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小中学生の「なりたい職業」1位は野球選手・パティシエ。子どもが夢を語るとき、じつは自己概念が育っています

小中学生の「なりたい職業」1位は野球選手・パティシエ。子どもが夢を語るとき、じつは自己概念が育っています

「大きくなったら何になりたい?」と聞くと、子どもは目を輝かせて答えてくれますよね。でも数週間後にはまったく違う職業を言い出したり、「わからない」と黙り込んでしまったりすることもあります。発達科学では、そのような「なりたい」のゆらぎこそが、子どもの自己概念が育まれているサインだと考えられています。

2026年最新!小中学生「なりたい職業」1位は?


アデコ株式会社は2026年2月、小学1年生から中学3年生の男女各1,350人、合計2,700人に「大人になったらどのような職業に就きたいですか?」と質問した結果を発表しました。*1

男子の1位は「野球選手」(7.8%)で、2年連続のトップです。同調査で「憧れの人」を聞いたところ、男子1位は「大谷翔平」(10.4%)でした。メジャーリーグでの活躍が、子どもたちの夢を強く引きつけていることがわかります。野球選手を目指す理由(上位3位)は「野球が好きだから」(36.4%)、「かっこいいから」(10.7%)、「給料が良い・稼げそうだから」(10.0%)の順でした。


女子の1位は「パティシエ(お菓子職人)」(12.3%)で、7年連続のトップです。「お菓子・ケーキ(作り)が好きだから」という理由が65.2%と圧倒的多数を占めています。「憧れの人」の女子1位は「母親」(9.8%)でした。最も身近で、毎日よく見ている大人の姿が、将来への憧れに重なっているのかもしれません。

このランキングは毎年大きく変動するわけではありません。それにはきちんとした発達科学的な理由 があります。

「なりたい職業」はファンタジーでいい。それが発達の設計だから


子どもが選ぶ職業は、競争の厳しさや収入の安定性、必要な資格といった現実的な条件をほぼ度外視しています。親の目には「無謀」に映ることもあるかもしれません。
でも発達心理学の観点から見ると、これはごく正常な、むしろ大切な現象なのです。

アメリカの経済学者エリ・ギンツバーグ氏らは1951年、職業選択を生涯にわたる発達プロセスとして捉えた理論を提唱しました。そのなかで、11歳以前の時期を「ファンタジー期」」と名づけています。この段階の子どもは、現実の制約ではなく「好き・かっこいい・楽しそう」という感情的な引力で職業を選びます。それは能力が足りないからでも、世の中を知らないからでもありません。発達の段階として、そういう仕組みになっているのです。

ファンタジー期の役割は「夢の正確な見積もり」ではありません。「自分が何に惹かれるかを発見すること」にあります。
好きなものへの強い注意、憧れへの模倣、遊びのなかでのなりきり体験。こうした積み重ねのすべてが、後の自己概念の土台になっていきます。

11歳を過ぎると、子どもは「テンタティブ期」に入ります。これは、自分の能力や価値観・興味と照らし合わせながら、職業の選択肢を現実的に絞り込んでいく段階です。ファンタジー期に「好き」をたっぷり探索した子どもほど、この段階で「自分らしい選択」を深めやすいと考えられています。

小中学生の「なりたい職業」1位は野球選手・パティシエ。子どもが夢を語るとき、じつは自己概念が育っています


子どもは「自分に似合う仕事」を、すでに無意識に絞り込んでいます


では、なぜ女子に「パティシエ」、男子に「野球選手」が人気なのでしょうか。単なる流行や親の影響だけではなく、そこには発達的な絞り込みのメカニズムが働いています。

発達心理学者リンダ・ゴットフレドソン氏は1981年の論文で、子どもが職業の選択肢を絞り込んでいくプロセスを「制限と妥協(Circumscription and Compromise)」の理論として示しました。
*2 子どもは発達の各段階で「自分らしくない」と感じる職業を無意識のうちに除外しながら、選択肢を狭めていくのです。

6 〜 8歳頃には性別に関するイメージが職業選択に影響しはじめ、9 〜 13歳頃には職業の社会的な評価や「格」を参照するようになります。つまり「なりたい職業」を選ぶとき、子どもは同時に「自分はどんな人間か」という自己像を確かめているのです。

イギリスで行われた大規模な追跡調査では、7歳時点の職業的アスピレーションを調べたところ、55.6%の子どもがすでに「一般的な職業」を具体的に挙げており、その多くが性別に沿ったものでした。*3 「ファンタジーな夢」と言いながらも、子どもの職業観にはすでにその子なりの自己像が映し出されているのです。

