周りの友だち、保護者からのクレームでスクール入会を断られた! 今後のために本人に話すべきか悩む問題
通ってたスクールが場所を変えて開校したから申し込もうとしたら、息子の練習態度に対して友だちやその保護者からクレームがあったらしく、入校を断られた。クレームが来てたなんて寝耳に水。
コーチにはこれまでのことを謝り、入校はやめたけど、息子本人に本当のことを言ったほうが良いの?と悩むお母さんからのご相談。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の経験をもとにアドバイスを送ります。 (構成・文:島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<サッカーママからのご相談>
息子(10歳)が小3から通っていたスクールが、小4の夏に閉校しました。そこはトレーニング専門のスクールで、スポ少のかたわら通っており、友達もいて息子は楽しく通っていました。
そのスクールが場所を変えてまた開校するとのことで息子もまた行きたいと言うので入校を申し込もうとしたら、息子の練習態度が悪く(コーチの話を聞かない、他の子にちょっかいだす、ふざける)スクール生、保護者からクレームが何度かあり、その都度息子には注意して息子も態度を改めるけど、すぐ戻ってしまうので入校は遠慮して頂きたい、と断られてしまいました。
確かに息子はふざけることや上の空でぼーっとしている事があったので、気づいた時は私から言うようにしてましたが、本人や友人やコーチからも今まで聞いたことがなかったので、非常に驚いたのと、早く教えて欲しかったというのが本音です。
コーチには今までの事を謝罪して、入校はしないのですが、息子には本当の事を言うべきか迷っています。 息子は今までサッカー以外の習い事もしており、注意される事はありましたが断られるのは初めてで、学校やスポ小では問題なく過ごしているので、ただこのスクールが合わなかったのかな、と思いたいのですが......。
今後の為にも話した方がいいのか......。行かない理由は「距離が遠い場所になったので」 と言おうかと思っていますが、どんな風に伝えるのが良いでしょうか。
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
他の保護者からクレームが入ったから受け付けられないなどと聞かされたら、どんな親御さんでもショックですね。クレームを言う親も親ですが、どんな子どもでも受け止める力のないクラブだったと思ってください。
お母さんが書かれたように「うちとは合わなかったんだ」と考えてください。
どんな子どもにも門戸を開くべきかと思いますが、スクールによっては、スキルの向上や強化に重きを置いているところもあります。すると、その点ばかりに目がいくので、例えば「どんな子どもでも楽しませて熱中させられる指導力をつけよう」といった本質的なところからは離れていく。
つまり指導者に「子ども理解」が足らないのかもしれません。 一方で、息子さんはもしかしたら少し発達がゆっくりめなのかもしれません。
もう成人しましたが、同じように少年団でサッカーをしていた私の息子も、コーチの話が聞けず、ふざけてしまい、仲間にちょっかいを出す子どもでした。あまりによく似ているので、少し私の息子の話をさせてください。
彼が小学5年生のころ、私は教育雑誌の編集と執筆の仕事をしていました。その雑誌で、当時小学生の保護者から大人気だった小学校の先生による「公開!家庭訪問」みたいな特集をしていました。
私は担当ではなかったのですが、ちょうど5年生の男子が見つからず「息子さんに出てほしい」と頼まれました。落ち着きがなく、マイペース。発達がゆっくりな子どもだということに私自身気づいていたので、大丈夫かなと思いつつ、息子をその先生に会わせました。
先生は息子に「学校は楽しい?」「勉強はないが得意なの?」などといくつか質問をしていましたが、息子は退屈そうに「うん、楽しい」「(得意な科目は)体育」と短く答えるのみ。有名な先生に対して、お行儀よくふるまうなどまったくできませんでした。
ただ、私は良い子でいてほしいとも思っていませんでした。ありのままの姿を見せて、その有名な先生がどんな反応を見せるかなと、うかがっていました。
数分経つと、先生は苦笑いを浮かべて「お母さん、この子は一度、ガツンと言ってあげたほうがいいね。
次いで「中学受験はしないの?」と尋ねるので「はい、しません。このまま公立の中学校に行かせます。本人の希望でもあるので」と答えると「そのほうがいいね。この調子じゃ私立は無理だろうから」と笑っていらっしゃいました。
私が息子に「お行儀良くしなさい!」などと焦った様子でもないので、先生は「ガツンと言え」とアドバイスしたのかもしれません。
しかしながら、私は息子のいいところもたくさん知っていました。中学年のころ、理科の宿題で特にリクエストされたわけでもないのに顕微鏡の絵を精密に描いて、ここはレンズで、などと名称を書いていました。
加えて、言葉で圧迫してやらせても、よい結果にはつながらないことも知っていました。仕事柄取材を通して、脳科学や心理学の研究者たちから、子どもの成長を促すには、心理的安全性がいかに大切かを学んでいました。
