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サッカー未経験でコーチ就任、練習時間も少ない中でしっかりM-T-Mを実施するにはどうすればいい?

サカイク
サッカー経験はないけど、少年団のボランティアコーチを5年ほど経験。これまでは練習を直接指導することはなかったけど、今年から3、4年生のコーチをすることに。

池上正さんの書籍や指導者向けサイトCOACH UNITEDで勉強しているけど、今の自分の技量では短い練習時間の中でしっかりM-T-Mができず、手こずっている。60分の練習の中でどうM-T-Mを実施すればいい?というご相談をいただきました。

ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、指導の質を高める方法をアドバイスします。
(取材・文島沢優子)

サッカー未経験でコーチ就任、練習時間も少ない中でしっかりM-T-Mを実施するにはどうすればいい?
(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

<<どんな時に味方に声を出せばいいのかわからない子どもたちに理解させる練習はある?

<お父さんコーチからの質問>

はじめまして。COACH UNITEDに年間契約して、池上さんの動画を参考にしてます。


サッカーは未経験ですが、少年団のボランティアコーチをしております。コーチ経験は5年で、仕事の都合で週末の練習はだいたい6~7割くらいの比率で参加しています。

未経験者なので、直接指導することは滅多になく、練習のサポートや遠征のお手伝いをするのが主な役割です。

今年から週一で、15人ほどの3、4年生の平日練習を担当することになりました。過去に彼らの練習に参加したことはなく、今年初顔合わせです。

チームの練習頻度は平日週一で、年末年始お盆休み以外は毎週予定、雨天は中止という事になっています。冬季は簡易照明を使って実施予定です。

普段週末練習は3、4年生別々で実施しており、たまに強化選手という名目で3年から数名選抜で4年の試合に参加する場合もあります。


練習担当になって平日休みに仕事のシフトを動かした都合上、週末はあまり練習に参加できておらず、今は彼らの実力を見極めながら練習メニューを検討し実施してます。

指導者は私1人で、団からは練習内容は特に指示はなく、楽しく体を動かしてくださいとだけ言われているので、私としては2対1等から次第に展開をしたいと考えてます。ここからが質問です。

池上さんの推奨するM-T-Mを実施したいのですが、小学校のグランド事情で、設営や片付けを除くと60~70分程度しか練習時間がないため、今の私の技量ではじっくりとM-T-Mを満足に実施できません。

しかも、3、4年と言うこともあって、説明もろくに聞かず、勝手にボールを蹴りに行ったり、練習メニューを理解せずに始めてしまったりと、短い時間を有効に使うことができていません。

一年目ということもあり、非常に手こずっていますが、頑張って乗り越えたら、今の3年生が4年生になったときに、次の3年生をリードしながら、今よりもスムーズに練習が実施できるのではと考えてます。

池上さんでしたら、60分の練習をどのように実施しますか?ぜひ教えてください。

<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。


お休みをやりくりしてボランティアで指導されているとのこと、大変頭が下がります。また、コーチユナイテッドでも勉強されているようで、嬉しく思います。

■扱いが大変な子どもたちこそ、最初にゲームをやろう


扱いがちょっと大変です、という子どもたちこそ、ぜひ最初にゲームをやってください。15~20分くらいやったら「今のゲームの中でこんなことが起きてなかった?」「何が変わると良くなると思う?」と、子どもたちに尋ねてください。

何度かやれば彼らの傾向もわかってきますから、いくつか用意しておいた中から「こんな練習をしようか」とメニューを提供してください。私が推奨しているのは2-1、3-1、3-2などでしょうか。20分あれば、2種類くらいはトレーニングできます。最後に練習したことを意識してゲームをしてもらいます。


■最初に考えたプランだけでなく、臨機応変に対応しましょう


平日に練習できるという面では、一般的なスポーツ少年団よりも恵まれていると感じます。時間が少ししかないとマイナスに考えるよりも、平日練習のその一日を有効に使えばもっとうまくなると前向きにとらえてください。これまで平日はやっていなかったのですから、できなかったことができるようになる時間を与えられているのです。

