トレセンの選考基準は? 早生まれは不利? 選ばれなかったらプロになれない? 日本サッカー協会に聞く「トレセン」の目的
お子さんがサッカーに真剣に取り組んでいる中で、高学年になると「トレセン」に選ばれるかどうか、どんな子が選ばれるのか、といった情報を気にしだす方も増えますよね。
トレセンにはどんな狙いがあるのか、選手のどこを見ているのか、JFAユース育成ダイレクターの城和憲氏にお話を伺いました。
(取材・文鈴木智之)
この記事の概要
・トレセンの目的
・12歳で選ばれない=プロになれない?
・地域主体への転換がもたらすメリット
・U-14のナショナルトレセンに導入したもの
・トレセンに選ばれる選手の特徴
・生まれ月による有利・不利はあるのか
・選ばれるかどうかより大事にしてほしいこと
トレセンの様子©JFA/PR
「トレセンは選ばれし者だけの場所」。多くの子どもや保護者がこう思いがちですが、実際はそうではありません。城氏は言います。
「トレセンは日本独自のトレーニングセンターシステムで、長い歴史があります。目的はチーム活動の中で一番になり、刺激が少ない子たちを集めて、チームとは違う刺激を与えることです。個の天井効果を排除しながら、成長につなげていく場を作ることを狙いとしています」
日本サッカー協会(JFA)が運営するトレーニングセンターシステムは、現状に即した形に変化し、従来の「選抜・絞り込み」から「より多くの子どもたちに機会を」という方針にシフトチェンジしています。
この転換の背景には、このような意図がありました。
「私たちは決してトレセンで選手を選び、絞ることを目的にはしていません。日常の練習でマンネリしている子たちを集めて、様々な刺激を与えたいと思っています。現在はタレント発掘にも力を入れていますが、タレントになる子なんて、正直なところわかりません。わからないからこそ、多くの子たちに様々な刺激を与えること、情報を伝えることを目指しています」
トレセンの様子©JFA/PR
近年最も注目される変化が、U-12(小学6年生)・U-13(中学1年生)のナショナルトレセンの廃止です。全国から選ばれた子どもたちが一堂に会していたシステムを、9つの地域トレセンまでに留める決断をしました。
なぜ大胆な変更に踏み切ったのでしょうか。その理由を城氏は、次のように説明します。
「低年齢では、将来タレントになる確率が不明確です。だからこそ、早期の絞り込みをやめていかなければいけないと考えています。絞り込みが排除になってしまうリスクが大きいからです」
城氏が危惧しているのは、早期選考によって子どもたちの可能性を狭めてしまうことです。
「12歳でトレセンに選ばれなかったからプロになるのは難しい、といった考えは、選手本人よりも、むしろ保護者の方に多く見られます。私たちは最終的に残る選手の確率を上げるために、まずはサッカーを続けてもらう子を増やすことが大切だと考えています。人数が増えれば、その中からタレントが出てくる割合も必ず大きくなります」
全国一律のシステムから地域主体へのシフト。この変化には、どのような意味があるのでしょうか。
「地域によって環境は違います。
具体的には、Jクラブが多い地域では既存のクラブ環境を最大限活用し、中学校の部活動が盛んな地域では「中体連・タウンクラブ合同キャンプ」を実施するなど、各地域の実情に合わせたオリジナル施策が展開されています。
「地域によってニーズが違います。グラウンドの問題、学校の問題など様々な違いがある中で、全国一律で『こうしましょう』というのは現実的ではありません。地域の子どもたちにとって何がいいのかをしっかり考えて、施策を打ち出していくことが大切だと考えています」
U-14のナショナルトレセンでは、年3回の開催で「3回ともメンバー総入れ替え」という方針を採用しました。
「同じ子を3回とも呼ぶのではなく、3回すべて違うメンバーにしています。成長のペースは子どもによって違いますし、多くの子にその場を経験してほしいと思っています。この方針により、170名近くの子がナショナルトレセンに参加できるようになりました」
この変化は下位カテゴリーにも好循環をもたらしています。「上のレベルで参加できる人数が増えれば、その下の地域でも多くの選手を発掘しなければなりません。
トレセンに選ばれる選手は、どんな選手なのでしょうか?率直な疑問に、城氏は次のように答えてくれました。
