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コーチ一家が好き勝手やるチームでハブられ親子で孤立、持ち家だけど引っ越してまで移籍させたい問題

サカイク
コーチ一家が好き放題やっていて、公式戦以外はほかのチームから交流戦の誘いもなく地域で孤立しているチーム。何もかも賛同できないがずるずると居続けてきた。

だけど、最近ではコーチ宅での宴会に呼ばれなくなり、お呼ばれ組でグループができ、子どもも親もチーム内で孤立。自分としては引っ越ししてでも移籍させたいけど、どうしたらいい?というお母さんからのお悩みをいただきました。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。

(構成・文:島沢優子)

コーチ一家が好き勝手やるチームでハブられ親子で孤立、持ち家だけど引っ越してまで移籍させたい問題
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

<サッカーママからのご相談>

現在、小学5年生です。小学1年生の頃から地域のクラブに所属しています。

コーチ一家が好き勝手にチームや部費を動かしていて、コーチの方針、運営、雰囲気、何もかも賛同できません。


他のチームに対する文句も相当で、公式戦以外はほぼ他のチームからの交流戦のお誘いもなく、チーム自体孤立しているほどです。

コーチの孫がうちの子と同級生で、辞めたら何を言われるか分からず、子どももたまに仲間外れにされたりして辞めたいとは言いますが、気を取り直して「友達もいるしやっぱり続ける」と言うので、ずるずるここまで続けてきました。

夫は割と意見を述べるほうで、これまであまりにも酷い場合は意見することもありました。(例えば小学校で嫌われていそうな子が入部したいと言ってきた際、コーチが子ども達を集めてその子の評判を聞き、悪口で盛り上がった場面に割って入る等)

我が子が上手いこともあり、最初のうちはコーチ宅に宴会に呼ばれたりしていましたが、そのうち呼ばれなくなり、気づけば同級生でコーチ宅に呼ばれない家庭は私たちを含めてごく僅か。親子でチームのなかで孤立しているような気がします。

もちろん、他の保護者も陰ではコーチ一家の悪口を言っているようですが、表面上は上手におだててお付き合いしています。

子どもたちのなかでもお呼ばれ組でグループができあがりつつあり、我が子はそのグループに入れてないことが影響してるのか、以前は群を抜いて上手く、皆に声かけもしていたのに、最近プレーも自信なさげで遠慮がちです。それでも何とか仲良くしようと子どもなりに努力はしている感じです。


ちょうどスクールで他のチームに誘われて、そこまで強くはないけど雰囲気が良いらしく、移籍について子どもと話をするのですが、引越すのであれば......。とそこまで乗り気ではありません。

私としては、今住んでいるのは持ち家ですが、引越ししてでも移籍させたい!と思い悩んでいます。

ご意見お聞かせいただければ幸いです。

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

大変申し訳ないのですが、私の感覚から言わせていただくと、子どものサッカーのために持ち家を手放すなんてちょっと信じられません。

現在5年生であれば、もうすぐ3学期。少年サッカーもあと1年で終了します。
中学生から違うクラブでプレーすればいいわけだし、息子さんも「友達もいるし」と答えています。現状維持でなんら支障はないように思えます。

例えばJリーガーになった選手で、親御さんが仕事を変えたり、引っ越した兄弟を知っていますが、2人ともJリーグ下部組織のジュニアユースでプロ入りをクラブから打診されたほどの選手でした。

■本当に持ち家を手放して良いの?少し冷静に考えよう


お母さんは「我が子が上手いこともあり」「以前は群を抜いて上手く、皆に声かけもしていた」と5年生の息子さんの能力にぞっこんのようですが、もう少し冷静になって考えてみませんか?

家を手放すには、不動産屋に次の家を探してもらう必要があります。次の家を賃貸にするとしても、ローンが残っているのならば、家が売れるまではそれを払い続けなくてはなりません。簡単に引っ越してでもと言いますが、手数料や登記料などもろもろの経費がかかります。しかも今はじわじわと金利が上がっているのをご存知ですか?

