「上下関係ではなく、一人の人間として」対話を大事にする流経柏・榎本監督が始めた選手と今まで以上に向き合う新たな取り組み
今年から立ち上がった下部組織であるクラブ・ドラゴンズ柏U‐12の稲垣雄也監督との関係性も榎本監督らしさを感じます。稲垣監督は榎本監督が流経大柏で指導を始めた初年度の選手ですが、「教え子なのに、そんなこと言うの?と思う時がある」と榎本監督が笑うくらい関係性はフレンドリー。
「上っ面で褒めてくれるだけでなくて、悪いことまで指摘してくれる人とは人間関係が良好になっていくと思うんです。イナも僕の悪い所があれば、ちゃんと指摘してくれるから大事な存在です。『この人、凄くきっちりしているけど、裏ではどうなんだろう?』ではなく、『榎本は表裏がなく、ずっとあのままだよ』と思われる方が、人間関係ができていくと思います」
■不貞腐れるなら、意見して欲しい
選手との関係性も変わりません。
「コーチと選手の関係になると"はい"か"いいえ"しかなくなる。不満な顔を見せる選手もいるけど、不貞腐れているくらいなら『僕はこう思っています!』と言えば良いんです。それに対してうるさいとは思いません」
そうした考え方は挨拶にも反映されています。
日本の部活動では選手が誰かとすれ違うと足を止め深々と挨拶をするのが美徳とされています。
「形だけになっている事もあるので、本当にそれで良いのかと疑問に思う。大人の方から、『こんにちは』と声を掛ければ、子どもたちが凄いなと思い、見習うかもしれない」と考える榎本監督は自ら進んで生徒に挨拶をします。
こうした新たな取り組みによって進んで自らの意見を発信できる選手が増え始め、練習の活気が溢れています。また、ピッチ外でも選手主体の取り組みも始まりました。ミーティングの機会を増やそうとしても、コロナ禍で話し合う時間を長くはとれないため、話せる選手は限られてきます。
思ったことを口にできない選手が多いと感じたことから、背番号順で日誌を書き始めたのです。まだ書く内容は大人からすれば物足りないかもしれません。
書き忘れる選手もいますが、流経柏の取り組みは選手が成長していくためのステップとして今後の人生に活きてくるはずです。
後編では、今年から立ち上がった下部組織であるクラブ・ドラゴンズ柏U-12の稲垣雄也監督に指導する中で感じる保護者の変化と、育成の理念などを伺いましたのでお楽しみに。