「一番目につきやすいのは、テクニックやスピード、フィジカルといった特徴のある選手です。ただし、12歳の時点でそれらの特徴を持っているからといって、将来的にどうなるかはわかりません。トレセンの目的は、チームで能力が高い『井の中の蛙』状態の子を集めて刺激し合い、『まだ足りないんだよ』と気づかせることでもあります」
保護者の間でよく話題になる「生まれ月による有利・不利」について、JFAはデータに基づいた分析を進めています。
「12歳、13歳の育成年代では、トレセンに選ばれる子は4月から6月生まれが多いです。成長差があるため、指導者が見た時に『この子は上手い』『この子は強い』と感じるのは、成長が早い子に偏ってしまうのは、仕方のない面があると思います」
しかし、長期的視点になると、状況は一変します。
「A代表まで広げて見ると、生まれ月は関係なくなり、平均的になります。つまり早生まれの子も、後から追いついてくるのです。
トレセンの変革から見えてくるのは、「一部の選ばれた子だけ」から「みんなで成長する」システムへの転換です。12歳の時点で選ばれなくても、諦める必要は全くありません。
城氏からのメッセージは明確です。「頑張っている子には、門戸が開かれています。必ずチャンスはあります」(城氏)。
大切なのは、子どもがサッカーを楽しみ、継続することです。新しいトレセンシステムは、より多くの子どもたちにチャンスを提供し、日本サッカー界全体の底上げを目指しています。保護者の皆さんも、長期的な視点でお子さんの成長を見守り、サッカーを続けることの価値を大切にしていただければと思います。
* *
城 和憲(じょう かずのり)
現在JFA ユース育成ダイレクターとして、全国の育成年代を対象とした育成事業全体の統括を担当。
主な経歴 ・鹿児島実業高校サッカー部に所属
・高校卒業後、1年間オランダへサッカー留学
・帰国後、鹿児島ユナイテッドの前身チームで約2年間プレー
・JFL・ホンダロック(現ミネベア アクセスソリューションズ)にて、社員選手としてプレーし、監督も務める
・2019年より日本サッカー協会(JFA)に所属
トレセンにはどんな狙いがあるのか、選手のどこを見ているのか、JFAユース育成ダイレクターの城和憲氏にお話を伺いました。
(取材・文鈴木智之)
この記事の概要
・トレセンの目的
・12歳で選ばれない=プロになれない?
・地域主体への転換がもたらすメリット
・U-14のナショナルトレセンに導入したもの
・トレセンに選ばれる選手の特徴
・生まれ月による有利・不利はあるのか
・選ばれるかどうかより大事にしてほしいこと
■日本独自のシステム「トレセン」の本当の目的とは?
「トレセンは選ばれし者だけの場所」。多くの子どもや保護者がこう思いがちですが、実際はそうではありません。城氏は言います。
「トレセンは日本独自のトレーニングセンターシステムで、長い歴史があります。目的はチーム活動の中で一番になり、刺激が少ない子たちを集めて、チームとは違う刺激を与えることです。個の天井効果を排除しながら、成長につなげていく場を作ることを狙いとしています」
日本サッカー協会(JFA)が運営するトレーニングセンターシステムは、現状に即した形に変化し、従来の「選抜・絞り込み」から「より多くの子どもたちに機会を」という方針にシフトチェンジしています。
この転換の背景には、このような意図がありました。
「私たちは決してトレセンで選手を選び、絞ることを目的にはしていません。日常の練習でマンネリしている子たちを集めて、様々な刺激を与えたいと思っています。現在はタレント発掘にも力を入れていますが、タレントになる子なんて、正直なところわかりません。わからないからこそ、多くの子たちに様々な刺激を与えること、情報を伝えることを目指しています」
■U-12、13ナショナルトレセン廃止の理由12歳で選ばれない=プロになれないと保護者のほうが思いがち
近年最も注目される変化が、U-12(小学6年生)・U-13(中学1年生)のナショナルトレセンの廃止です。全国から選ばれた子どもたちが一堂に会していたシステムを、9つの地域トレセンまでに留める決断をしました。
なぜ大胆な変更に踏み切ったのでしょうか。その理由を城氏は、次のように説明します。
「低年齢では、将来タレントになる確率が不明確です。だからこそ、早期の絞り込みをやめていかなければいけないと考えています。絞り込みが排除になってしまうリスクが大きいからです」
城氏が危惧しているのは、早期選考によって子どもたちの可能性を狭めてしまうことです。
