子どものおねしょは治療が必要?家庭でできる10の工夫!【パパ小児科医コラムvol.15】
おねしょはいつまで続く?
おむつが取れてトイレにいけるようになっても、夜に漏らしてしまう「おねしょ」は誰もが通る道ですよね。しかし、小学生に入るころまでおねしょが続いていると「なんとかしたほうが良いのでは?」と考える保護者の方もいるでしょう。
小さいころは排尿の機能が未熟なため、おねしょをする子どもが多いのですが年齢とともにおねしょはなくなってきます。ただし個人差があり、5〜6歳で約20%、小学校低学年で10%ほどおねしょがあります(※1)。
これくらいの年齢になると、保護者だけでなく本人も何とかしたいと考え出し、「夜尿症」という病気として相談が必要となります。
おねしょが起こるメカニズム
幼いうちは膀胱の容量が小さく、脳から分泌される抗利尿ホルモン(尿量を減らすホルモン)の分泌が未熟です。尿は夜のあいだも作られ膀胱にたまっていくので、膀胱の容量に対して、夜に作られる尿が多い場合に尿がもれてしまうのです。
成長とともに膀胱の容量が大きくなり、脳から分泌される抗利尿ホルモンの分泌も盛んになるので、おねしょは減っていくでしょう。
おねしょは「甘えが原因」「親のしつけのせい」などと言われがちですが、根拠はありません。身体の機能の問題として対策すべきものです。夜に尿が漏れることは夜尿症だけでなく、そのほかの腎臓病やホルモンの病気のこともあります。
まずは小児科や泌尿器科を受診して、夜に尿が漏れることが「夜尿症」なのかどうか区別してもらうことが大切ですよ。
夜尿症の治療は必要?
夜尿症は年齢とともに自然に治っていきますが、小学生くらいの年齢になると「恥ずかしい」という思いから強いストレスを感じますし、自分への「自信のなさ」にもつながります。お泊りの行事などで困ることも増えてくるでしょう。また頻度は高くないですが、成人に持ち越すこともあります。
治療をすることによって、夜尿の消失が早くなり、精神的な負担が軽減されることに大きな意義があります。
夜尿症の対策方法!家庭でできる10の工夫とは?
夜尿症であることが濃厚であれば、抗利尿ホルモンを補充するお薬の治療や、尿が出たらセンサーが感知するアラーム療法というものがあります。しかし、症状が軽い子であれば生活の工夫だけでもある程度よくなる子もいますし、お薬の治療も生活の工夫をしなければうまくいきません。
まずは以下のような生活の工夫(※2)をひとつ一つ実践していくことから始めましょう。
1.日中に十分水分をとる
夕食後の水分制限の際に脱水を起こさないために、日中に十分な水分を取っておきましょう。
2.朝食・昼食を十分に摂り、夕食は寝る2時間前には済ませる
食事中にも水分が含まれますので、夕食、とくに寝る直前に食事を多くとると夜の尿量が増えてしまいます。
3.夕食後は水分制限を行う(コップ1杯程度)
水分の制限を行うことで、尿量を減らします。
4.寝る2時間前からの水分摂取は控えめにする
水分を控えめにすれば尿量は減りますが、脱水のおそれがあります。よって一日の水分量はかえずに日中にしっかりとって、夜には控えめにするという方法をとります。
夕食以降は極力取らないようにしましょう。
5.寝る前にトイレに行く
水分を制限して、そのうえでしっかりトイレで出し切ることが大切です。
6.遅寝をさける
遅寝をすることで、抗利尿ホルモンのバランスが崩れてしまうのでさけましょう。
7.夜中無理にトイレに起こさない
遅寝をすることと同様に、夜に無理に起こすと抗利尿ホルモンのバランスが崩れて逆効果になってしまいます。ただし、お泊り行事などでどうしてもおねしょを避けたい場合であれば、例外的に夜に子どもを起こしてもらっても大丈夫です。
8.睡眠中に身体が冷えるのをさける
身体が冷えると排尿しやすくなります。そのため冬には夜尿症の症状が出やすくなります。寝ているあいだは冷えないように対策しましょう。
9.塩分を控える
塩分摂取が多いと尿量が増えるため、控えめにしましょう。
10.便秘があれば治療をする
便がたまっていると、お腹の中で膀胱が圧迫されて、尿がたまっても広がることができません。便秘の治療をすると尿をためることができるようになります。
子どもの自信を引き出すことが治療の鍵!
日々の習慣を変えることは簡単ではなく、効果はすぐには出ないかもしれません。うまくいきかけても時に逆戻りしてしまうこともあります。でも、そんな時に叱りつけることは逆効果です。できていることを肯定的にとらえほめることでうまくいきます。
夜尿症の治療の目的は何だったでしょうか?
それは「子どもが自分に自信を持てるようにすること」です。
その目的を大切にして取り組んでいってくださいね。
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パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム
著者:加納友環(ぱぱしょー)
二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。
TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。
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