小中学生の「なりたい職業」1位は野球選手・パティシエ。子どもが夢を語るとき、じつは自己概念が育っています


「好きだから」という理由を、軽く扱わないで


今回の調査でとりわけ注目したいのが「なりたい理由」の結果です。男子が野球選手を目指す理由の1位は「野球が好きだから」(36.4%)、女子がパティシエを選ぶ理由の1位は「お菓子・ケーキ作りが好きだから」(65.2%)。どちらも「好き」が出発点になっています。


「好きだから」は一見、根拠の薄い動機に見えるかもしれません。でも発達科学では、この「内発的動機(自分の内側から湧く意欲)」の強さが、学習意欲や粘り強さと深く関わることがわかっています。「好き」という感覚は単なる気まぐれではなく、その子の興味・関心・価値観が凝縮されたサインです。

「好きだから選んだ」という体験が積み重なると、子どもは「自分は自分のことを知っている」という感覚、つまり自己効力感の土台を育てていきます。「なりたいもの」の内容が数年後に変わっても、まったく問題ありません。大切なのは、「好きなものを持ち、それを声に出せる」という体験そのものが守られることです。


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子どもの「なりたい」に、親はどう向き合えばいい?


職業への夢は、親の関わり方によって育ちもすれば、しぼむこともあります。
子どもの「なりたい」に出会ったとき、次の3つの姿勢を意識してみてください。

まず「いいね」と受け取る「本当になれるの?」「難しいんじゃない?」という言葉は、子どもの自己開示を閉じてしまうことがあります。どんな職業であれ、最初のリアクションはシンプルに「いいね」「おもしろそう」と受け取りましょう。大人が肯定的に聞いてくれるという体験が、「自分の気持ちを話していい」という安心感を育てます。


「なんで好きなの?」と掘り下げてみる「どんなところが好きなの?」「どんなことをする人だと思う?」と聞いてみましょう。答えを引き出すことが目的ではなく、子ども自身が自分の「好き」を言葉にする機会をつくることが大切です。この会話が、自己理解と内省力を少しずつ育てていきます。


「なりたいもの」に関連する体験をさせてみる野球が好きなら試合観戦に連れて行く。
お菓子づくりに憧れているなら、一緒にクッキーを焼いてみる。夢と現実をつなぐ小さな体験は、職業への理解を深めるだけでなく、「自分はこれが好き・できる」という感覚を積み上げます。それは親が思う以上に、子どもの内発的動機を長もちさせてくれます。***
子どもの「なりたい」は、完成した夢ではなく、自分を知るための問いかけです。その問いに大人が丁寧に向き合ってあげることが、将来どんな道を選んだとしても揺るがない「自分軸」を育てることにつながっていきます。ランキングの1位より、わが子が何に目を輝かせているかに目を向けてみてください。

FAQ(よくある質問)
Q. 子どもの「なりたいもの」がころころ変わります。心配ですか?

A. 発達科学的には、むしろ健全なサインです。ギンツバーグのファンタジー期(〜11歳)は、多くの憧れを試しながら自己概念を育てる段階。コロコロ変わること自体は問題ではなく、さまざまなものに興味を向けられている証拠です。「夢が定まっていないこと」を問題視するより、「好きなものがある・言葉にできる」という体験を大切にしてあげてください。


Q. 「プロ野球選手になる」と言い張っています。現実を教えるべきですか?

A. 小学生のうちは、現実的な「確率の話」より「好きを深める経験」を優先するのが発達的に適切です。「かっこいいよね」と共感しながら、野球に触れる機会を増やしてあげましょう。中学生以降、テンタティブ期に入ると子ども自身が能力や現実とのすり合わせを始めます。それまでは夢を安全地帯として機能させてあげることが大切です。


Q. 「なりたいものがわからない」と言います。どうすればいい?

A. 無理に「夢を持たせよう」とする必要はありません。「何をしているときが一番楽しい?」「どんな大人になりたい?」など、職業の名前から離れた問いかけが有効です。職業名より先に「どう生きたいか」が見つかることもあり、それが最終的にはより根づいた職業観につながっていきます。

(参考)
*1  アデコ株式会社|全国の小中学生2,700人を対象にした「将来就きたい職業」と「憧れの人」に関する調査
*2  Journal of Counseling Psychology|Circumscription and Compromise: A Developmental Theory of Occupational Aspirations (Gottfredson, 1981)
*3  British Journal of Educational Research|Individual-level predictors of young children’s aspirations (Flouri et al., 2016)
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