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数的優位を作る指導のコツ、どこを見て、何が見えていればいいのか理解させる教え方はある?

サカイク
海外では7歳から2対1の「数的優位」を学ぶという。相手のマークをはがして、引き付けてボールを出す動きを身につけさせるにはその年代から、と書いてあったが、日本の子ども達にどんな風に指導すればいい?

2対1の状況でどんな動きをするのか、どこを見て、どんなことが見えていればいいのか、意識させる指導の方法を教えて、というご相談です。

ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、数的優位の作り方を理解させる7つのコツを教えます。
(取材・文島沢優子)

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数的優位を作る指導のコツ、どこを見て、何が見えていればいいのか理解させる教え方はある?

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

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<お父さんコーチからのご質問>

池上さんこんにちは。

私は教員で、学校の少年団の指導も担当しています。指導年齢は、連載のカテゴリでいうとU-8になります。

自分自身サッカー経験はあるものの、自分の時代とは色々変わっていると思うので、池上さんの発信や書籍、Webなどで情報収集しつつ、現代の指導を学んでいます。


今回質問したいのは、2対1についてです。

海外(私が読んだ情報はスペインで指導された方の記事)では、数的優位について学ばせるために7歳から2対1をやっているとありました。

相手のマークをはがして、引き付けてボールを出す動きを7歳ぐらいからやらないと。とのことでした。

日本では低学年だと個人技の習得がメインのチームもあると思いますが、海外の指導を読んで個人的にはかなり共感できました。

そこで、各エリアで数的優位を作り、相手を引き付けてパスを出す動きを身につけるための指導のコツ、2対1の状況でどんな動きをするのか、どこを見て、どんなことが見えていればいいのか、この年代に意識させるにはどんなことをすればいいのかアドバイスいただけませんでしょうか。

<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

それでは、指導する際のコツを7つお伝えします。

■まずは攻撃の成り立ちを理解しやすくする


低学年で2対1の練習をするとき、最初の段階ではディフェンス(人)の代わりにコーンを置きます。コーンは動かないので、攻撃の成り立ちが理解しやすくなります。

コーンが自分と、ボール保持者の間にある場合「そこにいたら、パスがもらえるかな?」と尋ねましょう。子どもたちは「ここに行けばいい」とか「いや、こっちだ」言い出します。そこで、「でも、ゴールに向かって行きたいよね?どこがいいかな?」と良いポジションを探ってもらいます。

その段階が終わったら、実際にディフェンス(人)をつけて2対1をやってもらいます。その際「ディフェンスは相手のボールをとらなくていいから。そのまま立っていて」と伝えます。
コーンが人に替わるだけで、子どもがもつイメージは違ってきます。

一度やったら、次は「ディフェンスは足だけ出していいことにします」と話します。ディフェンスに近いボールは足が出されて止められます。

そこまできたら、その次はディフェンスは動いてOKにします。ここで初めて通常の2対1に。

そのような段階を踏ませてあげてください。

どのトレーニングも同じですが、子どもに技術を身に付けてほしいと思ったら、それを身に付けるためにトレーニングをどう分解するか。これが1つめのコツです。
それをコーチが自分なりに見つける必要があります。

■ボールをもらうためにどんな動きをして、何が見えているかを整理


2つめ。目の前で起きていることを鮮明にし、整理することです。

最終形の2対1に入ったら、子どもがボールをもらうためにどんな動きをして、何が見えているのかを、指導者自身のなかで鮮明にする必要があります。

そうすると、(自分の味方を見てないな)(ディフェンダーばかり見ているな)などと、さまざま発見、気づきが生まれたら、そこを伝えてください。

時には来た道を戻ってもいい。例えば「足だけ出して動かないディフェンス」の2対1を再びやってみます。

■どこを見て、どんなことが見えて、どんな動きをすればいいのか。正解を見つける時間をあげる


3つめは、自分なりの正解を「見つける時間」をあげること。


2対1の状況でどんな動きをするのか、どこを見て、どんなことが見えていればいいのかを認識させたら、その次に見るのは、ディフェンスがどのくらいの距離にいるかを認識させます。次にどこでどのタイミングでパスするのか?もしくは、自分でドリブルで進んでいくのか?プレーの選択です。そういった順番で丁寧に伝えてください。

