小学校受験をしない子にも大切な「しつけ」とは。つくし会代表に聞く、入学前に家庭で育てたい力

小学校受験をしない子にも大切な「しつけ」とは。つくし会代表に聞く、入学前に家庭で育てたい力



「ひらがなや計算は、入学前に教えておいたほうがいいのだろうか」。小学校入学が近づくと、そんなふうに迷い始める保護者は多いものです。小学校受験をしない家庭であればなおのこと、入学までに子どもにどんな力をつけておけばいいのか、考え込んでしまうかもしれません。

とはいえ、幼児期の学びは、机に向かった時間や先取りした知識の量だけで決まるものではありません。家でのふだんのやりとりのなかにも、入学してから生きてくる学びはあります。周りの人と交わした約束や、毎日の生活にどう向き合うか、といったこともその一つです。

今回は、35年の歴史を持つ「つくし会幼児教室」を運営する株式会社LOCOK代表の石井大貴さんに、受験の有無にかかわらず大切にしたい幼児期の学びについてお聞きしました。運動をテーマにした連載に続くテーマは、家庭で育める学習の土台です。
家でできる実践を中心に、石井さん自身の経験も交えながら紹介していきます。

構成・取材/STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ編集部

【プロフィール】
石井 大貴(いしい だいき)
株式会社LOCOK 代表取締役/金沢工業大学大学院 准教授/博士(メディアデザイン学)
慶應義塾大学法学部を卒業後、TBSテレビに15年勤務し、一流のアスリートや経営者、文化人と接するなかで「教育」の本質を学ぶ。慶應義塾大学大学院で博士号を取得すると同時に株式会社LOCOKを創業し、「あらゆる人に教育を通して無限の可能性を提供する」ことを掲げて教育プロデュース事業を展開。30年以上、独自カリキュラムを実践する「つくし会幼児進学教室」の運営や、千葉ロッテマリーンズなどプロアスリート・大手企業向けのリーダーシップ教育を手がける。2026年、つくし会の理念をスポーツで社会実装する『PROJECT やれば、できる!』を始動し、五輪代表経験者を擁するLOCOK陸上競技クラブの運営、ABCテレビ『おはよう朝日です』の体操コーナー「おきトレ」の監修、電通との業務提携による全国展開を進める。著書に『“目標”を“現実”に変えるたった3つのルール』(プレジデント、2021年)など。

幼児期の勉強は「約束を守ること」から始まる


幼児期から小学校低学年までの学びについて聞くと、石井さんはまず「しつけ」としての基本的な習慣を挙げました。親や先生の話を聞くこと。
決めたことや約束したことに向き合うこと。そうした毎日の積み重ねがあってこそ、子どもは学習に取り組めるようになると考えているのです。問題が正しく解けたかどうかと同じくらい、課題に最後まで向き合えたかどうかを見ているわけです。


「宿題だって、できないとか、わからないのが悪いんじゃないんです。ちゃんと向き合って、約束どおりにやったかどうかのほうが大事だと思います。たとえば大人になってから『今日のミーティングは13時からです』と言われて、それを認識もしないで出席できなかったら、仕事にならないじゃないですか。仕事ができるかできないか以前の問題です。そういうことの基礎を学んでいくのが大事なんじゃないかと思っています」


ただ、幼い子どもに学ぶ意味をいきなり理解させるのは難しいものです。
理由を説明するのはもちろんですが、それと並行して、石井さんはまず生活のなかで小さな約束を決め、守る経験を積ませるようにしています。はじめは大人がやってみせ、そこから年齢に合わせて、子どもが自分でできることを少しずつ増やします。

何を約束にするかは、家庭によってばらばらでかまいません。朝起きる時間、朝の運動、寝る前の読み聞かせ、挨拶。そうした日常の小さなことで十分だといいます。親子で決めたことを続けて守る、その経験を積み重ねていくのがねらいです。約束そのものは難しくなくていいので、無理なく続けられるものから始めてみてください。
小学校受験をしない子にも大切な「しつけ」とは。つくし会代表に聞く、入学前に家庭で育てたい力


勉強への向き合い方は、成長とともに変わる


子どもの成長に合わせて、関わり方も変わっていきます。
石井さんはそれを、おおよその目安として三つの時期に分けて説明してくれました。もちろん成長のペースや興味の向きは子どもによって違い、時期が重なることもあります。

