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親がコーチを怒鳴って辞めさせた。そんな少年団に息子を戻していいのか問題

サカイク
チームのお母さんが子どもたちの目の前でコーチを怒鳴り散らし、辞めさせた。子どもたちの前でそんなことをしたのが許せず息子を移籍させたが、最近になって「元の少年団に戻りたい」と言う。

本人の気持ちを尊重したいが、夫は「怒声を浴びせてコーチをやめさせる親がいるチームに戻るなんて恥ずかしい」と大反対。どうしたらいい?と悩むお母さんからのご相談。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、指導者・子どもへのリスペクトの重要性と親子にとって良い決断をアドバイスします。
(文:島沢優子)

親がコーチを怒鳴って辞めさせた。そんな少年団に息子を戻していいのか問題

(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

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<サッカーママからの相談>

小3の息子が少年団に所属していました。

保護者のお母さんが、コーチを子どもの目の前で怒鳴り散らし、辞めさせてしまいました。
日頃からコーチのやり方に不満を抱いていて爆発したようです。

怒鳴り方がひどくて、かつ子どもたちの前で怒鳴り散らしたことが許せず、うちは子どもを違う少年団に移籍させました。

その出来事以降、一時期チックが出てしまっていたのですが、辞めてからおさまりました。

ですが、最近息子が元の少年団に戻りたいと言ってます。

私は子どもの気持ちを尊重したいのですが、夫は戻ることに大反対です。あんなチームに出戻りなんて恥ずかしいと言って激怒しています。

夫は怒鳴り散らしている場面をみています。

息子は私たちが誘導すれば戻らずに今のチームでやることも可能だと思います。


が、どうしたらよいか分かりません。

前のチームは決して強いチームとは言えませんが、友達がたくさんいます。

こんな時、親としてどうしたらいいのかアドバイスよろしくお願いします。

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

前所属のチームに戻ることを大反対している夫と、戻りたいという息子さんとの板挟みで苦しんでおられるようです。

加えて「息子は私たちが誘導すれば戻らずに今のチームでやることも可能だと思うが、どうしたらいいのか」と書かれているように、できれば息子さんの意思を尊重したいと考えていらっしゃいます。それはとても良いことだと思います。

■事実確認ができないと難しいが......


さて、アドバイスする前に私が抱いた二つの疑問をお伝えします。
保護者のお母さんが日頃から不満を持っていたコーチを子どもの目の前で怒鳴ったことが原因で、コーチが辞めたとあります。しかし、この情報だけでは正直判断しかねます。

少年団の代表や他のコーチはどう受け止め、解決に動いたのか、もしくはまったく動かなかったのか。また、コーチは本当にこのことだけが原因で少年団を辞めたのか。そういったことをはじめ実際に何があったのかがわからないので、なかなか答えに窮します。

もうひとつ、「親の怒鳴り方がひどくて、かつ子どもたちの前で怒鳴り散らしたことが許せず、子どもを違う少年団に移籍させた」とあります。

一体このお母さんはコーチの何に不満だったのか。どういうタイミングで怒りが爆発したのか。
他の保護者も同調していたのかなど、事実確認ができません。

もしかしたら重篤なことがあったのかもしれませんが、子どもの前で他の親がコーチを怒鳴ったからと言う理由だけで、子どもが慣れ親しんだ少年団を辞めさせたのでしょうか。

そのようにちょっと情報が少ないなと感じますが、三つほどアドバイスさせてください。

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■アドバイス①親がコーチをリスペクトしないと子どももリスペクトしなくなる


まず、親御さんはコーチに対してリスペクトする気持ちは大事だと思います。親が子どもの前でコーチ批判をしてしまっては、子どもだってリスペクトしなくなります。信頼関係が結べないので、子どもが成長できるエネルギーを生む関係性とは言えません。

その意味で、怒鳴られたコーチを、お母さんたちが救えなかったのかな?と残念に思います。親と指導者の間で信頼関係があってこそ、子どもと指導者もよい関係を結べるはずです。


親が自分たちの感情だけで動いてしまっては、子どもにとって最適な環境を与えられないのではないでしょうか。

■アドバイス②親は子どもをリスペクトしなければならない


それと同様に、親は子どもをリスペクトしなくてはいけません。これがふたつめです。どんなに小さくても、子どもは生まれながらに意志を持っています。少年団を辞めさせる前に、息子さんに「どうしたいのか?」と確認したほうはよかったと思います。

ご相談文の書き方ですと、子どもの意志を確認したり尊重したりすることなく、有無を言わせず辞めさせたように映ります。新しいチームに移籍させてチックが出たということは、息子さんにとってとてもストレスフルだったと言う証です。

子どもは、普段と変わらない大人や仲間といった「同じ環境」が、こころの落ち着きをもたらします。
「恒常性」と言われるものです。例えば、保育士さんたちはあまり髪型を変えないそうです。そのくらい気を配る要素なのです。

無論、もし事情を詳しく聞いていれば「それは辞めさせて良かったですね」と言えるものなのかもしれません。が、そのあたりが書かれていないので断定できないのです。そのことを踏まえたとしても、親の感情や価値観だけで子どもが通い慣れたサッカー環境を奪ってしまったことは本当に正しかったのかな?と疑問符がつきます。

■アドバイス③息子さんの勇気を認めてあげよう


親がコーチを怒鳴って辞めさせた。そんな少年団に息子を戻していいのか問題

(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

そして、三つめ。これが結論になります。
息子さんが今「もといたチームに戻りたい」と言うのであれば、復帰させてあげませんか?

親の感情や価値観で環境を変えられてしまう子どもは、親から「君はどうしたいの?」と自分の考えを問われないので、少しずつ意志を持たなくなる傾向があるようです。しかし、息子さんは自分の意志を示しました。

「こうしたいって、ちゃんと言えたね」とその勇気を認めてあげてください。そして、そういったことをぜひ夫と話しましょう。お母さんの意見、気持ちをしっかり伝えてください。

親がコーチを怒鳴って辞めさせた。そんな少年団に息子を戻していいのか問題
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。

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