有名な先生には「そうですね。言っておきますぅ」などと適当に答えましたが、息子には何も言いませんでした。この面談は記事になりました。ただ、ママ友たちとの飲み会では「有名な先生のガツンと言え命令」は、酒のアテとして面白おかしく語られました。
その後、息子の発達は周囲に追いつき、高校部活動でも楽しくサッカーをしました。
私の息子の話が長くなりました。何を言いたかったかと言えば、子どものことをきちんと理解できない人の話を真に受けなくてよい、ということです。
本を何冊も書いて有名な教師でも、発達のことをよく知らなかったり、子どもへの対応を誤ります。子どもの専門家のはずの小学校教諭でも十数年前はこのような対応だったのですから、そういった勉強をしていないコーチであれば入会を断るしか術がなかったのだと察します。
よって、入会を断られたと言う必要はありません。理由を聞かれたら「距離が遠い」でよいでしょう。
また、ご相談文で「今後のため言うべきか」と書かれていますが、どうかそのように考えないでください。ちゃんと話が聞ける。やるべきことをやる。そういったことが10歳の今、できなければいけないわけではありません。
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(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
よい子どもを育てるために、親はいるわけじゃない。
自立し、人にやさしくできる。そんな大人を育てるために私はいるんだと考えてください。
高学年になっても気になるようなら、少年団の練習を観に行って、ほかの子どもが嫌がっているふうならば、そのことを息子さんと少し話してもいいでしょう。例えば「楽しくサッカーをしてほしいとお母さんは思ってるよ。楽しいのは、一生懸命やるから楽しいよね?どう思う?」と尋ねてください。
そのとき答えなかったとしても、お母さんの問いは彼のこころのなかに残るはずです。ちゃんとしなさいとか、ふざけるならサッカーやめさせるよと叱ったりせずに、周囲のほかの大人とコミュニケーションをとりながら息子さんの成長を待ってあげてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「叱らない時代の指導術: 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践 」(NHK出版新書)
コーチにはこれまでのことを謝り、入校はやめたけど、息子本人に本当のことを言ったほうが良いの?と悩むお母さんからのご相談。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の経験をもとにアドバイスを送ります。 (構成・文:島沢優子)
<サッカーママからのご相談>
息子(10歳)が小3から通っていたスクールが、小4の夏に閉校しました。そこはトレーニング専門のスクールで、スポ少のかたわら通っており、友達もいて息子は楽しく通っていました。
そのスクールが場所を変えてまた開校するとのことで息子もまた行きたいと言うので入校を申し込もうとしたら、息子の練習態度が悪く(コーチの話を聞かない、他の子にちょっかいだす、ふざける)スクール生、保護者からクレームが何度かあり、その都度息子には注意して息子も態度を改めるけど、すぐ戻ってしまうので入校は遠慮して頂きたい、と断られてしまいました。
確かに息子はふざけることや上の空でぼーっとしている事があったので、気づいた時は私から言うようにしてましたが、本人や友人やコーチからも今まで聞いたことがなかったので、非常に驚いたのと、早く教えて欲しかったというのが本音です。
コーチには今までの事を謝罪して、入校はしないのですが、息子には本当の事を言うべきか迷っています。 息子は今までサッカー以外の習い事もしており、注意される事はありましたが断られるのは初めてで、学校やスポ小では問題なく過ごしているので、ただこのスクールが合わなかったのかな、と思いたいのですが......。
今後の為にも話した方がいいのか......。行かない理由は「距離が遠い場所になったので」 と言おうかと思っていますが、どんな風に伝えるのが良いでしょうか。
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
他の保護者からクレームが入ったから受け付けられないなどと聞かされたら、どんな親御さんでもショックですね。クレームを言う親も親ですが、どんな子どもでも受け止める力のないクラブだったと思ってください。
お母さんが書かれたように「うちとは合わなかったんだ」と考えてください。
■指導者に「子ども理解」が足らないのかもしれない
どんな子どもにも門戸を開くべきかと思いますが、スクールによっては、スキルの向上や強化に重きを置いているところもあります。すると、その点ばかりに目がいくので、例えば「どんな子どもでも楽しませて熱中させられる指導力をつけよう」といった本質的なところからは離れていく。
つまり指導者に「子ども理解」が足らないのかもしれません。 一方で、息子さんはもしかしたら少し発達がゆっくりめなのかもしれません。
もう成人しましたが、同じように少年団でサッカーをしていた私の息子も、コーチの話が聞けず、ふざけてしまい、仲間にちょっかいを出す子どもでした。あまりによく似ているので、少し私の息子の話をさせてください。
■著名な先生から「ガツンと言わないと」と言われたけど......