味方はどこにいるほうがいい?どんなときにパスは成功する?パスを出すタイミングはいつでしょう?ここを一緒に考えてあげるのです。

どんなときに成功したか。それを順番に分解し、みつける時間をあげましょう。

■プレー中にどこでどんなことを考えるか、を伝える


4つめは、「どう考えるか」を伝えること。

先日、私がアドバイザーを務めている小学5年生の試合を観に行きました。
終わった後、話をする場を与えられたので「試合中は、何を考えていましたか?」と尋ねました。すると、子どもたちは「う~ん」と首をひねるばかりで何も出てきませんでした。

指導者の皆さんは、子どもたちに「考えろ」と伝えています。が、プレー中にどこで、どんなことを考えるのか?何を見て、どう考えるか?を伝えているでしょうか。

例えばコーチは「状況を見ろ」と言うけれど、その状況をどんなふうに理解するか?そのときに数的優位になっているのかどうかなど気づけるよう育てる必要があります。具体的なものの見方、考え方を整理せずに、ただ「考えろ」と言ってはいませんか。

そのようなことを子どもたちが理解しやすくするために、ドイツは3対3のフニーニョを推奨しています。相手も見方も3人ずつなので、見るものが少なくてすみます。
そのなかでどう考えるか。それを積み重ねていけば、理解が深まります。

ところが、日本は小学1年生から8人制をやっています。10年ちょっと前までは11人制でした。都道府県協会の方のなかには「でも、サッカーは11人制だろ」とおっしゃって、いくら説明してもなかなか移行が進まない。そんな時期もありました。

ドイツが推奨するフニーニョとは......

■練習はうまくできなくてもいい、ととらえること


5つ目は「練習はうまくできなくてもいい。簡単なほうに戻ってもいい」ととらえること。

育成を担当する皆さんは、練習が上手くできないといけないと思い過ぎるのではないでしょうか。子どもたちは、頭の中で想像して、体で表現します。その順番を分解してあげて経験させていかなければ「頭ではわかっているけれど体が動かない」という状況になってしまいます。そして、そんな状況が続くならば、上述したように「簡単なほうに戻る」ことをやってください。3歩進んで2歩下がるようなことになりますが、それでも一歩前進しています。

そのくらいの気持ちでゆったりとみてあげましょう。急がず慌てず丁寧に指導することを心がけてください。

■練習でやったことを試合の中で使う、ということを意識させる


6つ目は、試合で使うことを意識させること。

練習でできても、試合のなかで使えないと意味がないことを子どもたちと共有してください。

例えば、ミニゲームをして2対1の状況を作るため「ワンツーを使おう」と働きかけます。例えば、「ワンツーをどこかで使わないと、シュートが決まっても得点にしない」といったルールにします。

ワンツーからシュートでもいいし、その前の段階でどこでやってもいいことにします。相手のプレッシャーから逃げるためのワンツー。ゴール前でフリーになるためのワンツー。何でもいいです。

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■どうして成功したか、どんな時に成功したか、を認知させる

数的優位を作る指導のコツ、どこを見て、何が見えていればいいのか理解させる教え方はある?

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

7つ目は「どうして成功したか」を認知させること。

どんなときに成功するか。そういう状況やタイミングがあります。それを子どもたちに伝えましょう。なんだか知らないあいだに成功している。それが子どもです。

そこで、「どうして成功したんだと思う?」と問いかけながら認知させることが重要です。

オシムさんのインタビューの映像を見返すと、こんなことを言っています。

「私は、サッカー小学校の教師のつもりでやっている。小学生の判断がいつも正しいわけではない。だから伝えてあげなくてはいけない」

オシムさんも選手(子ども)たちの成功を、ちゃんと解説してあげていました。

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池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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