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スタメンのレベルじゃない子を監督が贔屓。県大会出場が危ういです問題

サカイク
お気に入りの保護者の子をいつも出場させるが、その子はスタメンになれるレベルじゃない。県大会出場を目標にしていると言っているが、その子がいたら無理。

まともな采配をしてほしいが、他の親たちもチームに意見するつもりはない。誰か監督に注意できる人がいればいいのに......。と悩むお母さんからのご相談。

指導者から贔屓されているように見える子がいると、親たちの関係性がギスギスしたりしますよね。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

スタメンのレベルじゃない子を監督が贔屓。県大会出場が危ういです問題

(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

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親のほうが立ち直れません問題

<サッカーママからの相談>

島沢様はじめまして。

11歳の息子が所属するチームの監督は、小学校教諭をしている20代の方です。チームにお気に入りの保護者(30代)がいて、いつもその方の子を試合に出します。その子はとてもスタメンになれるレベルではなく、コーチ陣にも困惑している方もいます。

最初は保護者から声をかけ仲良くなり、今ではチームの飲み会などあると2人でべったりです。

その保護者はいわゆるうるさい保護者で、自分の息子が試合に出ていないと騒ぎ出します。違和感を感じている方もいますが、誰も意見をするつもりはなさそうです。

県大会出場を目指していると言いながらその子が出ていては無理です。
なんとかまともに采配をする様にならないものかと悩んでいます。

誰か注意できる方がチームにいればいいのですが........。

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

お母さんの悩みは「その子が出ていたら県大会出場は無理だと考えるから、まともな采配をしてその子を出さないで欲しい」ということですね。

回答するにあたり、私が疑問に思ったことと関連付けて3つほどアドバイスさせてください。

■苛立ちは分かるが、挙げている内容はどれも「主観」の域を出ない


ひとつめ。私が気になったのは、お母さんの話がどれも「主観」だということです。・その子がスタメンのレベルであるか否か。

・その子が試合に出たら県大会出場は無理なのか否か。
・保護者とべったりだから試合に出すのか否か。
・まともな采配なのか否か。

お母さんからすれば「だって誰から見てもそうだよ。みんなそう思ってるよ。おかしいよ!」と言いたくなるでしょう。もし、上記の4項目において、自分は間違っていないと思われたとしても、そのいずれもが根拠のない主観だということを、まずは理解してください。

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■他者を説得するためには根拠が必要


そして、他者を説得するためには根拠がなくてはいけません。
このご相談文には今のところ根拠が見当たりません。お母さんの苛立ちは何となく想像はできますが、あくまでお母さんの言い分なので、この監督に話を聞いてみないことには迂闊なことは話せません。話してはいけないと考えます。

他人が掌握していることに対し、異議申し立てをする場合は大義が必要です。大義というのは「どうしても変えてほしい、なぜならばこういう理由だからです」という限りなく正当で常識的なものです。

では、このケースの場合、監督に「この子を起用するのはやめてほしい」という大義があるとすれば、「チームのためにならない」ということでしょうか。それについては、やはりお母さんひとりではなく、他の保護者の方々や、困惑しているというコーチ陣の意見をまずは丁寧に聞きましょう。そのうえで、大勢が「この状況はチームのためにならないね」という結論に達したのなら、監督を交えて話せばいいことかと思います。


また、その子の親御さんのことについては「自分の息子が試合に出ていないと騒ぎ出す」と書かれていますが、どんなふうに騒ぎ出すのかちょっとわかりかねます。その親御さんにはそのようになってしまう何か原因があり、監督さんがそこを配慮したうえで付き合っているとは考えられないでしょうか。

■子どもたち自身が騒ぎ出したり、チーム運営に支障が出るならば話し合う必要がある


このご相談文を読む限り、チームのためにならないから何とかしなくてはならない、というような事態ではなさそうです。

例えば、子どもたちが「贔屓されている」と騒いでしまい、その子が仲間外れにされている。もしくは、監督とその子の親が仲良くしすぎて、他の親たちとも亀裂が生じてしまい、運営がやりづらくなっている。そういった支障があれば、チームで話し合う必要がありそうです。話し合ったほうがいいなと思えば、仲のいい親御さんにも声をかけて集まってはどうでしょうか。

■「誰か」ではなくあなた自身が監督と話しをしてみては


二つめ。


「誰か注意できる方がチームにいればいいのですが」と書かれていますが、注意するという行動は少し違う気がします。

保護者も監督も、子どもの成長を見守る地域の大人として全員平等であるべきです。明らかに規律を乱しているとかではないようなので、ここは監督さんに「全員と同じ温度で接してもらったほうがいいのではなか」といった話をしたほうがいいかと思います。お母さん自身が監督さんと話してはどうでしょうか。

■家でも「あの子が出たら負けるのに」なんて言っていませんか?


三つめ。

サカイクの読者が「この子を出したら負けるのに」といった感覚をもたれていること自体が、私にはショックでした。

全員が同じだけ出場機会を得る。小学生の場合はそれが理想です。
監督も保護者もそのような状況にないのは百も承知ですが、であれば試合に出た子どもたちを応援するのがそこに集った大人のあるべき姿ではないでしょうか。

よもや、ご自分のお子さんに「あの子が出たら負けるのに、なんで選ばれるんだろうね」などとおっしゃってはいないかとは思いますが、お子さんはお母さんがそう思われていることを知ったらショックかもしれません。

もし、そうではなく「そうだよ、あの子が出ないほうが勝てるのに」と言ったとしたら、お母さんはどう答えますか?「そうだね。あの子が出ないほうが勝てるのに」とおっしゃるのでしょうか。

■チームに任せられない、親が口をはさむべきと思ったらみんなで意見交換をして変えていこう


スタメンのレベルじゃない子を監督が贔屓。県大会出場が危ういです問題

(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

スポーツは楽しむためのものですが、その一方で教育的な要素もたくさん含んでいる素晴らしいコンテンツです。

勝ち負けは重要ですが、試合をするのは子どもたちで、サッカーが始まれば、そこはコーチと子どもたちの世界です。信じて任せるしかありません。

任せられない、これは口を挟むべきだと思えば、みんなで意見を交換して良いチームにしていくことです。

スタメンのレベルじゃない子を監督が贔屓。県大会出場が危ういです問題
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。

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