自分は下手だからと卑屈になってモチベが落ちないか心配です問題
上手な子は上の学年の試合に同行させてもらえるけど、息子は留守番組。ほんの2~3人留守番させるなら連れてってくれてもいいのに。本人も「自分は下手で出たら負けちゃうから当然だけど、ちょっと悔しい」と。
子どもが卑屈になったらどうするの!?「お前は下手だから試合に出れない」と友達に言われたら?どうモチベーションをあげればいい?と悩むお母さんからのご相談。
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)
(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<<月謝を払っているのにスクールコーチが何も教えてくれません問題
<サッカーママからのご相談>
10歳の子どもがサッカーの少年団に入っています。上手な同級生は上の学年に同行し試合に出してもらってますが、息子は留守番組です。
同行している子はパパコーチの子で、少年団以外にもサッカーを習っているので上手なのは当然なのですが、わずか二人くらいを留守番組にしたりするなら、連れて行ってくれてもいいのでは......と思います。
息子は「自分は下手なんだし、出たら負けちゃうんだから上手な子が行くのは当然。でもちょっと悔しいかな」と言っています。
練習は楽しんで行ってますが、親の私がどんなモチベーションでいたらよいのか、モヤモヤしています。
上手な子だけが選ばれる、自分は下手だから、と息子の気持ちがどんどん卑屈になったらどうしようとか、友達から「お前は下手だから試合にでれないって言われたらどうしよう」とか私が悩んでしまってます。
子どものモチベーションを下げさせないためにどんな心でいればいいのか、どんな風に声をかければいいのか、などアドバイスをいただければと思います。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談いただき、ありがとうございます。
短いご相談文の中から推察してお答えするので、若干ずれがあるかもしれません。そこは最初に断っておきますね。
そのうえで、結論から申し上げます。このケース、一番の処方箋はお母さんが息子さんのサッカーから距離を置くことです。
息子さんは「自分は下手なんだし、出たら負けちゃうんだから上手な子が行くのは当然。でもちょっと悔しいかな」と言いつつも、練習は楽しんで通っていると書かれています。「親の私がどんなモチベーションでいたらよいのかモヤモヤする」とありますね。
そこを考えると、実は息子さんではなく、お母さんの問題のような気がします。「子どものモチベーションを下げさせないためには?」との相談のようでありながら、実は子どものサッカーに対するご自分のモチベーションが下がっている。それが不安で仕方ないのではありませんか。
ご相談文の冒頭で、留守番組の二人だけが置いて行かれることに対し、不満を述べられています。面白くない気持ちはよくわかります。私も息子が小学3年のとき、上の学年に呼ばれて遠征に行ったら1試合も出られず戻ってきたことがあります。試合中に先輩のプレーを見ずに砂に絵を描いていたから「もう出さない」とコーチに言われたそうです。
ですが、息子は自分の学年ではないし、大して気にしてもいませんでした。ただ単に「一日中ベンチにいて面白くなかった。自分の学年の練習に行きたかった」と言っただけでした。まあ、そうだろうなと私も思いました。
息子さんは自分の学年の活動があるのだからそれでOKな気がします。だから本人も楽しく練習しているのでしょう。それなのに、お母さんは、彼の気持ちが卑屈になったらどうしようとか、友達から「下手だから試合にでれないって言われたらどうしよう」と、まだ起きてもいないことを心配しています。もしかしたら、他のこともあいまって、お母さん自身の不安感情が高まっているのかもしれません。
少し気分を静めて、パートナーと話し合ってみるなどして、ご自分の気持ちの揺れと向き合ってみてはいかがでしょうか。
もし本気で息子さんの精神状態が心配でたまらないのならば、もう少し自分の子どもに自信を持ちませんか?
この連載でも以前に申し上げましたが、親が「転ばぬ先の杖」を立てようとすると子どもを不安にします。自分は楽しいと言ってるのに、卑屈になったらどうしようとお母さんが心配していることを感じた子どもは、自分が信用されていないことに落ち込みます。
試合に出られない彼の悔しさに「残念だったね。悔しいね。一緒に連れて行ってくれればいいのにね」と共感することは重要です。ただし、子どもの気持ちに親が同化してはいけません。そこでは「いいじゃん。学年の試合があるしね。また頑張ればいいよ。
しかも冒頭で伝えたように、息子さんは楽しんで通っています。そこを認めてあげましょう。
(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
以前、都内で少年サッカーのコーチをしている方が、こんな事例を教えてくれました。
4年生が大会に出たら、相手が強くて、二人だけ試合に出せなかったそうです。すると、その日当番だったその子のお母さんが「試合に出ないのなら当番なんかしないほうがよかった。もうやめさせます」と言ってきたそうです。
コーチは陳謝し、その子にも「今度はチャンスがあるから」と説得したら、子どものほうはうなずいたそうです。
「子どものほうはやめたくなかったと思う。歯を食いしばって泣くのを我慢していました。でも、母親にやめたくないと言えないわけです」
歯を食いしばっているのを、お母さんは「ほら、この子もこんなに悔しがっている」と言ったそうです。
親が子どもをコントロールできると考えないほうがいいです。声掛けとか、何か話をしてやる気が出るものではありません。日ごろから、できるだけ子どもの選択を尊重して任せましょう。
「ま、いっか。サッカーをするのは私じゃない。この子なんだし」
そのようにぜひ割り切ってください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
子どもが卑屈になったらどうするの!?「お前は下手だから試合に出れない」と友達に言われたら?どうモチベーションをあげればいい?と悩むお母さんからのご相談。
