非認知能力とは?AI時代に最も大切な“見えない力”を家庭で育てる方法

非認知能力とは?AI時代に最も大切な“見えない力”を家庭で育てる方法

「テストでいい点を取ってほしい」「賢い子に育ってほしい」。わが子の将来を思うとき、つい成績や偏差値といった “数字で見える力” に目が向きがちです。

けれど近年、それと同じくらいか、もしかするとそれ以上に子どもの将来を左右すると言われているのが、点数では測れない「非認知能力」です。AIが多くの仕事を担う時代に、人間に残される力としても注目されています。

難しそうな言葉ですが、育てる場所は特別な教室ではありません。毎日の家庭のやりとりのなかにあります。この記事では、まず「今日からできること」からお伝えし、そのあとで「なぜ大切なのか」という根拠にふれていきます。

非認知能力とは? まずはざっくり押さえる


非認知能力とは、IQや学力テストのように数値化しにくい、幅広い力の総称です。
具体的には、次のような力を指します。

力の種類どんな力?やり抜く力物事を最後までやりとげる力社会性友だちと協力し、関わり合う力粘り強さ目標に向かって頑張り続ける力自制心自分の気持ちをコントロールする力
テストの点数として現れる「認知能力」が氷山の一角だとすれば、非認知能力は水面下でそれを支える土台。じつは、この土台が育っているかどうかで、認知能力の伸び方そのものが変わってくるのです。*1


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家庭で非認知能力を育てる5つの関わり【実践編】


非認知能力は、特別な教材やドリルで身につくものではありません。むしろ日々の家庭のなかの、ありふれたやりとりの積み重ねで育っていきます。今日から意識できる5つの関わりを紹介します。

1. 主体的な「遊び」を尊重する
子どもが夢中になって遊ぶ時間は、試行錯誤や工夫の連続です。「どうやったらうまくいくかな」と自分で考え、何度も挑戦する。
その過程こそが、やり抜く力や集中力を育てます。

大人が「こうやるんだよ」と先回りして口を出すより、好きなことにじっくり没頭できる環境を整えてあげましょう。すぐ役に立つ遊びかどうかは、気にしなくて大丈夫です。2. 結果も「過程」も、両方ほめていい
テストで100点を取った、試合に勝った。そんなとき「すごいね!」「えらいね!」と思わず声がはずむのは、親としてごく自然な気持ちです。わが子のうれしそうな顔を見れば、結果を一緒に喜びたくなるのは当たり前のこと。その喜びは、抑える必要なんてありません。

そのうえで、もし余裕があれば、ひとことだけ足してみてください。
「最後まで粘り強く考えられたね」「自分で工夫してみたのがよかったね」と、そこに至るまでの努力や工夫にも目を向ける。結果への喜びに、過程へのまなざしを “プラスワン” するイメージです。

過程をほめてもらえた子どもは、たとえうまくいかない日があっても、「挑戦したこと自体に意味がある」と感じられます。それが、「またやってみよう」という次への意欲につながっていきます。

3. 「待つ」「任せる」勇気をもつ
靴をはく、こぼさず食べる、苦手な工作に取り組む。時間がかかると、つい手を貸したくなります。けれど、自分で決めて自分でやり切る経験こそが、自信とやり抜く力の源です。

「もう少し待ってみよう」「自分で選んでごらん」と、子どもに委ねる場面を少しずつ増やしてみましょう。
任された経験は、責任感や自立心にもつながります。

4. 気持ちに「名前」をつけてあげる
「悔しかったね」「ドキドキするね」「楽しみだね」など、子どもが感じている気持ちを、大人が言葉にして返してあげましょう。自分の感情に名前がつくと、子どもはモヤモヤの正体に気づき、少しずつ自分で気持ちを整える力や感情のコントロール力を身につけていきます。

さらに、気持ちを言葉にするやりとりは、相手の心を想像する力(心の理論)の発達を後押しします。*2言葉のやりとりが豊かな子どもほど、心の理論が育ちやすいことがわかっています。*3 そして、この心の理論は、友だちとうまく関わる力の土台にもなっていきます。*4

かんしゃくを起こしたときも、まずは「嫌だったんだね」と受け止めることが第一歩です。

5. 親自身が「楽しむ姿」「失敗する姿」を見せる
子どもは、いちばん身近な大人の姿をよく見ています。
親が何かに夢中になったり、うまくいかなくても「もう一回やってみよう」と笑ったりする姿は、最高のお手本です。失敗を隠さず、「間違えちゃった、でも大丈夫」と見せることで、子どもは「失敗してもいいんだ」と安心して挑戦できるようになります。忙しいからこそ、先回りでラクになる

