叱ると「泣く」「キレる」「黙る」「笑う」。反応4タイプ別、わが子に届く伝え方
「叱るとすぐ泣くから、何も言えない」
「言い返してきて、余計に腹が立つ」
「ヘラヘラ笑ってて、伝わってるのか分からない」
同じ「ダメでしょ」でも、子どもの反応はまるで違います。泣く・キレる・黙る・笑うの違いは、反省の深さの違いではありません。叱られた瞬間に、その子の内側で何が起きているかの違いです。「いくら言っても分かってくれない」のは、叱り方がその子に合っていないからだと述べています。(人間関係研究家、稲場真由美氏)*1
叱られた瞬間、子どもの脳では「ブレーキ」が間に合っていない
子どもが感情を爆発させるとき、脳のなかでは感情の「アクセル」と「ブレーキ」のせめぎ合いが起きています。怒りや怖さを生み出すアクセルは、生まれて間もないころから活発に働きます。一方、前頭前野にあって「ちょっと待って」と感情にストップをかける働きは、まとめて「実行機能」と呼ばれるそうです。(ブリティッシュコロンビア大学教授、アデル・ダイアモンド氏)*2
そしてこのブレーキは、アクセルよりもずっとゆっくり育ちます。
泣くのも、キレるのも、黙るのも、笑うのも、受け止めきれない感情の「出口」の違いなのです。こどもまなびラボの「すぐ怒る子と、怒らない子。違いは『性格』ではなく脳の“ブレーキ”の育ち方だった」の記事でも紹介しているとおり、爆発の真っ最中は説得も叱責も届きにくくなります。*3
4つの出口は学術的な分類ではなく、「いま、どの出口が開いているか」を見る目印です。
4タイプ別、その子に起きていること・届く伝え方・NG
反応その子に起きていること届く伝え方NG1. 泣く叱られた内容より先に、「怒られた」怖さと悲しさがあふれている「びっくりしたね」と気持ちを先に受け止め、泣きやんでから本題を一文で「泣かないの!」。泣かれたので言うのをやめる2. キレる刺激にすぐ興奮し、怒りにブレーキが間に合わず、口や手が先に出る興奮中は説得しない。落ち着いてから「お母さんは悲しかった」と気持ちで伝える言い返しに言い返す。「なんでそういうこと言うの」「来ないなら、もう知らない」3. 黙る緊張で頭が動かない。または「いい子でいなければ」と感情を飲み込んでいる答えを急がせない。理由を一文で伝え、「うん/ううん」で答えられる聞き方にする「何とか言いなさい!」。沈黙を反省と受け取って、お説教を長くする4. 笑う緊張や不安をごまかしている。親の反応がうれしい。叱られる状況を直視したくない言葉より先に行動を止める。低い声で短く。気持ちを代わりに言葉にする「笑ってる場合じゃない!」と声を大きくする。つられて笑う1. 泣く子は、「内容」より先に「怖さ」を受け取っている
泣き出す子は、注意の中身より先に「怒られた」こと自体に圧倒されています。
怖がっている子に「たいしたことじゃないから大丈夫だよ」と声をかけると、子どもは「自分は怖いと感じた。その気持ちは間違っているの?」と思い、感情を抑え込むようになりかねないと注意を促しています。(心理療法士・『メンタルが強い子どもに育てる13の習慣』著者、エイミー・モーリン氏)*4
届く順番は、感情が先、内容があとです。「びっくりしたね」と受け止め、泣きやんでから本題を一文だけ伝えます。「あなたを心配しているんだよ」といった怒りの奥の一次感情を伝えると、子どもの心に響く度合いがまったく違ってくるといいます。(株式会社子育て支援代表取締役、熊野英一氏)*5
「私」を主語にして、事実→影響→自分の感情の順に伝える「私メッセージ」も、同じ型の伝え方として紹介されています。(親業訓練協会インストラクター、瀬川文子氏)*6泣かれても言うのをやめず、短く、一文で、あとから言えば充分です。
2. キレる子は、怒りの「ブレーキ」が間に合っていない
「キレる」人間には大きく3つのタイプがあり、そのひとつの「赤鬼」タイプは、刺激に対してすぐに興奮してカッとなるとのこと。
(早稲田大学教育学部教授、本田恵子氏)*7興奮の最中に正論を積み上げても、まず入りません。親自身も感情的になりそうなら、1度その場を離れて冷静になる時間を取ることがすすめられています。(EQWELチャイルドアカデミー主席研究員、浦谷裕樹氏)*8
