以前なら、「子どもにより良い教育を」と考えたとき、私立の学校に通わせるというのが一般的でしたが、最近では、あえて公立小学校を選ぶ家庭も増えているといいます。
なかには、子どもの教育環境や生活環境を重視し、希望する公立小学校へ入学させるべく、わざわざ引越しをする「公立小移民」と呼ばれる人たちもいるとか。
そこで今回は、そんな「公立小移民」について、教育ジャーナリストの斎藤剛史さんにお話をうかがいました。
公立小移民と学区の関係
希望する公立小学校があるとはいえ、なぜわざわざ引っ越すのか…。それは、「『学区』が大きく関係している」と斎藤さんは話します。
「『公立小移民』は、希望する公立小学校に子どもを入学させるため、その学区に引っ越す、または住民票を移す保護者と子どもたちのことを言います。公立の小中学校には学区があり、学区内に居住または住民登録していないと入れませんので、子どもを入学させるためには引越しをしなければいけないのです」(斎藤さん、以下同)
引越ししてまで通わせるメリットはある?
「公立小移民」の目下の目標は、まず希望する公立小学校に入学すること。しかしそれ以外に何かメリットはあるのでしょうか?
「公立義務制は無料なので、私立と違い、入学金などのお金をかけずに入学できます。
またその小学校がいわゆる『ブランド校』であれば、地域に集まる保護者も比較的富裕層が多いため、保護者にとってステータスになりますし、進学にも有利と考えられています」
とはいえ、斎藤さんはこれらのメリットには少し慎重のよう。
「あくまで公立小学校なので、『ブランド』というのは、保護者の勝手なイメージにすぎない場合もあります。住居を移すなど、お金をかけてまで入学するメリットが本当にあるかどうは疑問です」
都内でも、大田区の田園調布小学校や港区の青南小学校、千代田区の番町小学校など、“ブランド校”と呼ばれる人気の公立小学校はたくさんあります。実際に、これらの小学校の近くの不動産屋さんでは「○○小学校学区内」と謳っている物件もあるそうです。
「子どものため」ということ以外にも、「人気らしいから」「ママ友がいいと言っていたから」など、きっかけは様々あるかと思いますが、引っ越しというのは、人生の中でもわりと大きな決断。「引っ越してまでその学校に通わせるべきなのか」、今一度、立ち止まって慎重になってみてもいいのかもしれません。
(文・明日陽樹/考務店)