朝練も自主練もなし、練習時間も断然短いのにスペインで「上手い選手」が育つ理由
そのため一部の子どもが見学になり、ぼーっと待たされるような時間はほとんどありません。結果として練習中は高いインテンシティで動き続けるものになり、短時間で密度の高い練習を行うことができるのです。
■スペインに「朝練」や「自主練」がない理由
サッカー部を含む日本の部活には「朝練」があるチームがいまだ多いと耳にします。また午後の練習後にグラウンドに居残りをしたり、休みの日に公園に行ったりして「自主練」をしている子どもも多く存在します。
一方のスペインには、「朝練」という習慣はありません。そして自主練をする子どももいません。
そこには様々な事情があります。
まず、「自主練や朝練をする場所がない」というのが理由の一つです。
スペインの子どもたちは街クラブ(地域のクラブチーム)に所属し、地域のグラウンドでサッカーをしています。そのグラウンドは複数のクラブチームの、さまざまな年齢カテゴリーのチームが使用しており、下の学年だとグラウンド8分の1程度しか使えないこともあります。
週末は年間を通じてリーグ戦が行われるため、試合の予定でカレンダーがビッシリ埋まっています。そのためチームで練習しているグラウンドで自主練をすることは不可能です。
また学校によっては体育の時間がなく、日本のような部活動もありません。サッカーができるグラウンドや体育館もありません。
日本のように自由にサッカーができる、だだっ広い公園も少ないです。サッカーを含めたスポーツは、基本的に「クラブチームが管理する街のグラウンドや体育施設で行うもの」なのです。
そのため、スペインのスポーツは「限られた練習時間と、限られた練習場所の中で上達を目指すこと」が当たり前になっています。「上手くなるために朝練や自主練をする」という発想が生まれない環境といえます。
そういった時間や場所の成約があるからこそ、スペインの指導者たちは「いかに短い練習時間のなかで効率的に選手を上達させ、チームを成長させるか」を考えています。なお、自由にサッカーができる場所がないことは、スペインでも問題視されており、近年では都市部中心にサッカースクールも増えていると聞きます。
一方で、プロとして活躍する選手の出身地を見ても、自由にサッカーができる環境がまだ残っている郊外や田舎の選手が目立っています。
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