「12歳でトレセンに選ばれなかったからプロになるのは難しい、といった考えは、選手本人よりも、むしろ保護者の方に多く見られます。私たちは最終的に残る選手の確率を上げるために、まずはサッカーを続けてもらう子を増やすことが大切だと考えています。人数が増えれば、その中からタレントが出てくる割合も必ず大きくなります」
■地域主体への転換がもたらすメリット
全国一律のシステムから地域主体へのシフト。この変化には、どのような意味があるのでしょうか。
「地域によって環境は違います。
関東と東北では人口も環境も違うので、一番合ったものは何なのかを各地域で検討してもらい、私たちはそれをサポートしていく形を取っています」
具体的には、Jクラブが多い地域では既存のクラブ環境を最大限活用し、中学校の部活動が盛んな地域では「中体連・タウンクラブ合同キャンプ」を実施するなど、各地域の実情に合わせたオリジナル施策が展開されています。
「地域によってニーズが違います。グラウンドの問題、学校の問題など様々な違いがある中で、全国一律で『こうしましょう』というのは現実的ではありません。地域の子どもたちにとって何がいいのかをしっかり考えて、施策を打ち出していくことが大切だと考えています」
■画期的な「総入れ替え制」導入
U-14のナショナルトレセンでは、年3回の開催で「3回ともメンバー総入れ替え」という方針を採用しました。
「同じ子を3回とも呼ぶのではなく、3回すべて違うメンバーにしています。成長のペースは子どもによって違いますし、多くの子にその場を経験してほしいと思っています。この方針により、170名近くの子がナショナルトレセンに参加できるようになりました」
この変化は下位カテゴリーにも好循環をもたらしています。「上のレベルで参加できる人数が増えれば、その下の地域でも多くの選手を発掘しなければなりません。
こうした仕組みを活用して、県や地区レベルでもより多くの子どもたちに機会を提供してもらうよう働きかけています」
■トレセンに選ばれる選手の特徴は?
トレセンに選ばれる選手は、どんな選手なのでしょうか?率直な疑問に、城氏は次のように答えてくれました。
「一番目につきやすいのは、テクニックやスピード、フィジカルといった特徴のある選手です。ただし、12歳の時点でそれらの特徴を持っているからといって、将来的にどうなるかはわかりません。トレセンの目的は、チームで能力が高い『井の中の蛙』状態の子を集めて刺激し合い、『まだ足りないんだよ』と気づかせることでもあります」
■早生まれは損なのか?データで見る「生まれ月格差」と対策
保護者の間でよく話題になる「生まれ月による有利・不利」について、JFAはデータに基づいた分析を進めています。
「12歳、13歳の育成年代では、トレセンに選ばれる子は4月から6月生まれが多いです。成長差があるため、指導者が見た時に『この子は上手い』『この子は強い』と感じるのは、成長が早い子に偏ってしまうのは、仕方のない面があると思います」
しかし、長期的視点になると、状況は一変します。
「A代表まで広げて見ると、生まれ月は関係なくなり、平均的になります。つまり早生まれの子も、後から追いついてくるのです。
そうした子たちにも、早い段階で刺激を受ける機会があれば、もっと成長が早くなるのではないかと考えて、9月以降生まれの子たちを対象とした『フューチャープログラム』を実施しました」
■頑張り続ければチャンスはある大切なのは楽しみ、継続すること
トレセンの変革から見えてくるのは、「一部の選ばれた子だけ」から「みんなで成長する」システムへの転換です。12歳の時点で選ばれなくても、諦める必要は全くありません。
城氏からのメッセージは明確です。「頑張っている子には、門戸が開かれています。必ずチャンスはあります」(城氏)。
大切なのは、子どもがサッカーを楽しみ、継続することです。新しいトレセンシステムは、より多くの子どもたちにチャンスを提供し、日本サッカー界全体の底上げを目指しています。保護者の皆さんも、長期的な視点でお子さんの成長を見守り、サッカーを続けることの価値を大切にしていただければと思います。
* *
現在JFA ユース育成ダイレクターとして、全国の育成年代を対象とした育成事業全体の統括を担当。
主な経歴 ・鹿児島実業高校サッカー部に所属
・高校卒業後、1年間オランダへサッカー留学
・帰国後、鹿児島ユナイテッドの前身チームで約2年間プレー
・JFL・ホンダロック(現ミネベア アクセスソリューションズ)にて、社員選手としてプレーし、監督も務める
・2019年より日本サッカー協会(JFA)に所属
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