毎日、仕事に家事に育児にと、ほんとうに走り続けていますよね。そんな余裕のないなかで出てしまう関わりは、どれも子どもを思えばこそ、そして精一杯がんばっているからこそのものです。だから、やめなきゃ、と気負う必要はありません。もし余裕のある日があれば、右の先回りの工夫をひとつ思い出すくらいで、OKです。

つい、出てしまいがち忙しくても、これだけ(先回りの工夫)「早くしなさい」と急かす前夜に服や持ち物を出しておくと、急かす場面そのものが減ります。当日は「あと5分で出るよ」と見通しを渡すだけで十分です。
すぐに答えや正解を教える余裕のない日は、教えてしまってかまいません。1日1回でも「どう思う?」と返せたら、それで充分です。きょうだいや友だちと比べる比べる相手を、ほかの子から「昨日の我が子」へ。「前よりできたね」のひとことに置きかえてみましょう失敗を責める責めそうになったら、まずひと呼吸。「じゃあ、次どうする?」と前に向けるだけで大丈夫です
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なぜ大切なの? ヘックマンの研究が示したこと【根拠編】


「心の力が大事なのはわかるけれど、本当に将来に関係あるの?」と思う方もいるかもしれません。じつはこの問いに、長期にわたる研究が答えを出しています。

非認知能力が世界的に注目される大きなきっかけとなったのが、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジェームズ・ヘックマン教授の研究です。教授が分析した「ペリー就学前プロジェクト」では、質の高い幼児教育を受けた子どもたちを40年以上にわたって追跡しました。


その結果、幼児期に非認知能力を育まれた子どもは、大人になってからの学歴・所得・持ち家率が高く、逮捕率が低いといった傾向が示されたのです。

つまり、幼いころに育てた “見えない力” が、何十年も先の人生に影響しうる。これが、非認知能力がこれほど重視される理由です。


ここがポイント

「認知能力」と「非認知能力」は、どちらか一方ではなく両輪です。専門家からは、両者は本来切り離せず、意味のある活動を通してこそバランスよく育つという指摘もあります。「心の力さえ育てれば勉強はしなくていい」という話ではない点に注意しましょう。


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完璧じゃなくて大丈夫。いちばんの土台は、あなた自身


育児の毎日は、待ってあげたいのに、つい急かしてしまったりの連続です。思いどおりにいかない日があって当然。むしろ、そんな日のほうが多いかもしれません。

それでも、こうして「わが子のために」という気持ちこそが、非認知能力を育てるいちばんの土台です。非認知能力は、一気に伸びるものではありません。今日のなにげない「もう少し待ってみよう」、ひとことの「よく頑張ったね」。その小さな積み重ねが、10年後、20年後のわが子を、静かに、けれど確かに支えていきます。
***
だから、完璧な親でなくて大丈夫です。あなたが毎日そばで見守っていること、それ自体が、子どもにとって何よりの環境なのですから。今日も1日、本当におつかれさまです!

FAQ(よくある質問)


Q. 非認知能力は何歳までに育てればよいですか?

A. 幼児期がとくに育みやすい時期とされていますが、「何歳まで」と区切られるものではありません。学童期以降も、家庭や学校での経験を通して伸びていきます。焦らず、年齢に合った関わりを続けることが大切です。


Q. 非認知能力はどうやって測るのですか?

A. テストのように数値で測ることが難しいのが非認知能力の特徴です。点数化を目指すより、日常の中で「自分で考えてやり切れたか」「気持ちを切り替えられたか」といった姿を見守る視点をもつとよいでしょう。


Q. 習い事で非認知能力は伸びますか?

A. 仲間と協力したり、目標に向かって続けたりする経験は非認知能力につながります。ただし「やらされている」状態では効果は限定的です。子ども自身が「やってみたい」と思えるかどうかを大切にしましょう。


(参考)

*1 Diamond, A. (2013)|Executive Functions. Annual Review of Psychology, 64, 135-168.

*2 Wellman, H. M., Cross, D., & Watson, J. (2001)|Meta-Analysis of Theory-of-Mind Development: The Truth About False Belief. Child Development, 72(3), 655-684.
*3 Astington, J. W., & Jenkins, J. M. (1999)|A Longitudinal Study of the Relation Between Language and Theory-of-Mind Development. Developmental Psychology, 35(5), 1311-1320.

*4 Slaughter, V., Imuta, K., Peterson, C. C., & Henry, J. D. (2015)|Meta-Analysis of Theory of Mind and Peer Popularity in the Preschool and Early School Years. Child Development, 86(4), 1159-1174.

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