落ち着いてから伝えるときに外したいのが、子どもに対する基本中の基本のNGワードとして挙げられている3つの言葉です。(早稲田大学教育学部教授、本田恵子氏)*9①決めつける言葉(「またゲームしてるの?」→「なにしてるの?」)、②気持ちの代わりに使う「なんで?」(「どうしてそういうことを言うの?」→「そういうことを言われると、お母さん悲しいな」)、③否定的に伝える言葉(「来ないんだったら、もう知らないわよ」→「いま来たら、乗りたい電車に間に合うよ」)の3つです。親から怒鳴られている子どもは、人になにかをしてもらいたいときに怒鳴るようになるとも語っています。(早稲田大学教育学部教授、本田恵子氏)言い返しに言い返せば、キレ方のお手本を見せることにもなりかねません。
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3. 黙る子は、「動けない」か「飲み込んでいる」かのどちらか
叱ると口を閉ざして何も言わない子の内側には、ふたつの可能性があります。
ひとつめは、緊張で頭が動かなくなっている状態です。
こどもまなびラボの「また怒鳴ってしまった……『片付けなさい』が効かない理由と、変わる声かけの言葉」の記事でも触れたように、緊張状態では脳の実行機能がうまく働かず、かえって行動できなくなることがあります。*10答えがないのではなく、答えを探す回路が止まっていると考えてみてください。
ふたつめは、感情を飲み込んでいる状態です。3歳くらいで出てくる自我を親に否定されると、子どもは「いい子でいないといけない」と思うようになるそうです。(早稲田大学教育学部教授、本田恵子氏)
どちらの場合も、答えを急がせず、理由を一文で伝えて「うん」「ううん」で答えられる聞き方にしましょう。長時間のお説教は集中力が切れ、内容が頭に残らなくなってしまうため、叱る時間は1分以内が理想だと述べています。(EQWELチャイルドアカデミー主席研究員、浦谷裕樹氏)
4. 笑う子は、分かっていないのではなく「混乱」している
叱られても笑って同じ行動を続ける子の笑顔の背景には、「緊張や不安をごまかそうとしている」「反応してもらうことに対して喜んでいる」「叱られている状況を直視したくない」という3つの理由が考えられるとのこと。分かっていないのではなく、どうしたらいいか分からずに繰り返している、いわば「混乱のサイン」だと説明しています。
(保育士、山本あやか氏)*11
笑う子には、言葉を増やさないことが近道です。「ダメ!」の言葉より先に、2人の間に座り、怒った顔でゆっくり手を押さえ、低い声で短く注意する。そのうえで「おもちゃ取られてイヤだったのかな?」と、子どもの代わりに気持ちを言葉にするのが、保育園でも実践されているやり方だそうです。(保育士、山本あやか氏)
4タイプに共通するNGは、「強く」「長く」「決めつけて」叱ること
「あまりにも強く叱りすぎるなど、不適切な言葉がけを繰り返すことが、子どもの脳に悪影響を与えるのは間違いない」と指摘しています。(東北大学加齢医学研究所教授、瀧靖之氏)*12強く、長く、決めつけて叱ることは、どのタイプの子に対しても、受け止める力そのものを削っていくでしょう。
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叱る前の10秒でやることは、3つだけ
1. 息を吐いて、本題を「一文」にする
事実を端的に伝え、その行動の問題点を明確にし、改善案を示して締めくくる順番がよいといいます。(EQWELチャイルドアカデミー主席研究員、浦谷裕樹氏)「おもちゃを投げると、妹に当たって痛い。
投げたくなったら、ボールにしよう」。この一文だけを決めてから口を開きましょう。
2. 決めつけと「なんで?」を外す
「なんでそんなことするの?」を「何があったの?」に置き換え、親は「インタビュアー」の立場でいてほしいと語っています。(株式会社子育て支援代表取締役、熊野英一氏)
3. 子どもの顔を見て、どの出口が開いているかを確かめる
表の「届く伝え方」を、その場の反応で選んでください。
叱ったあとには、「さっきのことはもう大丈夫」「次はこうしようね」というフォローのひとことを必ず、と呼びかけています。(EQWELチャイルドアカデミー主席研究員、浦谷裕樹氏)
