからです。 「失敗してもいいんだよ」と言いながらも、テストの点数を見て表情が曇る。作品がうまくできなかったときにため息をつく。こうした無意識のリアクションを、子どもは敏感に読み取っています。
研究でも、子どもは親の知能観(頭の中の信念)を正確に読み取ることはできないけれど、親の失敗観(失敗に対する態度)は正確に感じ取れることが示されました。
つまり、「失敗してもいいよ」という言葉と、失敗を目の当たりにしたときの親のリアクションが矛盾していると、子どもは言葉ではなく態度のほうを信じるということです。
「ほめ方」を変えるだけでは不十分な理由
グロースマインドセットの研究で知られるDweck教授は、子どもの能力をほめるよりも、プロセスをほめるほうが、挑戦意欲や粘り強さを育てることを明らかにしました。*2
ただし、Dweck教授自身がのちに重要な注意点を述べています。「努力をほめること」が万能なわけではない、と。 たとえば、子どもが間違い続けているのに「がんばったね!」とだけ言うのは、空虚なほめ言葉になってしまいます。「がんばったのに結果が出ない自分はダメだ」と感じさせてしまうリスクすらあるのです。
大切なのは、努力そのものではなく、「努力の先に学びがあったかどうか」に目を向けること。
「さっきと違うやり方を試したね」「ここまでは合ってるよ、次はこの部分を一緒に考えてみよう」というように、プロセスの中身に踏み込んだフィードバックが効果的です。
“失敗耐性”は「体験」からしか育たない
失敗耐性(フラストレーション・トレランス)とは、うまくいかない状況に耐え、あきらめずに取り組み続ける力のことです。この力は言葉で教えられるものではなく、実際に「ちょっと難しい」を乗り越える体験の積み重ねから育ちます。
乳幼児の発達を支援するアメリカの非営利団体「ZERO TO THREE」によると、2〜3歳では、うまくいかないと泣いたり物を投げたりして感情を爆発させるのがごく自然な姿です。*3
その後、発達心理学の一般的なプロセスとして、5歳頃になると自分の感情に少しずつ名前をつけられるようになり、「くやしいけど、もう1回やってみる」という姿勢が見え始めます。さらに11歳頃からは論理的に状況を捉え、気持ちを言葉で整理する力がぐんと伸びていきます。
つまり、失敗耐性は「教え込む」ものではなく、年齢に応じた「ちょうどいい難しさ」の体験を通じて、時間をかけて育っていくものなのです。
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ステップ1 | 失敗の瞬間、まず「事実」を言葉にする子どもが積み木を崩したとき、絵がうまく描けなかったとき。
最初にするのは「大丈夫だよ」でも「がんばったね」でもありません。 まずは起きたことをそのまま言葉にしてください。「あ、積み木が倒れたね」「ここの線がはみ出たんだね」。 このように、事実を中立に描写することで、子どもは「失敗 = 大ごと」ではなく「失敗 = ただの出来事」として受け止めやすくなります。
ステップ2 |「どうする?」を子どもに返す
事実を言葉にしたあとは、すぐに解決策を与えず、「どうしてみる?」と問いかけてみましょう。 「もう一回やってみる? それとも、ちがうやり方にする?」と選択肢を見せるだけでも、子どもは「自分で決められた」という感覚を持てます。 すぐに親が直してあげると、「自分には直す力がない」というメッセージを暗に伝えてしまいます。少しだけ待つこと、ヒントだけ渡すこと、その「間」が失敗耐性を育てます。
ステップ3 | 親自身の失敗を「見せる」
いちばん強力なのは、親が自分の失敗を子どもの目の前で経験し、そこからリカバリーする姿を見せることです。料理を焦がしたとき、道を間違えたとき、「あちゃー、失敗した! でもこうすればなんとかなるかな」とつぶやくだけで、子どもは「失敗しても世界は終わらない」「失敗のあとには次の行動がある」ということを、言葉ではなく体験として学びます。 子どもは親の失敗に対する「反応の仕方」をじっと観察しています。その姿こそが、どんな声かけよりも雄弁に「失敗は怖くない」を伝えてくれるのです。
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「失敗しても大丈夫」は、言葉で教えなくていい
「失敗してもいいんだよ」という言葉が悪いわけではありません。ただ、その言葉だけでは、子どもの心には届きにくいということです。 子どもの失敗耐性を育てるのは、「失敗はダメなことじゃないよ」という言葉ではなく、失敗を目の当たりにしたときの親の落ち着いた態度であり、「どうしてみる?」という問いかけでもあります。
***
親自身が失敗してもへこたれずに次のアクションを起こす姿も重要です。
声かけを変えるだけでなく、失敗への「まなざし」を変えること。それが、子どもが安心して転び、安心して立ち上がれる土台になります。
FAQ(よくある質問)
最後に、子どもの失敗耐性と親の関わり方について保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1 失敗耐性が低い子は、性格的なものですか? 育て方で変わりますか?
A. 生まれ持った気質(感受性の高さ、刺激への敏感さなど)が影響する部分はあります。ただし、失敗耐性は生まれつき固定されたものではなく、周囲の大人との関わりや経験を通じて育てていける力です。焦って「強くしよう」とするよりも、お子さんのペースに合った「ちょっとだけ難しい」体験を繰り返し用意してあげることが効果的です。
Q2 失敗したとき、泣いている子にはどう声をかけたらいいですか?
A. まずは気持ちを受け止めてあげてください。「くやしかったね」「うまくいかなくて悲しいよね」と、感情にラベルを貼ることが第一歩です。
気持ちが落ち着いてから、「次はどうしてみたい?」と問いかけてみましょう。泣いている最中に「大丈夫、大丈夫」と急いで収めようとすると、「泣くのはいけないこと」というメッセージになってしまうことがあります。
Q3 きょうだいで失敗への反応がまったく違います。同じ育て方をしているのになぜですか?
A. 同じ家庭環境でも、気質の違いや生まれ順による経験の差で、失敗への反応は大きく異なります。これはごく自然なことです。上の子は「できなければいけない」というプレッシャーを感じやすく、下の子は上の子の失敗を間接的に見て学んでいることもあります。それぞれの子どもに合ったペースで関わることが大切で、「同じ対応」をする必要はありません。
(参考)
*1| Haimovitz, K. & Dweck, C. S. (2016). Parents’ Views of Failure Predict Children’s Fixed and Growth Intelligence Mind-Sets|Psychological Science, 27(6), 859-869.
*2| Dweck, C. S. (2015). Carol Dweck Revisits the ‘Growth Mindset’|Education Week.
*3| ZERO TO THREE (2023). Frustration Tolerance.
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