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人一倍繊細な息子、「ミスしたら怒られる」と泣き出すように。親の期待が強くて無理させていたのか問題

サカイク
人一倍繊細な息子。公式戦や強豪との試合が増えコーチの指導も厳しくなったことに不安が強くなり「ミスしたら怒られる」「行きたくない」と泣き出すように。

サカイクで親としてのあり方を学んでいるところだけど、親の期待が強くなり本人に無理をさせてしまっていたのかも......。今後コーチや子どもにどう対応すればいい?というご相談をいただきました。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんの背中をそっと押すようなアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)

人一倍繊細な息子、「ミスしたら怒られる」と泣き出すように。親の期待が強くて無理させていたのか問題

(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

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<サッカーママからのご相談>

サッカー歴4年の10歳の息子がいます。

最近、公式戦や県内外の強豪チームとの試合が増えてきました。コーチの指導は厳しくなり、息子の不安が強くなって試合に行きたくないと言うことが増えてきました。
しばらくは元気づけて送り出したのですが、「ミスしたらすごく怒られる」「クラブに行きたくない」と泣き出すようになりました。

チームは低学年のうちは負けてばかりで、まともにサッカーができるレベルではありませんでしたが、試合数を重ねるごとにレベルが上がり、県内の公式戦でも一定の結果がでるまで成長しました。

息子はおとなしく目立つほうではないですが、休まず練習や試合に参加し、レギュラーで出場できるようになりました。試合では点を取ったり、決して上手で目立つタイプではないですが、献身的なプレーをしたりチームを鼓舞できる良さがあります。

親としてもそんな息子を誇らしく期待していたのですが、試合でコーチから厳しく叱責されるのが耐えられなくなっていったようです。私も本人が人一倍繊細な子なので、試合後は内容が悪くても一つでも良かったことを思い出すように、何よりサッカーを楽しむよう伝えてきました。

コーチは指導経験もある方で、私も長く子どもがお世話になっているので、感謝しています。

しかし、最近は指導に熱が入るようになり、試合の度に200%の力を出すように子ども達に声をかけています。
最初はあまり疑問を持たずに試合で全力を出すことが大事なんだなと思っていましたが、今となっては特に繊細な息子には負担でしかなかったのではと考えるようになりました。

私はこのサカイクで親としてのあり方を学んでいるところで、まだまだ未熟です。これまでも、親の期待が強くなるあまり、本人に無理をさせてしまっていたところがあり、反省点です。

このような状態ですが、現チームに所属し続けるのか、子どもとよく話し合って決めようと思います。今のところ、サッカーそのものは楽しいそうで何よりの救いです。

今すぐに辞めるという事はないですが、とりあえず一旦休ませようと思います。今後、コーチや子どもとどのように対応していけば良いでしょうか。

アドバイス宜しくお願いします

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。


お母さんからのメールを読むと、もうすでに答えは出ていると感じます。私に伝えて自分の考えが合っているかどうか。

もちろん正解はひとつではないけれど、ご自分が考え抜いた対応方法について意見を聞きたい、確認したい、背中を押してほしかったのかなと思いました。選んでいただいてとても嬉しいです。

■親をがっかりさせないよう弱音を吐けない子もいる中で、親に弱音を吐けたことは良いこと


さて、冒頭で書いたように、もうお母さんの答えは出ています。息子さんをとりあえず一旦休ませる。とても良いことだと思います。何よりも、息子さんがお母さんに「ミスしたらすごく怒られる」「クラブに行きたくない」と言えたこと、そしてお母さんの前で涙を流せたことも良かったですね。


なかには、コーチの不適切な指導に悩んでいても、それを親に言い出せない子どももいます。がっかりさせるのではないか、「そんなことぐらいで」と叱られるのではないかと想像してしまうようです。

