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「伸ばしたいなら離れなさい」わかっているけど現場指導が難しい。いい距離で離れる「さじ加減」を教えて

サカイク
考えてプレーするために「離れて見守る指導」をしたいけど、さじ加減が難しい。学校や塾の手厚いサポートに慣れている親たちは「もっと子どもに構ってあげてほしい」と言うし、子ども達は思考するのが面倒なのか「早く正解を教えて」と言う。

離れて見守る指導について保護者に理解していただくためにはどうしたらいいの?と言うご相談をいただきました。

今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、離れて見守る指導を提唱してきた池上正さんが、具体的なアドバイスを送ります。
(取材・文島沢優子)

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「伸ばしたいなら離れなさい」わかっているけど現場指導が難しい。いい距離で離れる「さじ加減」を教えて

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

<<人数が少なく全学年一緒に練習技術にもサッカー理解にも差がある子どもたちにどんなトレーニングをすればいいか教えて

<お父さんコーチからの質問>

はじめてお便りします。

地域の少年団で指導をしています。指導年齢はU-10です。
保有しているライセンスはD級で、指導についてはJFAのセミナーなども受けて情報をアップデートしているつもりです。

チームはどちらかと言えば弱い方です。県大会に出場するようなレベルではなく、市の大会でも上位進出は稀です。強さに関して保護者から何か言われることはありません。

最近池上さんの指導を知りました。

考えてプレーするために、手をかけすぎず離れるという指導に共感し、普段のトレーニングで実践しようとしているのですが、「さじ加減」が難しいなと感じています。

上手に子どもたちから離れるために、気を付けることはどんなことでしょうか。

最近は学校が「手厚いサポート」「面倒見の良さ」を売りにしているところも増えているためか、保護者も我が子にたくさん構ってほしいと言いますし、子どもたちも思考するのが面倒なのか「早く正解を教えて」と言います。


保護者に理解していただくために、どんな風にすればいいのか。どんなトレーニングなら保護者に「離れる」ことの大事さを気づいていただけるのか、教えていただけませんでしょうか。

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。上手に子どもたちから離れるコツは、拙書『伸ばしたいなら離れなさい』(小学館)に書いてあります。もしまだ読まれていないのであれば、こちらをお勧めします。

■「黙っているだけで何もしない」コーチだと思われないよう、最初に保護者に伝えることが大事


最初に親への対応を説明します。

例えば子どもに自分で考える機会を持たせるため、コーチが余計なことはなるべく言わないようにしようと試みるとします。

そうすると、保護者の反応は「コーチは、子どもに何もしてくれない」になりがちです。
外から見ていると、コーチ側は子どもの表情や、次にどうするかを見守っているのに、それを「黙っているだけで何もしない」と誤解されるのです。

これは、保護者の方々が子育てに「見守る」という行動が重要であることをご存知でないこと、保護者が描くサッカーコーチ像が「手取り足取り技術を教えてくれる人」であることが影響していると思われます。

したがって、離れて見守ることの価値を、トレーニングを見せることで親たちに理解させるのは難しいでしょう。そこをクリアしていくためには、コーチ側が親とコミュニケーションをとることが不可欠だと考えます。

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■保護者に理解していただくための具体的な方法その2


次に、ゲームで子どもたちに何か伝えるとしたら、親御さんたちの目の前でこんな声をかけます。

「コーチね、見ていて気になっているんだけど、みんな少し片寄ってないかな?どう思う?」

子どもたちに「片寄るな!」と注意するのではなく、「どうだった?コーチにはこう見えるけど、どうしたらいいかな?」とヒントになる問いかけをするのです。

より具体的に言えば、最初に状況を説明します。例えば、子どもたちが、ボールにばかり集まっていること。
全体のバランスが悪いことなどです。

「みんな、練習のとき、コーチは何て言ってる?」

指導者が尋ねると、子どもたちは「広がれって言ってる」などと答えます。

「オッケー。みんな、わかってるんだよね。じゃあ、それをコーチが言わないとできないのかな?気づいてたなら、気づいてた人が言ってあげればいいよね。でないと、いつもコーチが言わなきゃいけなくなるよね」
そんなふうに伝えてください。

■試合も「離れて伸ばす指導」を伝える良い機会


試合の時も、保護者に「離れて伸ばす指導」の内容を伝える機会になります。練習よりも試合のほうが親御さんはたくさん来るからです。


例えば、ハーフタイムで子どもたちに話をする際「子どもたちの後ろにきてくださーい」と、保護者に声をかけます。その際、上述したようなコーチの問いかけや、子どもたちとのやり取りがあるかと思います。どれも子どもに自分で考えさせる仕掛けが隠されているはずです。そこを聞いてもらえばいいのです。

さらにいえば、冒頭でふれたように、親たちは少なからず「どうして何も言わないのか?」と感じています。それらは焦りや憤りに近いものです。親たちはわが子に上手くなって欲しいし、チームに強くなって欲しいと願ってこそなので、そこを察して説明することが重要です。

■保護者の気持ちにも寄り添いながら、理解を深めていこう

「伸ばしたいなら離れなさい」わかっているけど現場指導が難しい。いい距離で離れる「さじ加減」を教えて

(写真は少年サッカーのイメージです。
ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

私のチームでは試合後、子どもたち全員に「今日の試合はどう思いましたか?」と尋ねます。見に来た親に向かってしゃべってもらいます。すると、子どもたちはどんどん発言します。例えば4試合とも負けたとしても「ワンツーが結構使えた」とか「ボールがとれるようになった」と前向きな話が多いです。

そこで私は「いやに前向きですね。全部負けてるのにねえ?外から見てるとちょっと違いますよね」などと笑いながら親に向かって言います。親御さんの気持ちをほぐすためです。

個人差はあるかもしれませんが、保護者は負けたことにショックを受けています。
悔しいし、悲しい。情けない気持ちももしかしたらあるかもしれません。その気持ちを、指導者は知っておかなくてはいけません。保護者の気持ちに寄り添うのです。

よって、子どもたちには「確かにできたことも多かったね。だったら、もっと使えばいいよね。そうすれば試合の中身も違ってくるよね」と次の課題があることを示します。

ただし「自らやろうとすることが大事なんですよね」と保護者に伝えてください。そうやって理解を深めながら、親子で成長できるチームを目指してください。
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「伸ばしたいなら離れなさい」わかっているけど現場指導が難しい。いい距離で離れる「さじ加減」を教えて


池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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