「厳しいけど、情熱があっていいコーチだ」は本当? 熱血コーチの情熱は子どもを伸ばすか否か問題
「あのコーチは厳しいけど、情熱があっていいコーチだ」。みなさんの周りにもそんな発言をする方いませんか?随時声を出して指示するなど熱い姿勢を見せる方を「情熱がある」コーチをありがたがる親御さんの声は少なくありませんが、はたしてそれは子どもたちを伸ばす指導なのでしょうか。
いつもは保護者からの相談にスポーツと教育のジャーナリスト・島沢優子さんがアドバイスを授けるこの連載ですが、今回は編集部からの質問に答えていただきました。
(構成・文:島沢優子)
(写真はフリー素材)
<<Bチームで苦しむ中学生の息子にどんな言葉をかければいいのか問題
<サカイク編集部からの質問>
みなさん「情熱のある指導者」の「情熱」意味をはき違えていませんか?
熱い指導は保護者にとってわかりやすく、いかにも子どものことを思っているように映ります。
しかし、あれこれ言い過ぎ、指示しすぎる指導は選手を恐縮させ、逆に子どもたちの考える機会・思考力を奪うことにつながるのではないでしょうか。(もちろん人格を否定するような発言は言語道断です)
子どもたちのことを本当に考え実践する指導者たちが持つ「情熱」とは、どんなものなのか。
今回は、過去から変わらず続く価値観が現代の子どもたちの指導に合っているのか、というテーマについてお送りします。
<島沢さんからの回答>
先日、池上正さんと、祖母井秀隆さんが、とあるリモートセミナーに登場されていました。
池上さんはサカイクで連載されたり、講習会をしています。池上さんが師匠と仰ぐ祖母井さんは元ジェフユナイテッド市原・千葉でGМなどを歴任し、2007年には当時フランスリーグ1部だったグルノーブル・フット38のGМも務めました。恐らく皆さんはご存知でしょう。
セミナーの中で、池上さんがジェフで中学生チームを指導したときの話が出ました。
■保護者がコーチの指示を求める
試合中、保護者から池上さんにこんな声が飛んだそうです。
「どうして何も言わないんですか?相手のコーチはたくさん指示を出してますよ」
語気鋭く訴える父親に、池上さんは答えます。
「いや、私は選手が自分で考えてプレーするかどうかを見ています。
実は日本一厳しいコーチかもしれませんよ」
■怒鳴ったり指示を与える言動は、子どもの自立と成長を育む
多くの日本人は、怒鳴ったり、叱ったり、煽ったりする態度からしか「厳しさ」