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)
(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<<月謝を払っているのにスクールコーチが何も教えてくれません問題
<サッカーママからのご相談>
10歳の子どもがサッカーの少年団に入っています。上手な同級生は上の学年に同行し試合に出してもらってますが、息子は留守番組です。
同行している子はパパコーチの子で、少年団以外にもサッカーを習っているので上手なのは当然なのですが、わずか二人くらいを留守番組にしたりするなら、連れて行ってくれてもいいのでは......と思います。
息子は「自分は下手なんだし、出たら負けちゃうんだから上手な子が行くのは当然。でもちょっと悔しいかな」と言っています。
練習は楽しんで行ってますが、親の私がどんなモチベーションでいたらよいのか、モヤモヤしています。
上手な子だけが選ばれる、自分は下手だから、と息子の気持ちがどんどん卑屈になったらどうしようとか、友達から「お前は下手だから試合にでれないって言われたらどうしよう」とか私が悩んでしまってます。
子どものモチベーションを下げさせないためにどんな心でいればいいのか、どんな風に声をかければいいのか、などアドバイスをいただければと思います。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談いただき、ありがとうございます。
短いご相談文の中から推察してお答えするので、若干ずれがあるかもしれません。そこは最初に断っておきますね。
そのうえで、結論から申し上げます。このケース、一番の処方箋はお母さんが息子さんのサッカーから距離を置くことです。
■問題は子どものモチベーションでなく、自分のモチベーションが下がっていることでは
息子さんは「自分は下手なんだし、出たら負けちゃうんだから上手な子が行くのは当然。でもちょっと悔しいかな」と言いつつも、練習は楽しんで通っていると書かれています。「親の私がどんなモチベーションでいたらよいのかモヤモヤする」とありますね。
そこを考えると、実は息子さんではなく、お母さんの問題のような気がします。「子どものモチベーションを下げさせないためには?」との相談のようでありながら、実は子どものサッカーに対するご自分のモチベーションが下がっている。それが不安で仕方ないのではありませんか。
■子どもは楽しく練習しているのに、起きてもいないことで親が不安になっている状況
ご相談文の冒頭で、留守番組の二人だけが置いて行かれることに対し、不満を述べられています。面白くない気持ちはよくわかります。私も息子が小学3年のとき、上の学年に呼ばれて遠征に行ったら1試合も出られず戻ってきたことがあります。試合中に先輩のプレーを見ずに砂に絵を描いていたから「もう出さない」とコーチに言われたそうです。
ですが、息子は自分の学年ではないし、大して気にしてもいませんでした。ただ単に「一日中ベンチにいて面白くなかった。自分の学年の練習に行きたかった」と言っただけでした。まあ、そうだろうなと私も思いました。
上の学年は人数も多く、下の学年が出て、その学年の子どもは少ししか出られないことが問題になっていました。
息子さんは自分の学年の活動があるのだからそれでOKな気がします。だから本人も楽しく練習しているのでしょう。それなのに、お母さんは、彼の気持ちが卑屈になったらどうしようとか、友達から「下手だから試合にでれないって言われたらどうしよう」と、まだ起きてもいないことを心配しています。もしかしたら、他のこともあいまって、お母さん自身の不安感情が高まっているのかもしれません。
少し気分を静めて、パートナーと話し合ってみるなどして、ご自分の気持ちの揺れと向き合ってみてはいかがでしょうか。
■親に信用されてないと感じると子どもは落ち込む
もし本気で息子さんの精神状態が心配でたまらないのならば、もう少し自分の子どもに自信を持ちませんか?
この連載でも以前に申し上げましたが、親が「転ばぬ先の杖」を立てようとすると子どもを不安にします。自分は楽しいと言ってるのに、卑屈になったらどうしようとお母さんが心配していることを感じた子どもは、自分が信用されていないことに落ち込みます。
つまり「最も近くにいる母親にこんなに心配されてしまうダメな僕」と思ってしまいます。
試合に出られない彼の悔しさに「残念だったね。悔しいね。一緒に連れて行ってくれればいいのにね」と共感することは重要です。ただし、子どもの気持ちに親が同化してはいけません。そこでは「いいじゃん。学年の試合があるしね。また頑張ればいいよ。
楽しくサッカーできればいいね」と寄り添ってあげてください。
しかも冒頭で伝えたように、息子さんは楽しんで通っています。そこを認めてあげましょう。
■「試合に出さないなら辞めさせます」親が立腹して子どもの意思を無視するケースも
(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
以前、都内で少年サッカーのコーチをしている方が、こんな事例を教えてくれました。
4年生が大会に出たら、相手が強くて、二人だけ試合に出せなかったそうです。すると、その日当番だったその子のお母さんが「試合に出ないのなら当番なんかしないほうがよかった。もうやめさせます」と言ってきたそうです。
コーチは陳謝し、その子にも「今度はチャンスがあるから」と説得したら、子どものほうはうなずいたそうです。
入ってまだ数か月でしたが、サッカーを好きになっていました。ところが、お母さんは聞き入れません。「みんな出られると言われたから入れたのに」と言って、息子さんの手を引っ張って帰ってしまいました。
「子どものほうはやめたくなかったと思う。歯を食いしばって泣くのを我慢していました。でも、母親にやめたくないと言えないわけです」
歯を食いしばっているのを、お母さんは「ほら、この子もこんなに悔しがっている」と言ったそうです。
親が子どもをコントロールできると考えないほうがいいです。声掛けとか、何か話をしてやる気が出るものではありません。日ごろから、できるだけ子どもの選択を尊重して任せましょう。
「ま、いっか。サッカーをするのは私じゃない。この子なんだし」
そのようにぜひ割り切ってください。