もしもそれだけの出費をいとわないほど裕福で、お母さんがいかに冷静に考えても今の環境が我慢ならず、息子さんもどうしても移籍したいという強い思いがあり、お父さんもそのことに賛成している。つまり、経済面、お母さんと息子さんの気持ち、お父さんの同意の4つの要素が揃うのであれば、私に止める権利はありません。


■アドバイス①まずは夫婦間で移籍・引っ越しのリスクを話し合って


ただし、本当にいいのかな?との懸念を踏まえて、お母さんへのアドバイスを3つほどお伝えします。1つめ。もう少しお父さんとよく話し合いましょう。

「夫は割と意見を述べるほう」と書かれていますが、お母さんの相談文に、お父さんとしっかり話し合った形跡が見られません。どちらかというと、所属クラブの悪口が綿々と書かれています。ともにわが子を育ててもらう存在なのに、信頼して任せられる大人でないことはお辛いですね。

話し合う際は、メリットよりもリスクを話し合ってください。上述したように、経済面をはじめ、通学路や育つ環境が変わるわけです。
そのあたりが子どもにとって本当にいいことか考えてください。子どもの育ちに必要な要素のひとつに「恒常性」という要素があります。いつもと同じ家、今までと同じ両親、学校、友達。変わらないことが、子どもを支えています。

そのうえ、自分のサッカーのために家まで売って引っ越したとなれば、少なからずプレッシャーに感じるはずです。環境が変わることは大人が思うよりもずっとストレスであることを、どうか忘れないでください。

■アドバイス②子離れのチャンス!当番以外は子どものサッカーから少し離れよう


2つめ。息子さんのサッカーから離れましょう。


他の方はうまくやっているけれど、お母さんたちはできないのであれば仕方がないことです。嫌な人と無理に付き合うのはストレスですから。そうであれば、お母さん自身が息子さんのサッカーと少し距離を置きましょう。

もうすぐ6年生ですから、思春期もすぐそこです。子離れの準備期間だと思ってください。卒団まで、お当番以外は見にいかない。淡々と過ごしてください。恐らく息子さんもそのほうが精神的に楽だと思います。


■アドバイス③移籍先では試合に出続けられそうなのか、子どもと一緒に研究して決断を


3つめ。

「スクールで他のチームに誘われて、そこまで強くはないけど雰囲気が良いところ」があるので引っ越しを考えていますね。

では、そのチームのことはよく調べられたでしょうか?試合で、ベンチが大声で選手を怒鳴っていないでしょうか?指導者たちに「楽しくサッカーをする」という視点はあるでしょうか?そういった部分が全くなく、長時間練習で選手は同じメンバーが出ずっぱり、一部のうまい選手だけしか活動させてもらえない、指導してもらえないというような危険性はないでしょうか。

もっといえば、移籍しても試合に出続けられそうでしょうか。そこはお子さんだけがジャッジできる部分です。

上記のような視点で、お子さんとともにチームを研究し、ここならわが子が「充実したサッカーライフが送れそうだ」と考えたのなら、なぜそう思うかをきちんと息子さんに説明しましょう。親御さんの意見を伝えることは決して悪いことではありません。ただ、伝えっぱなしではいけません。息子さん自身がどう感じているのかも必ず聴いてあげてください。

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■話し合いの順番は......

コーチ一家が好き勝手やるチームでハブられ親子で孤立、持ち家だけど引っ越してまで移籍させたい問題
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

できれば順序としては、先に息子さんの意見を聴く。そのうえで、お母さんはこう思う。お父さんはこう思うと話してはどうでしょうか。

今回の分岐点が、息子さんにとって大きな糧になるよう、サポートしてあげてください。「最近はプレーも自信なさげで遠慮がちです。それでも何とか仲良くしようと子どもなりに努力はしている」とあります。

息子さんにとってピンチかもしれませんが、子どもなりに乗り越えようとしているのかもしれません。やさしく見守ってあげてください。

コーチ一家が好き勝手やるチームでハブられ親子で孤立、持ち家だけど引っ越してまで移籍させたい問題

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)

ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「叱らない時代の指導術: 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践 」(NHK出版新書)

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