小学校卒業までの勉強の三つの時期1幼児期から小学2年生ごろ話を聞く、約束を守るなど、学習の基本的な習慣を身につける時期。2小学3年生から5年生ごろ自分なりに、何のために頑張るのかを考え始める時期。3小学5年生から6年生ごろ目標に向けて、学び方や取り組み方を自分でも考える時期。
最初の時期は、子どもによって小学3、4年生ごろまで続く場合もあります。学ぶ内容が複雑になる前に、話を聞く習慣や、決めたことに取り組む習慣をつけておけば、家でも学校でも学びやすくなるでしょう。毎日の声かけや生活のリズムも、こうした習慣づくりを後押しします。


次の時期への移り変わりについては、石井さんが自分の水泳の思い出を話してくれました。通っていた小学校では、4年生までに1,000メートル泳げるようにならなければいけません。ところが、水泳は苦手でした。そんなとき親から「あなたが泳げるようになるために、習い事をさせている。人に何かをお願いするのにはお金がかかるんだよ」と言われ、自分を支えてくれている人がいることを実感したといいます。練習中に必死で泳いだときに見た水の中の景色は、今でもはっきり覚えているそうです。

こうした経験を重ねるなかで、子どもは努力する理由を自分なりにつかんでいく、と石井さんは考えています。親に言われたから取り組んでいた子が、理由を考えて動くようになっていくのです。


子どもの「当たり前」は、周囲の環境から育つ


取材には編集部のスタッフも同席していて、娘さんの話をしてくれました。小学校受験に向けた指導を受けたものの、受験はせずに公立小学校へ。それでも入学後、人の話を落ち着いて聞く姿勢はしっかり身についていたそうです。幼児期に覚えた習慣は、どの学校に進んでも生きてくることがあるのです。

石井さんは、子どもがふだん過ごしている環境も大事にしています。つくし会では、話を聞く、返事をする、挨拶をするといったことを、周りの子どもたちと一緒に毎日重ねています。そのうちに、それがいつのまにか当たり前の習慣になっていきます。ほかの子の様子を見て、自分のふるまいを振り返るきっかけにもなるそうです。


もう一つ欠かせないのが、場面に合ったふるまいを知ることです。いまは話を聞く時間なのか、自分から発言する時間なのか、静かに待つ時間なのか。それぞれの場面で何をすればいいのかを大人が具体的に伝え、ふだんの生活のなかで何度も繰り返すうちに、子どもは自分で判断できるようになっていきます。こうした場面ごとの違いは、言葉で説明されただけではなかなか身につきません。実際に何度も体験してみることが必要です。


「僕は本当に、幼少期は早く大人の振る舞いを身に付けたほうが得だと思っているんです。可愛がられるから。可愛がられれば、もっと沢山のことを教えてもらえます。早く大人になるというのは、その場のTPOや環境に合わせて、適切な態度をとれる子どもになるということです。それはやっぱり評価されますよ」


小学校受験をしない子にも大切な「しつけ」とは。つくし会代表に聞く、入学前に家庭で育てたい力




姿勢、挨拶、受け答えは家庭で育つ


姿勢、挨拶、受け答えの三つは、受験をするかどうかに関係なく家で育てていけます。どれも特別な教材はいりません。普段の生活のなかで練習できるものばかりです。

姿勢については、骨盤を起こして座ることが一つの目安です。背中をだらりと丸めて座るより体が安定し、話も聞きやすくなる。それが学習に向かう準備にもなるわけです。

もっとも、長い時間よい姿勢を強いるのが目的ではありません。集中して活動しやすい状態を整えておこう、という考え方です。姿勢と生活習慣の関係については、スクリーンタイムを扱った回でも紹介しました。

挨拶では、まず大人が手本を見せることを心がけています。


「『挨拶しなさい』と言う前に、まず親がやることがいちばん大事だと思うんです。朝起きたときに子どもや家族に挨拶していない家庭で、子どもに挨拶させるなんて無理じゃないですか。起きたら子どもの顔を見て、親がちゃんと挨拶する。家でやっていれば、挨拶が特別なことだとは誰も思わなくなります」