彼が小学5年生のころ、私は教育雑誌の編集と執筆の仕事をしていました。その雑誌で、当時小学生の保護者から大人気だった小学校の先生による「公開!家庭訪問」みたいな特集をしていました。
私は担当ではなかったのですが、ちょうど5年生の男子が見つからず「息子さんに出てほしい」と頼まれました。落ち着きがなく、マイペース。発達がゆっくりな子どもだということに私自身気づいていたので、大丈夫かなと思いつつ、息子をその先生に会わせました。
先生は息子に「学校は楽しい?」「勉強はないが得意なの?」などといくつか質問をしていましたが、息子は退屈そうに「うん、楽しい」「(得意な科目は)体育」と短く答えるのみ。有名な先生に対して、お行儀よくふるまうなどまったくできませんでした。
ただ、私は良い子でいてほしいとも思っていませんでした。ありのままの姿を見せて、その有名な先生がどんな反応を見せるかなと、うかがっていました。
数分経つと、先生は苦笑いを浮かべて「お母さん、この子は一度、ガツンと言ってあげたほうがいいね。
もう5年生でしょ?来年は6年なんだから、早めにやったほうがいいですよ」とおっしゃいました。
次いで「中学受験はしないの?」と尋ねるので「はい、しません。このまま公立の中学校に行かせます。本人の希望でもあるので」と答えると「そのほうがいいね。この調子じゃ私立は無理だろうから」と笑っていらっしゃいました。
私が息子に「お行儀良くしなさい!」などと焦った様子でもないので、先生は「ガツンと言え」とアドバイスしたのかもしれません。
しかしながら、私は息子のいいところもたくさん知っていました。中学年のころ、理科の宿題で特にリクエストされたわけでもないのに顕微鏡の絵を精密に描いて、ここはレンズで、などと名称を書いていました。
興味を持ったことには集中していました。
加えて、言葉で圧迫してやらせても、よい結果にはつながらないことも知っていました。仕事柄取材を通して、脳科学や心理学の研究者たちから、子どもの成長を促すには、心理的安全性がいかに大切かを学んでいました。
有名な先生には「そうですね。言っておきますぅ」などと適当に答えましたが、息子には何も言いませんでした。この面談は記事になりました。ただ、ママ友たちとの飲み会では「有名な先生のガツンと言え命令」は、酒のアテとして面白おかしく語られました。
その後、息子の発達は周囲に追いつき、高校部活動でも楽しくサッカーをしました。
大学も第一志望の大学に合格。毎年3月になると、息子が大学に合格した日を懐かしく思い出します。
■専門家でも対応を誤る子どものことをきちんと理解できない人の話を真に受けなくてOK
私の息子の話が長くなりました。何を言いたかったかと言えば、子どものことをきちんと理解できない人の話を真に受けなくてよい、ということです。
本を何冊も書いて有名な教師でも、発達のことをよく知らなかったり、子どもへの対応を誤ります。子どもの専門家のはずの小学校教諭でも十数年前はこのような対応だったのですから、そういった勉強をしていないコーチであれば入会を断るしか術がなかったのだと察します。
よって、入会を断られたと言う必要はありません。理由を聞かれたら「距離が遠い」でよいでしょう。
もし、本人が自分が悪いからじゃないかと傷ついているようであれば、そうじゃない、悪いのは君じゃないと慰めてください。
また、ご相談文で「今後のため言うべきか」と書かれていますが、どうかそのように考えないでください。ちゃんと話が聞ける。やるべきことをやる。そういったことが10歳の今、できなければいけないわけではありません。
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■自分は子どもにとって何のためにいるのか、を考えてみよう
よい子どもを育てるために、親はいるわけじゃない。
自立し、人にやさしくできる。そんな大人を育てるために私はいるんだと考えてください。
高学年になっても気になるようなら、少年団の練習を観に行って、ほかの子どもが嫌がっているふうならば、そのことを息子さんと少し話してもいいでしょう。例えば「楽しくサッカーをしてほしいとお母さんは思ってるよ。楽しいのは、一生懸命やるから楽しいよね?どう思う?」と尋ねてください。
そのとき答えなかったとしても、お母さんの問いは彼のこころのなかに残るはずです。ちゃんとしなさいとか、ふざけるならサッカーやめさせるよと叱ったりせずに、周囲のほかの大人とコミュニケーションをとりながら息子さんの成長を待ってあげてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「叱らない時代の指導術: 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践 」(NHK出版新書)