「後医は名医」ってホント?医師が初診で大切にしていること【パパ小児科医コラムvol.18】
ぱぱしょー先生が経験した患者さんとのエピソードとは?
前回はさまざまな病院の違いについて説明しましたが、今回は「後医は名医」
という言葉を紹介します。どのようなことなのでしょうか。
私が大学病院に勤めていた研修医のころのことです。
近隣のクリニックから患者さんが紹介されました。検査の結果、肺炎と診断したところ、患者さんが怒り出したのです。「前の医者が肺炎を見逃した!!」と。
そして私に対しては「よく肺炎を見つけてくれました、さすが大学病院の先生だ」とおっしゃいました。紹介してくださった先生は、古くから地域を支えている先生でしっかりと患者さんをみてくださる良い先生であると私は思っていて、当然私より経験も豊富です。
一方当時の私は、まだ経験の浅い研修医でしたので、とても申し訳ない気持ちになりました。
初診のクリニックではまだ症状が現れ始めたころで、その後も改善がありませんでした。そのため、詳しい検査が必要とのことで総合病院を受診して肺炎があるとわかりました。
私の診断は、クリニックの先生の考えを引き継いだにすぎず、決して私の方が
優れた医者というわけではありませんでした。より詳しい検査ができる病院で
あったからこそ「肺炎」とわかり治療ができたのです。
後医が「名医」になるワケ
イラスト:ヤマハチ
このようなことは現場ではしばしば起こっています。後に紹介させる病院ほど情報が集まっているので、適切な診断に至りやすくなります。これまでの検査結果や治療は情報として参考になりますし、時間経過によってより情報が集まってきます。
たとえば、インフルエンザになったとしましょう。インフルエンザは発熱してすぐに受診しても、検査上ははっきりしません。初診では陰性という結果がでても、のちに陽性と診断されることもあります。今の時期ですと新型コロナウイルスにおいても、そのようなニュースを目にすることがしばしばあるでしょう。
よく、小児科医は「熱が続くようなら再受診してください。」と添えます。これは単なるリスク回避の言葉ではありません。数日経過を見ることで、状況が変わったり情報量が増えたりすることで、より適切な診断に近くためです。
症状が出てすぐは、その時点での暫定的な診断のみをすることもあります。
たとえば赤ちゃんによくある「突発性発疹」の場合、発熱が数日続き、熱が下がるとともに発疹が出現します。