悔しさや負けたくない気持ちを見せない優しい息子がサッカーで伸びるためには、どんな声かけが良いか悩みます問題
周りの友だちと一緒に上手いチームに入りたいけど、「負けたくない」などの感情を出すことがあまりない息子。
そういった気持ちを持っている方が伸びると思うけど、気持ちの優しい子がサッカーで伸びるための声掛けが知りたい。というご相談。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<サッカーママからのご相談>
もうすぐチームの再編成があります。
息子(8歳)と仲の良い友達たちは、一番上手いチームになる可能性が高く、息子もその子たちと一緒のチームでプレーしたいと頑張っています。
ただ、練習の際も調子が良くコーチに褒められる日もあれば、そうでない日はコーチからも注意されることが多く、集中出来ずムラがあることが多いです。
「悔しい」とか「負けたくない」といった感情を出すことがあまりなく、本人がどのように考えているかはわかりませんが、親としてはそういった気持ちをもってくれたほうが、伸びるのかなと焦ってしまい、子どもにも色々口うるさく言ってしまいます。
「◯◯くんは優しいから」と、うちの子のことを良く知る親御さんにも言われるのですが、そういった気持ちの優しい子がサッカーで伸びていくためには、どんな声かけをしてあげるといいのでしょうか?
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
少々おっとりした優しい息子さんを前にじりじりしている、もしくは少し物足らないと思われているようです。私も長男は第一子でおっとりした子だったので、お気持ちは何となくは察します。
ふと、ちょうどよい例を思い出しました。あるクラブの、ある親御さんが、試合に負けても泣かない小学2年生のわが子に向かって、こんなふうに怒ったそうです。
「みんな泣いてるじゃないか。おまえは悔しくないのか?全力で頑張らないから悔しくないんだ。頑張らないなら、サッカーなんかやめてしまえ」
担当していたコーチは、私にその話をした後「熱心なのはいいのですが、お父さんが本当に『害』なんです」とほとほと困り果てていました。
いかがでしょうか?お母さんに似ていませんか?え?私はそんなふうに怒っていない?
そうですね。怒ってはいないかもしれませんが「子どもにも色々口うるさく言ってしまいます」と書かれています。お母さん自身、それがもしかしたらあまり良くないことかも?と少しでも感じたから、相談してくださったのですよね?
実は後日、そのコーチから「島沢さんと話したことを参考にして、お父さんと話しました」とLINEをもらいました。コーチはお父さんを呼んで、3つの約束をしてもらったそうです。
①子どもの態度やプレーを親が「ジャッジ」するのはやめてほしい ②サッカーについて過度に期待をして、親の感覚であれこれ言うのは逆効果。
お父さんは動揺を見せつつも、コーチの話を理解しようとしてくれたそうです。
そこで、お母さんも、私と同じ「3つの約束」をしませんか。軸になるものは上記の三つの約束と変わりませんが、お母さんの状況に寄せてお伝えします。
1つめ。「子どもの態度やプレーをジャッジしない、ほかの子どもと比べない」
お母さんの相談文の書き出しは「息子と仲の良い友達たちは、一番上手いチームになる可能性が高く」と始まりました。ああ、他のお子さんに嫉妬してしまい、わが子と比べているのだろうなと推察しました。
スポーツをしている子どもの親御さんからの相談では、多くの方が「他の子と比べて」とか「弟はこうなんですが」と、皆さんほかの"優秀に見える子ども"とわが子とを比べてしまいます。
親が「A君はいいなあ。
脳科学では、意欲的になるには脳の線条体という部分が活発に動かないとやる気は起きないと言われています。
とても言いづらいのですが、お母さんが「親としてはそういった気持ちをもってくれたほうが、伸びるのかなと焦ってしまい」色々口うるさく言うことは、実はよろしくありません。息子さんの意欲を削り取っているのです。
その点から考えると、私たち親は「子どものためになるにはどうしたらいいか?」と考えるよりも、「子どもの害にならないためには、どんな親であればよいか?」ということに懸命に向き合ってください。そちらのほうがずっと重要です。
ではどんな親がよいのか?何か声掛けするよりも、子どもの話を一生懸命聞いてあげましょう。
ご相談文に「感情を出すことがあまりなく、本人がどのように考えているかはわかりませんが」とあります。どのように考えているかをまず聞いてください。
「サッカー、楽しかった?」 「今日はどんな気持ちだったの?」
