スペインでは小1でも団子サッカーにならない理由とは⁉ スペインと日本の育成環境の違い
サッカーは戦術的なスポーツのため、選手を適切に配置できれば、効果的なパス回しもできるようになりますし、効果的な守備も可能になります。相手チームのシステムや戦術との兼ね合いで、知的な駆け引きも生まれてきます。スペインではそうやって、小学校低学年の頃から「普通のサッカー」に少しずつ触れていくのです。
■小学1年生でも「ゴールキックからの組み立て」を練習する
2022年9月に家族でスペイン旅行に訪れた際、私は2人の息子を連れていき、街クラブの練習に参加させました。当時は上の子が小3で、下の子が幼稚園の年長。その年代でも、日本の同年代との練習は全く内容が違いました。
幼稚園の年長の息子が入った小学1年生のチームの練習は、非常に実践的なものでした。その日は練習がはじまると、コーチは「週末の試合ではゴールキックからのボールの組み立てが上手くできなかったから、今日はそこから練習してみよう」と話し、ゴールキックからのパス回しの練習をはじめました。
小学1年生でも年間を通じたリーグ戦があるスペインでは、このように「試合で上手くできなかったこと」をテーマに練習することが多いです。練習と試合が分離されずに、試合で分かった課題に基づいて練習が行われ、練習で行われたことが試合で生かされているのです。
その日は、ゴールキックのときの選手の立ち位置なども、細かく指導をしていました。
なおスペインの小学1年生の年代のサッカーは基本的に7人制ですが、バレンシア州は特殊で日本と同じ8人制です。
幼稚園生や小学校低学年では5人、6人と更に少人数にしている地域もあり、子どもの年齢やレベルに応じた人数調整こそ「プレーヤーズ・ファースト」だと感じます。
1チームの人数は大人のサッカーとは違いますが、子どもたちは大人と同じような練習をしています。私が見たのは小学1年生のチームの練習でしたが、おそらく幼稚園生でも同じような練習をしているでしょう。
もちろんこの年齢だと、指導者の指示通りに動けない子もいますが、そうした子どもたちにもしっかり指導者は向き合います。
一緒に見学していた妻は「小さな子がこんな戦術的な練習をするの!?」と驚いていましたが、スペインでは小学校低学年でも「試合で上手くいかなかったことを練習する」のが日常です。
練習の目的は、あくまで「試合で上手くプレーすること」にあるからです。