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コロナウイルス感染拡大。少年サッカーで考えたい五つの提言

サカイク
サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに6万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。
「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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コロナウイルス感染拡大。少年サッカーで考えたい五つの提言

(写真は少年サッカーのイメージです)

■新型コロナウイルス感染不安の中、少年サッカー活動はどう判断すればいいのか


みなさんご存知のように、Jリーグは新型コロナウイルス感染拡大の状況を重く見て、3月15日までのJ1第2~4節などのJ1から3の全94試合を延期することを決めました。Jリーグが自然災害以外で中断するのは初。日本国内の主要プロスポーツが今回のウイルスの影響で日程変更するのは初めてのことになります。

24日に政府の専門家会議が「今後1~2週間が拡大の瀬戸際になる」との見解を発表したことを受け、Jリーグは25日に緊急会議。全会一致で延期を決定したものです。私は3月1日のJ1リーグのマッチコミッショナーを請け負っていたので、リーグから連絡が入りました。

さまざま意見はあるかと思いますが、個人的には正しい判断だととらえています。
密閉されたドームや体育館内で行われる競技と違ってサッカーは屋外なので「大丈夫なのではないか」という声も聞かれますが、席と席の間が密接したスタンドでは飛沫感染や濃厚接触の可能性は限りなく高いのですから。そのような周囲の状況をみるにつけ、少年サッカーの指導者や保護者の方のなかには気をもんでおられる方もいらっしゃると推測します。練習や練習試合、大会参加など、活動の在り方について「やっていいのか?」「中止にすべきか?」と迷いますね。地域によっても判断が分かれるところでしょう。

■子どもがサッカーをしたいと言っても親は説得して止めなければならない


少年サッカーの活動について、今考えたいことを五つ挙げてみました。

ひとつめ。当然ではありますが、学校閉鎖になった時点で実施は慎むべきでしょう。千葉市などのように、新型ウイルス患者が出てすでに学校閉鎖を行っている自治体があります。
厚生労働省は今後、同じ市町村の学校で新型コロナウイルスの感染が拡大した場合、患者がいない学校でも休校や学級閉鎖の検討を要請する方針を示しています。

そうなった場合、保護者はお子さんがサッカーをしたいと言っても止めなくてはいけません。

その場合、「ダメなものはダメなのよ」と強い言葉で抑えつけるのはやめましょう。これがふたつめです。

たとえ低学年であっても、コロナウイルスが蔓延している状況をきちんと説明します。

そして、サッカーすることが自分のためにならないばかりか、他の人にも迷惑をかけるかもしれないことをなどもです。

三つめ。このようなときだからこそ、"日ごろやりたくてもできなかったこと"に取り組むことを勧めてください。


読書をする。漫画でもよいでしょう。攻略したかったゲームをやる。生活リズムを狂わせるものでなく、時間を区切ってやればいいでしょう。海外のサッカーをテレビやパソコンで観る。レベルの高いプレーを観るだけでも、スキルが向上するベースがつくれるでしょう。

ほかにも芸術や音楽に親しむ。遅れがちだった算数や漢字をやっておく。
そんなふうに、"日ごろやりたくてもできなかったこと" はたくさんあるのではないでしょうか。

■危機に関する感覚は人によって違う。各家庭の指針を持って行動を


このような非常事態のなかで、どれだけ平常心で、でも注意を怠ることなく有意義に過ごせるかを親子で話し合うことは大きな学びになります。

クラブによっては、学校閉鎖になっても休みにしないところもあるでしょう。複数の異なる市区町村から選手がやってくるクラブは、練習や試合に来れる子どもがいる限り運営を続けるかもしれません。そういったケースは仕方ないかもしれませんが、困ってしまうのは「よそが休んでいるときに練習しよう」とコーチが言うクラブです。クラブの判断をおかしいなと感じたら、きちんと意見を言ったほうがいい。これが四つめです。

このようなクライシスに対する認識や感覚は残念ながら人によって違ったりもするので、「うちはお休みします」というように家庭での指針をもって行動しましょう。


もちろん、その際も、子どもときちんと話し合って、納得した状態で休むことが肝要です。説明を省略してしまうと「A君は出ているのに」と子どもが疑心暗鬼になります。あくまでも、お父さんやお母さんが「あなたのためにどうしたらいいか」を一生懸命考えた結果だと言うことを知らせましょう。

五つめ。こういうときこそ自己管理を教える良い機会ともとらえられます。なるべく人ごみに行かない。手洗いやうがいの正しいやり方を教えて、こまめにやってもらいます。毎朝、自分で熱を測る。
そういった自己管理を学んでもらいます。

■今、大人がもっとも気を付けなければならないこと

コロナウイルス感染拡大。少年サッカーで考えたい五つの提言

(写真は少年サッカーのイメージです)

そして、大人がもっとも気をつけなくてはいけないのは、基礎疾患のある子どもへの対応です。すでに報道されているように、子どもでもぜんそくなど持病があると重症化するリスクが高まります。指導者は、こまかく様子を見てあげましょう。

ともあれ、Jリーグが国内の主要プロスポーツで最初にリーグ中止という英断を下せたのは、サッカー界が世界の反応を知りえる立場にいることが大きいと思います。

リーグ中止を決める前に23歳以下のテストマッチに、南アフリカが来日を拒否しました。

サッカーのイタリア1部リーグ(セリエA)は22日、23日に予定されていたインテル・ミラノ対サンプドリア、アタランタ対サッスオロ、ベローナ対カリャリの3試合を、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期しました。Jリーグが中止を決める3日前のことです。

アメリカの国務省は22日、日本と韓国への渡航警戒レベルをこれまでの1から2(注意の強化)へと引き上げました。Jリーグの村井チェアマンは「ある種の国難。Jリーグとして協力していく必要がある」と述べています。

大人として私たち私たちが協力し合って、子どもたちを守りたいものです。<<前回|連載一覧>>

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高橋正紀(たかはし・まさのり)
1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。
Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。

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