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4歳児を対象にした研究では、衝動をおさえる「抑制」などの実行機能を遊びのなかで鍛えたグループは、トレーニングをしなかったグループにくらべて、自分の感情を理解し、うまくつき合う力(感情コンピテンス)が高まったことが報告されています。(中国・西南大学ほか、リー氏ら)*13
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叱られたときに泣くか、キレるか、黙るか、笑うかは、生まれつきの性格で決まっているわけではなく、ブレーキが育つにつれて変わっていきます。いまの反応は、その子の「現在地」にすぎません。次に叱りたくなったら、口を開く前の10秒で、まず子どもの顔を見てみてください。
FAQ(よくある質問)
Q. 同じ子でも、日によって泣いたりキレたりします。どのタイプで考えればいいですか?
A. その日の反応で選んでかまいません。急にキレたりイライラしたりする子どもの背景には睡眠不足があると指摘し、5歳ごろなら11時間、小学生なら10時間の睡眠を目安に挙げています。(小児科医・文教大学教授、成田奈緒子氏)*14反応が荒れる日が続くなら、まず寝る時間を見直してみてください。
Q. つい怒鳴ってしまいました。あとからできることはありますか?
A. あります。冷静になってから「さっきは感情的になってしまってごめんね。でもこうしてほしかった」と説明すれば、信頼関係は修復できるでしょう。子どもの脳は柔軟なので、たっぷりの愛情をもってコミュニケーションをとることで、傷ついた脳が徐々に回復していく可能性もあるそうです。(小児神経科医、友田明美氏)
(参考)
*1 こどもまなびラボ|「いくら言っても分かってくれない」のは、叱り方がその子に合っていないから。
*2 Diamond, A. (2013)|Executive Functions. Annual Review of Psychology, 64, 135-168.
*3 こどもまなびラボ|すぐ怒る子と、怒らない子。違いは「性格」ではなく脳の“ブレーキ”の育ち方だった
*4 こどもまなびラボ|「メンタルが弱い子」と「メンタルが強い子」8つの違い。“折れない心” はどう育てる?
*5 こどもまなびラボ|つい叱りたくなるときでも、親は「インタビュアー」になれば落ち着いて我が子に向き合える
*6 こどもまなびラボ|「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して
*7 こどもまなびラボ|子どもが「キレやすい」人間に育ってしまう、“絶対にNG”な親の振る舞い方
*8 こどもまなびラボ|「何度言ってもわからない」が嘘のように変わる!専門家6人が教える “子どもが伸びる叱り方”
*9 こどもまなびラボ|意外と言いがち!子どもがますます反抗する、親のフレーズ3パターン
*10 こどもまなびラボ|また怒鳴ってしまった……「片付けなさい」が効かない理由と、変わる声かけの言葉
*11 こどもまなびラボ|叱ってもニコニコ……どうして? 『投げる・引っ張る』理由と、今日からできる関わり方を保育士が解説
*12 こどもまなびラボ|脳が変形するって本当!?子どもの脳を傷つける “親のNG行為”
*13 Li, Q., Liu, P., Yan, N., & Feng, T. (2020)|Executive Function Training Improves Emotional Competence for Preschool Children: The Roles of Inhibition Control and Working Memory. Frontiers in Psychology, 11, 347.
*14 こどもまなびラボ|「怒りっぽい子」と「感情に左右されない子」の環境はこんなに違う。攻撃的な態度の原因は親?
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