ただし、矢継ぎ早に質問攻めにするのではなく、話がしやすい雰囲気を作りましょう。もしも「別にない」と言われれば「オッケー」と言い、「何か話したいことがあったら、いつでも言って来てね」とほうっておけばいいのです。
「言わなきゃ」よりも「聞かなきゃ」と、自分に言い聞かせてください。子どもの話に耳を傾けること、傾聴が「子どもの害にならない親」への一歩です。
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(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
最後の3つめです。
ご相談文を拝見する限り、ほんの少し思い込みが強そうです。ちょっとだけで良いので、子育てに対し、おおらかに構えましょう。
それに加え、「チームとして勝ち上がりと思って今までは応援していたはずなのに」と他の親御さんを責める発言もあります。例えば、「悔しい」とか「負けたくない」といった感情を思い切り出して一生懸命サッカーに取り組むことが、「サッカーで伸びる子ども像」だと思い込んでいないでしょうか。
悔しがりで負けず嫌いだったとしても、勝つためにはユニフォームを引っ張ってずるいことをして、シュートを外した仲間を責めて、人にやさしくできない子どもになっては困ります。ママ友に「◯◯くんは優しいから」と言われたとしても、その人たちは育成の専門家などではありません。真に受けずに聞き流しましょう。
子どもにはさまざまな性格で、個性があります。お母さんはぜひ、優しい性格に生まれた息子さんに感謝してください。
楽しく、意欲的にサッカーができるよう、お母さんはひっそりとそばにあげてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「叱らない時代の指導術: 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践 」(NHK出版新書)
そういった気持ちを持っている方が伸びると思うけど、気持ちの優しい子がサッカーで伸びるための声掛けが知りたい。というご相談。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)
<サッカーママからのご相談>
もうすぐチームの再編成があります。
息子(8歳)と仲の良い友達たちは、一番上手いチームになる可能性が高く、息子もその子たちと一緒のチームでプレーしたいと頑張っています。
ただ、練習の際も調子が良くコーチに褒められる日もあれば、そうでない日はコーチからも注意されることが多く、集中出来ずムラがあることが多いです。
「悔しい」とか「負けたくない」といった感情を出すことがあまりなく、本人がどのように考えているかはわかりませんが、親としてはそういった気持ちをもってくれたほうが、伸びるのかなと焦ってしまい、子どもにも色々口うるさく言ってしまいます。
「◯◯くんは優しいから」と、うちの子のことを良く知る親御さんにも言われるのですが、そういった気持ちの優しい子がサッカーで伸びていくためには、どんな声かけをしてあげるといいのでしょうか?
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
少々おっとりした優しい息子さんを前にじりじりしている、もしくは少し物足らないと思われているようです。私も長男は第一子でおっとりした子だったので、お気持ちは何となくは察します。
■親のほうが耐えられなくて子どもに当たってしまう人がいる
ふと、ちょうどよい例を思い出しました。あるクラブの、ある親御さんが、試合に負けても泣かない小学2年生のわが子に向かって、こんなふうに怒ったそうです。
「みんな泣いてるじゃないか。おまえは悔しくないのか?全力で頑張らないから悔しくないんだ。頑張らないなら、サッカーなんかやめてしまえ」
担当していたコーチは、私にその話をした後「熱心なのはいいのですが、お父さんが本当に『害』なんです」とほとほと困り果てていました。
私たちは「子どもはみんな勝ちたいから負ければ悔しいよね。頑張らない子なんていないのにね。そのお父さんは試合に負けたことに自分が耐えられなくなっていて、子どもに当たってしまうんだろうね」と話しました。
いかがでしょうか?お母さんに似ていませんか?え?私はそんなふうに怒っていない?
そうですね。怒ってはいないかもしれませんが「子どもにも色々口うるさく言ってしまいます」と書かれています。お母さん自身、それがもしかしたらあまり良くないことかも?と少しでも感じたから、相談してくださったのですよね?
