困難にぶつかってもポキッと折れない「しなやかな心」を育むのに、サッカーが適している理由
と思ってしまいます。それよりも「動き出しがよかったね」と言ってあげたほうがいいと思います。結果ではなく、プロセスを評価することが大切です。
菊池:チャレンジしたことに目を向けてあげたいと、常に思っています。チャレンジすること自体が、大切な過程だからです。うまくいかなくても、そのプロセスを認めてあげて、次はどうしたらシュートが入るかを一緒に考えるほうが、選手のモチベーションは上がりますよね。
■キャンプで劇的に変わるわけではない、子どもの「楽しみ方」が変わるタイミングを見守って
福富:私の息子がサカイクキャンプに参加しましたが、帰ってきて「何が身についた?」など、野暮なことは聞かないようにしていました(笑)。2泊3日のキャンプで結果を聞くのは、KPI(重要業績評価指標)の世界になってしまうと思うからです。
3年後くらいに、理由はよくわからないけれど、この子は変わったな、もしかしたらサカイクキャンプも役に立ったのかな、くらいの感覚でいいのではないでしょうか。
菊池:おっしゃるとおりだと思います。子どもは大人が思っている以上に、敏感に感じ取ります。「ここはチャレンジしても大丈夫な場所なんだ」と感じてもらうことで、自然とチャレンジが増え、できることも増えていきます。保護者の方には、少し離れた位置から、子どもの可能性を信じて見守っていただけたらなと思います。
福富:すぐに身についたものは、すぐになくなってしまいます。たとえば会社で研修を受けてレポートを提出し、「研修を受けたのだから、明日から変わりなさい」と言われても、無理な話でしょう。高額な研修を受けたからといって、すぐに変われるわけではありません。
親ができることは、愛情を持って、子どもを見守り続けること。それが、子どものやる気を高めることであり、しなやかな心を育むために、大切なことではないでしょうか。
菊池:最初は子ども同士でボールを蹴って遊ぶ楽しさから、相手との駆け引きができるようになったり、やりたかったことができるようになったりと、楽しみ方が変わるタイミングがあります。そのタイミングまで、保護者の方には我慢してほしいと思います。多くの子どもは、家で親に管理されているので、サカイクキャンプが、羽を伸ばせる場所であったら嬉しいです。
福富信也(ふくとみしんや)
信州大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。横浜F・マリノスコーチを経て、2011年に東京電機大学理工学部に教員として着任(サッカー部監督兼務)。