子どもが挨拶をしなかったときは、石井さんのほうから目を合わせて挨拶することもあるといいます。

受け答えの土台になるのは、相手の話を最後まで聞く力です。小学校受験の課題には、「数の多いほうに赤でバツを」「黄色で丸を」というように、いくつもの指示を聞き取って手を動かす問題もあります。聞いて、理解して、そのとおりに動く。こうした経験なら、日常生活のなかでもいくらでも積めます。

聞いたことを自分の言葉で返す力も、段階を踏んで少しずつ育ちます。「ありがとう」だけだった子が、やがて「〇〇してくれてありがとう」と言えるようになる、という具合です。つくし会では年少・年中のころから、「今日のお昼は何を食べたの」「今日は何をして遊んだの」と会話を重ね、短い答えを少しずつ文章へとつなげています。
自己紹介や夏休みの思い出を話す練習を続けるうちに、7〜8分ほど話せるようになる子もいます。最初から長く話せなくても心配はいりません。子どもの答えをいったん受け止めて、少しずつ言葉を増やしていけばいいのです。

家庭でも、たとえばこんなことから始められます。

受け答えを育てる、家でできること1お手伝いを頼む「お箸を置いてきてね」「コップとお茶を持っていってね」。言われたことを自分で考えて、行動で返す。2読み聞かせのあとに聞く「どう思った」「誰が出てきたっけ」「大事な場面はどこだった」と確かめる。3人前で話す機会をつくる習い事の発表や、家族の前でのプレゼンなど、アウトプットの場を設ける。
石井さん自身の子どもも、年長のときに空手の審査会で、約100人の前に立って型を披露したことがあるそうです。話を聞くだけで終わらせず、子どもが自分の考えを言葉にする機会もつくってあげたいところです。聞くことと話すこと、その両方を毎日の会話で育てていきましょう。そのためにも、大人は先回りして答えを言わず、子どもが自分の言葉を探すのを待ってあげてください。

小学校受験をしない子にも大切な「しつけ」とは。つくし会代表に聞く、入学前に家庭で育てたい力


人は人、自分は自分


小学校に入ると、考え方も習慣もさまざまな友達と関わるようになります。周りの行動に必要以上に振り回されず、自分のやるべきことに向き合えるかどうか。そのうえで、ほかの子の考えや違いを尊重できるかどうか。石井さんは、「人は人、自分は自分。お友達にもいろいろな人がいるからね」と子どもに伝えることをすすめています。

付き合い方や人との距離感は、大人でも人それぞれです。相手を否定しなくても、自分にとって心地よい距離を考えていいのだと、子どもにも伝えてあげたいですね。誰とでも同じように付き合う必要はありませんが、相手を敬う気持ちは忘れないようにしましょう。

入学前は、家庭の方針を確かめなおす時期


最後に、小学校入学を控えた家庭へのメッセージをお願いしました。


「今までやってきたことや大切だと思ってきたことを、今だからこそ再確認する時期として使ってもらいたいです。学校にどんな友達がいるか、どんな先生がいるかはわからない。周りの環境は変化しかないと思うんですけど、唯一変わらないのは、家庭の方針や、今まで積み上げてきたものなんですよね。環境が変わったからといってぶれないように準備しておくことが、いちばん大事なんじゃないかと思います」




小学校受験をしない子にも大切な「しつけ」とは。つくし会代表に聞く、入学前に家庭で育てたい力


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受験をする家庭でも、しない家庭でも、幼児期のうちに育てておけることがあります。人の話を聞くこと、約束を守ること、自分の考えを言葉にすること。親から先に挨拶をする、お手伝いを任せる、読み聞かせのあとに少し話してみる。どれも家庭でできる、ささやかな取り組みです。

入学を控えた今だからこそ、わが家が大事にしてきたことを親子で確かめ、毎日の暮らしのなかで続けていきたいものです。新しい環境に入ってからも、家で積み重ねてきた経験は子どもを支えてくれるでしょう。




【石井大貴さんに聞く「子どもの勉強」連載】

  • 第1回小学校受験をしない子にも大切な「しつけ」とは。つくし会代表に聞く、入学前に家庭で育てたい力(本記事)
  • 第2回学習机の前に整えたいこと。つくし会代表に聞く、家庭でできる「勉強の土台」づくり
  • 第3回「勉強したくない」と言われたら。つくし会代表に聞く、ミスへの声かけと「認める」伝え方

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