子どもをほめているのに自信が育たないのはなぜ? 逆効果になりやすいほめ方3選
「毎日ほめているのに、なぜかわが子に自信がつかない」「ほめるほど、失敗を怖がるようになっている気がする」——そんな違和感を覚えたことはありませんか?
子どもをほめることは、親として当然の愛情表現のひとつです。でもじつは、ほめ方によっては自信を育てるどころか、かえって子どもの自信を損なう可能性もあることが、発達心理学の研究から明らかになっています。
この記事では、逆効果になりやすいほめ方」を3種類に整理し、それぞれがなぜ問題なのかを研究知見とともにわかりやすく解説します。「ほめているのに自信が育たない」という悩みをお持ちの方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
ほめれば自信がつく、は本当か?
「子どもはたくさんほめて育てましょう」という言葉は広く知られています。自尊心の発達という観点から見れば、ポジティブなフィードバックが大切なのは確かです。しかし、ほめ言葉の中身と伝え方によっては、善意が真逆の結果を招くことがあります。
問題のあるほめ方に共通するのは、子どもが「自分の価値は成果や能力によって決まる」と受け取ってしまうことです。
こうした受け取り方をした子どもは、失敗したとき「自分はダメな人間だ」と感じやすくなり、失敗を避けるためにチャレンジそのものを手放すようになっていきます。
逆効果になりやすいほめ方は、大きく3つのパターンに分けられます。
逆効果になりやすいほめ方① 能力をほめる「パーソンプレイズ」
「頭がいいね」「センスがあるね」「才能があるよ」——このように子ども自身の能力や特性をほめる言葉を、研究者は「パーソンプレイズ(person praise)」と呼びます。
直感的には、子どもの才能を認めるポジティブな言葉のように思えます。しかしコロンビア大学のMueller & Dweck(1998)氏らによる研究では、5年生の子どもたちを対象に、「知能をほめた(あなたは賢い)」グループと「努力をほめた(よく頑張ったね)」グループに分けて追跡したところ、知能をほめられた子どもたちはその後、難しい問題を避け、失敗するとパフォーマンスが低下し、得点を実際より高く偽って報告する割合が高かったことが示されています。*1
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。能力をほめ続けると、子どもは「自分の価値 = 能力の高さ」という図式を学んでしまいます。すると、チャレンジして失敗することは「自分が賢くないと証明されること」になってしまうのです。
その結果、失敗のリスクを避けようとして、難しいことに取り組まなくなっていきます。
ほめているつもりが、子どもをチャレンジから遠ざけてしまう——これがパーソンプレイズの落とし穴です。
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逆効果になりやすいほめ方② 大げさにほめる「誇張ほめ」
「これは信じられないくらい上手!」「完璧すぎる!天才じゃないの?」——ひとつ「すごい」を付け加えるだけで、ほめ言葉は「誇張ほめ(inflated praise)」になります。
自信がなさそうな子どもを見ると、大きなほめ言葉で元気づけてあげたいと思うのは自然な親心です。しかし、ユトレヒト大学のBrummelman氏らのグループが2014年に発表した研究では、自己評価の低い子どもたちは「信じられないほど上手!」という誇張ほめを受けると、その後の難しい課題をより強く避けるようになったことが示されています。*2
その理由は、誇張ほめが子どもに「次もこれほどの結果を出さなければならない」という非常に高い基準を設定してしまうからです。すでに自信が低い子どもにとって、その基準を満たせないかもしれないという恐怖は、挑戦そのものへの回避につながります。
なお、同研究では自己評価の高い子どもでは誇張ほめがむしろポジティブに作用する場合もあったことが確認されており、効果は子どもの状態によって異なります。
子どもが萎縮しているときほど、大げさなほめ言葉には気をつける必要がありそうです。
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逆効果になりやすいほめ方③ 何でもほめる「無差別ほめ」
「すごい!」「えらい!」「上手!」——何をしても必ずほめ言葉が返ってくる環境。一見、子どもを肯定的に育てているように見えますが、研究者たちはこれにも注意を促しています。
HenderlongとLepper(2002)氏らによる大規模なレビュー研究は、ほめ言葉が子どもの内発的な意欲を高めるかどうかは、そのほめ言葉が「誠実で正確な情報を伝えているか」にかかっていると論じています。*3 何をしても同じようにほめられていると、子どもはほめ言葉を「大人の本当の評価」として受け取れなくなっていきます。
また、幼児を対象とした研究では、子どもたちはほめる大人が「選んでほめているか、何でもほめているか」を観察から判断しており、無差別にほめる大人のことばを信頼しなくなる傾向が見られています。ほめ言葉が「どうせいつもそう言うだけ」になってしまうと、子どもは本当に何かをうまくやったときにも、それを自信の根拠にできなくなってしまうのです。
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では、自信を育てるほめ方とは?
3つの逆効果パターンに共通するのは、子どもの「人」や「結果」に焦点を当てている点です。これに対して、研究が一貫して効果を示すのが「プロセスプレイズ(process praise)」——取り組み方、努力、工夫、戦略に着目したほめ方です。
具体的には、「頭がいいね」ではなく「最後まであきらめずに考えたね」、「すごい才能だ」ではなく「やり方を変えてみたんだね、それがうまくいったね」という言葉です。プロセスをほめることで、子どもは「成功は努力や工夫によってもたらされる」という信念を育て、失敗してもそれを「改善のサイン」として受け取りやすくなります。
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大げさにしなくていい、何でもほめなくていい。子どもが「どう取り組んだか」を丁寧に見て、その具体的な行動に言葉をかける——それが、ほめ言葉を本当の自信の土台に変える鍵です。
FAQ(よくある質問)
Q. パーソンプレイズはすべてNGですか?「よくできたね」もダメでしょうか?
A. 「よくできたね」は結果への言及であり、資質を評価する言葉とは少し異なります。大切なのは「どこがよかったか」を具体的に添えることで、より受け取りやすいフィードバックになります。
Q. 自信がなさそうな子どもには、どう声をかけたらいいですか?
A. 大げさな賞賛よりも、「今日はここまでやれたね」といった事実に基づく具体的な観察を伝えるのが有効です。小さな進歩を正確に見守ることが、自信の土台になります。
Q. プロセスをほめようとしても、何を見てどう言えばいいかわかりません。A. 「どんな順番で考えたか」「どこを工夫したか」など、取り組みや選択に目を向けてみてください。子どもの行動をそのまま言葉にするだけで十分なプロセスほめになります。
Q. 子どもが「ほめて!」と求めてきます。その場合もプロセスほめのほうがいいですか?
A. まずは承認の気持ちに応えつつ、「どんな気持ち?」と本人の感覚に注意を向ける問いかけを添えてみてください。外からの評価に頼りすぎない、内なる自信を育むきっかけになります。
(参考)
*1 Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998)|Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52.
*2 Brummelman, E., et al. (2014)|“That’s not just beautiful—that’s incredibly beautiful!”: The adverse impact of inflated praise on children with low self-esteem. Psychological Science, 25(3), 728–735.
*3 Henderlong, J., & Lepper, M. R. (2002)|The effects of praise on children’s intrinsic motivation: A review and synthesis. Psychological Bulletin, 128(5), 774–795.
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