また、最初に考えたプランでやり通すのではなく、臨機応変に構えましょう。ゲームをしてあげてほしいですが、たまには「今日は前半少し練習するよ」と順番を変えてもいいでしょう。その前の試合で出てきた課題はこれだから、と説明してもいいし、うまくいかなかった部分の試合動画をタブレットなどで見せてあげるのも効果的。「こんなことがコーチは気になってるんだけど、どうかな?練習してみない?」と話しましょう。

■試合をどう見るか、を考えていくと課題が見つかりやすくなる


自分の力量では、と書かれていますが、試合をつぶさに見ていれば少しずつ足らない部分は見えてきます。
例えば「ボールを呼んでいない(コーチングできていない)から、つながってないな」「パスミス、コントロールミスが多いな」などでしょうか。動きながら蹴っていることと、止まったボールを蹴るのとでは違うので、そのあたりを解決できるトレーニングをすればいいのです。練習メニューはネットでも、私が書いた本でも、情報はたくさんあります。

つまり「試合をどうみるか?」を考えていくと、指導をレベルアップさせられるでしょう。自分たちの課題が見つけやすくなります。

加えて、一度のトレーニングでうまくなるわけではないということを理解しておきましょう。ブラジルでは「ひとつのことをおぼえるのは3か月くらいかかる」と言われています。しかも、個人差があります。
大人のほうが慌てずにやっていけば、必ず変化は訪れます。

また、設営や片付けに時間のかかるゴールやラインは、必ずしもなくていいと思います。マーカーやコーンだけでどんどんトレーニングできます。試合もすぐにできます。ある道具を工夫してどう使うか。そんなことも考えてください。

■サッカー未経験なことを気にする必要はない


サッカー経験がないことを多少引け目に思っておられるようですが、まったく気にすることはありません。少年サッカー、高校サッカーなどで未経験者が優勝させたり、いいチームを作っています。


未経験でも、経験があっても、指導者として成長するためには、ぜひ「いい試合」を観てください。バルセロナやマンチェスターユナイテッドなど、いいサッカーをしていると言われているチームの試合をいくつか観続けましょう。

そのイメージで、子どもたちのサッカーを見てください。展開や走るスピード、パススピードなどは比べようはありません。見るところは、違うところです。

選手たちはどんなところに動いているのか。
ボールはどうつながったのか。ボールがないときに、選手は何をしているか。

そんな目で海外の試合をみていくと「そういえば、子どもたちって、空いている場所があるのに。固まっているなあ。どうして広がらないの?」などと気づきます。

「空いているのだから、呼んだら?」そうアドバイスができるし、それができるようになるための練習ができます。前述したように、練習メニューはたくさん本が出ています。広がるためにはどうしたらいいかという練習もたくさんあります。

海外の試合をたくさん観ていくと、そこを子どもたちに求めることができます。

「ここ、空いてたね?」
「無理して行くから、とられちゃうよね?どうしたらいいかな?」

そんな問いかけができるようになります。

逆に、サッカーを経験した人は「まずは技術」と言ってしまいがちです。足元のスキルは大切ですが、その前に「サッカーってこういうものだよね」という理解、認知をさせる努力をしてほしいのです。

団子サッカーにならないためにどうしたらいいか

■団子サッカーにならないためにどうしたらいいか

サッカー未経験でコーチ就任、練習時間も少ない中でしっかりM-T-Mを実施するにはどうすればいい?

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

欧州に行くと、子どもたちは団子になっていません。ところが、日本ではそうなります。
「たくさんいても抜いちゃえ」
「ほら一対一で勝負だ!」

という言い方を大人がするからだろうと思います。団子になるのは、日本の指導環境によるものなのです。足が速い、ドリブルが上手い子は、低学年や中学年ならひとりで抜け出すことができますね。だから「(ひとりで)行け!」と言ってしまいます。

その子がドリブルし始めたときに、他の子も走っている?ひとりだけで点を取るのではなく、みんなが点を取るようにするには?

そんなことを子どもたちと一緒に考えてください。「きちんとサッカーになる」ということを目指してほしいと思います。

サッカー未経験でコーチ就任、練習時間も少ない中でしっかりM-T-Mを実施するにはどうすればいい?


池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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