弱音を親に吐けたということは「何を言ってもお母さんは僕の味方だ」と思っている。家庭が安全基地になっているひとつの証左です。

ぜひ現在の姿勢を継続するかたちで、今のチームでサッカーを続けるか否かを息子さんと話し合ってください。

■いつ、どんなことを言われ、何が嫌だったのか、心身に影響はないかなど細かく確認して


その際は、チームにとどまるかどうかをすぐ尋ねるのではなく、コーチに、いつ、どんなことを言われたのか。何が嫌だったのか。夜眠れないとか、勉強が手につかないとか、お腹が痛くなったりすることはなかったのか。


ほかの子のなかに、コーチにミスをとがめられている子はいないのか。嫌な気持ちになることを仲間と話したりしているのかなど、細かく聞いておきましょう。

もしこれまでも詳細を聞いていて、情報が整理できているのなら問題ありません。

なぜそこを整理してほしいかというと、いったん休むことを恐らくコーチに親のほうから話さなければならないかと思います。

子ども本人に休む報告をさせたほうがいいという意見を聞いたことがありますが、そんなことが堂々とできるのであれば休む必要はないわけです。

■「指導が不適切」「パワハラ」という言い方でクレーム扱いされると拗れる、事実を淡々と伝えて


基本的にコーチと選手はその肩書があるだけですでに主従関係が存在します。大人であるコーチのほうがそこの枠を外し、少しでも対等な関係性を築くべきだと私は思います。が、現在所属しているチームのコーチはそうではなさそうです。
現状、お母さんのほうから説明しなくてはなりません。

そこでは、息子さんが委縮していることをきちんと伝えましょう。あなたの指導はおかしいとか、パワーハラスメントだといったコーチへの評価や意見を述べるのではなく、息子さんがこれまでつらいと言ったこと、家での様子、今回休むにあたってあらためて息子さんと話した内容、つまり「事実」をコーチに話してください。そういった事実がある。決して息子にとって良い状態ではないと話します。

この点、本音としては「良い環境ではない」と言いたいところですが、あくまで息子の状態を話すよう努めてください。矢印をコーチの指導に向けないこと。ここが肝です。


それなのに、親御さん、特にお父さんたちのなかに、こういった事実を伝える言い方ではなく「あなたの指導は不適切だ」「パワハラだ」とクレームになってしまうと話がこじれがちです。

適切かどうかの判断は主観でもあるので、言い方に気をつけましょう。

■コーチのタイプ、これまでの対応なども加味してなるべくよく話し合うようにしよう


もちろん、コーチがもっと理解がある方なのかもしれません。この相談文からはわからないので想像の域を出ないのですが、恐らくサッカーの技術向上に関しては指導力のあるコーチなのでしょう。よって強くなったとも言えます。

しかし、勝つことに快感を覚えてしまい、もっと勝ちたいという気持ちが抑えられないのかもしれません。

とはいえ、いいところもありそうです。息子さんの良さをよく理解しているからレギュラーに抜擢しているのかもしれません。

お母さんがお書きになった「試合では点を取ったり、決して上手で目立つタイプではないですが、献身的なプレーをしたりチームを鼓舞できる良さ」という部分をわかっている方なのかどうか。そこも加味しつつ、話をするといいでしょう。

そういった理解があるコーチならば、もしかしたら自身の指導者としてのあり方を反省し、謝るかもしれません。

謝罪したうえで「態度をあらためるのでチームに残ってほしい。なるべく早くチームに戻って来てほしい」と言って息子さんを引き留める可能性もあります。コーチともなるべくよく話してください。

■もしコーチが謝らなかったら......


人一倍繊細な息子、「ミスしたら怒られる」と泣き出すように。親の期待が強くて無理させていたのか問題

(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

謝罪もせず、お母さんとの話を早く切り上げようとする、保護者と向き合わないようなコーチであれば、すんなり休養に入り、その間にほかのチームを探しましょう。

10歳ということは4年生。この春から5年生でしょうか。高学年にはなりますが、中学生になるまで2年あります。その点も息子さんとよく話し合ってください。

お母さんはサカイクで勉強されているとのこと。伝える力があると思います。ご自分と、やってきた子育てに自信をもって進んでください。

人一倍繊細な息子、「ミスしたら怒られる」と泣き出すように。親の期待が強くて無理させていたのか問題
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。

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