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息子がキーパーをやりたくないと言うので移籍も考えてます問題

サカイク
チーム事情で上の学年に駆り出されてキーパーやらされているけど、本人は「キーパーは絶対やりたくない」と言う。春からは同学年のチームでもキーパーになりそう。

人見知りだから今のチームで続けたいけどキーパーは嫌という息子。親も楽しかったサッカーが嫌なサッカーになってほしくない。どうしたらいい?とのご相談をいただきました。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの子育てと取材で得た知見をもとに、お子さんをサポートするために必要なことをお伝えします。
(文:島沢優子)

息子がキーパーをやりたくないと言うので移籍も考えてます問題

(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

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<サッカーママからのご相談>

小4(9歳)の息子が所属しているのはそんなに強くないチームですが、その中ではセンターバックのポジションでチームの中では一番走り回って頼りになる存在です。

ですが、来年度のチームは学年が上がり5、6年チームになるのですがキーパーがいないのでうちの子がかり出されてキーパーをやらされています。


本人は絶対キーパーはやりたくないと言います。フィールドを走り回るサッカーが大好きでキーパーは全然面白くないと言います。

でもコーチが怖くていえないと言っています。

このままでは学年上がったらキーパーにさせられそうです。でも親が口出すのは憚られそうで移籍も視野に入れております。

本人は人見知りで出来ればこのチームで続けたいけどキーパーは嫌なのです。

どうしたらいいのかわかりません。楽しいサッカーを嫌なサッカーにさせたくありません。
アドバイスお願いします。

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

まず、ゴールキーパーというポジションについてお伝えしておきます。例えば日本では、子どもがサッカーを始めたら、ボール、トレーニングシューズ(トレシュー)やスパイク、そしてどこかの欧州クラブか代表のユニフォームを練習着として買ってあげる親御さんが多いです。

一方ドイツでは、ボール、スパイク、キーパーグローブを購入すると聞いたことがあります。ドイツでカーンやノイヤーなど世界的なゴールキーパーが生まれていることからも、キーパーが人気のポジションであることがわかるかと思います。

■欧州ではキーパーは人気ポジションなのに、日本ではネガティブなイメージを持たれている


ドイツや欧州ではゴールキーパーの役割がいかに大きいものかを、指導者、保護者ともに理解しています。そこが、サッカーがプロ化されてまだ30年の日本と、100年以上の歴史を持つクラブがひしめく欧州との大きな違いだと考えられます。


さらにいえば、サッカーは小柄ですばしっこい子どもがやるスポーツという先入観もあって、身長が高かったり体の大きな子どもはバスケットボールや野球を選択します。そんな要素も相まって、キーパーというポジションが過小評価されているのかもしれません。

このようにキーパーというポジションへの価値が乏しい一部の指導者は、試合に勝つために「大きくて動ける子ども」にずっとキーパーをやらせたり、消去法のように「フィールドではあまり動けないからキーパーでもやらせるか」という考え方になりがちです。

本来なら小学生のうちにさまざまなポジションを経験してもらって、サッカーがどんなスポーツなのかをしっかり理解してもらうことが必要なのに、どうしても試合に勝つことが何より優先されてしまうのです。

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■他の子もキーパーをやりたくないかもしれない、その場合の解決策をコーチに提案してみる


そのような風土で息子さんも育っているわけなので「キーパーをやりたくない」という感覚を抱くのは仕方のないことでしょう。

ただ、息子さんに「自分も嫌なんだから他の子たちも嫌かもしれない」という視点はないでしょうか。そこはお母さんが「君が嫌なら他の子も嫌なんじゃないかな?」と考える糸口を与えてもよいかと思います。

だったら、どうすればいいかな?

そんな問いかけをしてみてください。
そこが第一段階です。

おのずと「試合ごとに交替してキーパーをやる」という答えが出てくるかもしれません。

もしもそういった結論に達したのであれば、息子さんと一緒にコーチと話してみてください。ここが第二段階です。

キーパーは全員で交替でやれないか。小学生のうちはさまざまなポジションを経験させてほしい旨を伝えるのです。本来なら息子さんに任せて自分で言えるといいのですが、コーチが怖くて言えないということなのでお母さんが付き添ってはいかがしょうか。メールの文章だけなので、どんなクラブでどんな方針で指導なのかはうかがい知れません。
ただ「親が口出すのは憚られる」とあるので、お母さんにとって自由に意見を言えるようなクラブではないのでしょう。

コーチに言うのが難しいというのなら、とりあえず第一段階までやってみて、しばらくは息子さんに任せてみてはいかがでしょうか。

■このチームにいたいけどキーパーは嫌、は子どもの問題親が転ばぬ先の杖を用意せず、見守って


ご相談文に「どうしたらいいのかわかりません」と書かれていますが、本人が「もう嫌だ。このチームでやりたくない。僕は他のチームを探す!」と立ち上がるまで何もしなくていいと思います。

「人見知りで出来ればこのチームで続けたいけどキーパーは嫌」

これは息子さんの問題です。また「楽しいサッカーを嫌なサッカーにさせたくありません」とありますが、嫌なサッカーだからどうするか?を決めるのも息子さんです。今のお母さんの心情を察すると、転ばぬ先の杖を用意しようと一所懸命に見えます。


「チームの中で一番走り回って頼りになる存在」なのに「キーパーをやらされるなんて悔しい」。

そんな負の感情が、お母さんの中にあるかと思います。もちろんそう感じるのは当然です。かわいいわが子ですから自然なことです。私もかつてはサッカー少年と少女の母親だったのでよくわかります。

とはいえ一番良いのは、息子さんが自分で「キーパーは交替でやりたい」と仲間やコーチに提案できることです。お母さんが「人見知りだからそんなことできない」と信頼できなければ、息子さんはそこから一歩踏み出すことができません。ゆっくりでよいので、背中を押してあげられたらと思います。


■移籍を考えるタイミングは、我が子がそうしたいと言ってきたとき


息子がキーパーをやりたくないと言うので移籍も考えてます問題

(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

それでも、所属されているクラブが交替でキーパーをやってみんなが試合に出られるよう工夫してくれない。もしくは息子さんが別のクラブでやりたいと自分から言ってきたら、そこで移籍を考えればいいことだと思います。

ただし、移籍したとて、次もキーパーをやってと言われるかもしれません。

お母さんにとって大事なことは、周りの環境に振り回されず自分を持った子どもに育てることです。息子さんが自分の意思を他者に伝えることができ、なおかつチームのことを考えられる人間になる。そのためにどうしたらよいかを、一緒に考えてあげられるお母さんでいてほしいと私は思います。

息子がキーパーをやりたくないと言うので移籍も考えてます問題
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。

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