■子どもより熱くなる親にコーチがお願いした3つの約束
実は後日、そのコーチから「島沢さんと話したことを参考にして、お父さんと話しました」とLINEをもらいました。コーチはお父さんを呼んで、3つの約束をしてもらったそうです。
①子どもの態度やプレーを親が「ジャッジ」するのはやめてほしい ②サッカーについて過度に期待をして、親の感覚であれこれ言うのは逆効果。
自分たち指導者に任せてほしい ③親御さん自身が感情のコントロールをしてほしい
お父さんは動揺を見せつつも、コーチの話を理解しようとしてくれたそうです。
そこで、お母さんも、私と同じ「3つの約束」をしませんか。軸になるものは上記の三つの約束と変わりませんが、お母さんの状況に寄せてお伝えします。
■アドバイス①自己肯定感が育たなくなるから、態度やプレーをジャッジしない、ほかの子と比べないこと
1つめ。「子どもの態度やプレーをジャッジしない、ほかの子どもと比べない」
お母さんの相談文の書き出しは「息子と仲の良い友達たちは、一番上手いチームになる可能性が高く」と始まりました。ああ、他のお子さんに嫉妬してしまい、わが子と比べているのだろうなと推察しました。
スポーツをしている子どもの親御さんからの相談では、多くの方が「他の子と比べて」とか「弟はこうなんですが」と、皆さんほかの"優秀に見える子ども"とわが子とを比べてしまいます。
親が「A君はいいなあ。
一番上手いチームに入れて」と思った瞬間、わが子の自己肯定感は1センチ下がると考えてください。自己肯定感は、子どもがどんなことにも意欲的に、エネルギッシュに取り組むガソリンの源です。1センチでも下がると、影響が出ます。なぜならば、子どもは、自分がほかと比べられ、自分の母親が焦っていることに気づきます。そして、どうせ僕なんか。私なんか。どうせダメだ――そう考えて辛くなります。
脳科学では、意欲的になるには脳の線条体という部分が活発に動かないとやる気は起きないと言われています。
線条体は、褒められて、認められると活発に動き、否定されるとまったく動かなくなります。
とても言いづらいのですが、お母さんが「親としてはそういった気持ちをもってくれたほうが、伸びるのかなと焦ってしまい」色々口うるさく言うことは、実はよろしくありません。息子さんの意欲を削り取っているのです。
その点から考えると、私たち親は「子どものためになるにはどうしたらいいか?」と考えるよりも、「子どもの害にならないためには、どんな親であればよいか?」ということに懸命に向き合ってください。そちらのほうがずっと重要です。
■アドバイス②声を掛けるよりも「子どもの話を聞く」ことを大事にして
ではどんな親がよいのか?何か声掛けするよりも、子どもの話を一生懸命聞いてあげましょう。
ご相談文に「感情を出すことがあまりなく、本人がどのように考えているかはわかりませんが」とあります。どのように考えているかをまず聞いてください。
それが2つめです。
「サッカー、楽しかった?」 「今日はどんな気持ちだったの?」
ただし、矢継ぎ早に質問攻めにするのではなく、話がしやすい雰囲気を作りましょう。もしも「別にない」と言われれば「オッケー」と言い、「何か話したいことがあったら、いつでも言って来てね」とほうっておけばいいのです。
「言わなきゃ」よりも「聞かなきゃ」と、自分に言い聞かせてください。子どもの話に耳を傾けること、傾聴が「子どもの害にならない親」への一歩です。
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■アドバイス③感情を出して一生懸命取り組むのが伸びる子、という認識を変えよう
最後の3つめです。
ご相談文を拝見する限り、ほんの少し思い込みが強そうです。ちょっとだけで良いので、子育てに対し、おおらかに構えましょう。
それに加え、「チームとして勝ち上がりと思って今までは応援していたはずなのに」と他の親御さんを責める発言もあります。例えば、「悔しい」とか「負けたくない」といった感情を思い切り出して一生懸命サッカーに取り組むことが、「サッカーで伸びる子ども像」だと思い込んでいないでしょうか。
悔しがりで負けず嫌いだったとしても、勝つためにはユニフォームを引っ張ってずるいことをして、シュートを外した仲間を責めて、人にやさしくできない子どもになっては困ります。ママ友に「◯◯くんは優しいから」と言われたとしても、その人たちは育成の専門家などではありません。真に受けずに聞き流しましょう。
子どもにはさまざまな性格で、個性があります。お母さんはぜひ、優しい性格に生まれた息子さんに感謝してください。
楽しく、意欲的にサッカーができるよう、お母さんはひっそりとそばにあげてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「叱らない時代の指導術: 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践 」(NHK出版新書)