愛あるセレクトをしたいママのみかた

1学年上の子にいじめられている。行かない選択をしていいのか問題

サカイク
クラブチームで週一回顔を合わせる1歳上に無視されたり嫌味を言われている息子。本人からコーチにも話したけど、不安もあるのか次の練習のとき「行かないとダメ?」と聞いてきた。

夫は「行かない選択肢もある」と言うけど、今通わなくなるのはどうなのかと思っている。どうしたらいい?と悩むお母さん。チーム内のいじめ問題に悩む方も多いですよね。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

1学年上の子にいじめられている。行かない選択をしていいのか問題

(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

<<早く入れなきゃ置いてけぼり?低学年からスポ少やクラブに所属すべきか問題

<サッカーママからのご相談>

島沢さんこんにちは。

うちの子ども(10歳)はクラブチームに所属しています。
チームの活動は月、火、土、日で、月、火は外部のチーム生もスクールとして参加します。

少し前から、月曜日に来ている一つ学年上の男の子に無視されたり嫌味を言われているようです。

そのことを私には2度話してきて、1か月ほど前に自分から月曜担当のコーチにも話していたようでした。

コーチに話した後、「次の月曜日の練習、行かないとダメかな」と息子から言われ、私としてはもう少し様子見たらと話しました。夫は、行かない選択肢もあることを伝えて対策を考えようと言っています。

本人は、火、土日はこれからも頑張っていきたいと話しています。

月曜日は強制ではないので自由参加ですが、子どもにはいろんな経験から学んでほしいと思っていて、今通わなくなる判断はどうなのか悩んでいます。

私からコーチに話すことを提案したら、その子が今以上に意地悪してくることを恐れて迷っています。


このような状況で親はどうすればいいのでしょうか。
アドバイス宜しくお願いします。

<島沢さんのアドバイス>

ご相談いただき、ありがとうございます。

程度はわかりませんが、子どもがいじめに遭ったりすると心配になりますね。さりとて、自由参加の練習にも行かせてあげたい。揺れる親心が伝わってきます。

■すぐ親に頼るケースも少なくない中、自分で決めて行動した息子さんを褒めてあげよう


しかしながら、お母さんには、心配するよりもまずは息子さんを褒めてあげてほしいと思います。10歳と言えば4年生。
月曜担当のコーチに、無視されていることなどを自分から臆せず伝えています。自分から言えずにすぐさま親に頼ってしまうケースは少なくないなかで、息子さんから自らの力で解決しようとするエネルギーを感じます。しかも、本人は、火、土日はこれからも頑張っていくから月曜を休むという結論を自分のなかで出しています。

それなのに、「月曜日、行かないとダメかな?」とお母さんの許可を求めています。もしまたお母さんの意見を求めてきたら、「お母さんが決めることじゃないよ。君の思った通りにしていいんだよ」と言ってあげてください。

週3回の活動でサッカーは十分だと思います。月曜日の放課後が空いているなら、サッカー以外のことをやればいいですし、子どもだって何もない日が必要です。
ここはお父さんがおっしゃるように、「そうだね、行かなくてもいいよ」と言ってあげればいいと思います。

■子育てに「正解」はないが「不正解」はある


「子育てに正解はない」とはよく言われることですが、この連載の前々回『実力主義のチームで控えになってしまった息子。努力は報われないのか問題』でも申し上げているように、「正解はないが、不正解はある」のです。

福祉や教育の世界で言う「ミス・トリートメント」(間違った接し方、扱い)があります。例えば、暴力。暴言。子どもを委縮させること。誰かと比較するなどして傷つけること。
人権を軽んじたようなパワーハラスメントをすること。セクシャルハラスメント等々です。
もちろんお母さんはこんなことはしていません。ただ、「もう少し様子見たら」は、私から見たらNGです。

■距離を置けば解決すること。息子さんは考えて判断している


本人は仲間からのいじめに傷ついて「行きたくない」と訴えてくれました。親としては、子どもがそんなふうに言いづらいことを打ち明けてきたときは「よく言ってくれたね」と、まずは話してくれたことを心から喜び、そのことを認めてあげてください。いわずもがなですが、息子さんはお母さんとは別人格です。無視されたり、いじめられる息子さんの辛さはお母さんにはわからないでしょう。
だからこそ彼の気持ちに共感してあげましょう。

月曜日は強制ではないので自由参加ですよね。お母さんは「子どもにはいろんな経験から学んでほしい」と思っていて、通わない判断を受け入れがたいようです。しかし、いじめに耐えて通うほどのものでしょうか。その価値判断を息子さんはすでに自分でしています。その子とは月曜日にしか会わないのだから、離れればいい。距離を置けば解決することだとしっかり考えているのです。したがって、何度も言うようですが、ここは彼の思い通りにやらせてあげましょう。


■こんなとき、親がむやみに動かない方がいい理由

1学年上の子にいじめられている。行かない選択をしていいのか問題

(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

短い相談文のなかで推察するのみですが、息子さんはとても賢明なお子さんとお見受けします。お母さんがコーチに話すことを提案したら、相手の子からの報復が始まる可能性もきちんと考えています。お世辞抜きで、生きる力のある子どもに成長していると感じます。

あれこれと世話を焼かず、逆にお母さんにとって良い子離れの機会だととらえてください。相談文の最後に「このような状況で親はどうすればいいのでしょうか」と質問されています。皆さん、お子さんに何かネガティブなことが起きると、親として何かしなければ、対策を講じなくてはとオロオロしがちです。ところが、実際は親が手を下さず子どもに任せたほうがうまくいくことのほうが多いものです。

そして、そうやってほったらかすことで、子どもは自立し、自分の力で物事と解決していくようになります。

むやみには動かないこと。

大丈夫。お母さんの息子さんはとても素敵に育っていると思います。

1学年上の子にいじめられている。行かない選択をしていいのか問題
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。

提供:

サカイク

この記事のキーワード