トレセンでチーム練習を休んだら、大会当日やったことないポジションにさせられた。理不尽な要求に応えるべきか悩む問題

サカイク
4年生からCB固定でトレセンに選ばれている息子。トレセンの大会で少年団の練習を2日休んだだけで大会当日違うポジションをさせられた。

やり方を教わったこともないポジションを突然やれと言われても無理がある。2回休んだだけでこの扱い、トレセン選手に対して理解が無さすぎ。まるでいじめのように感じるけどチームの要求に応えるべき?と悩むお母さんからのご相談。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、親としてどう対応したらいいかアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)

トレセンでチーム練習を休んだら、大会当日やったことないポジションにさせられた。理不尽な要求に応えるべきか悩む問題
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

<サッカーママからのご相談>

現在6年生の息子は、スポ少に所属して1年生の頃からずっと同じお父さんコーチに指導して頂いています。(コーチのお子さんも同じチームに所属)

息子は5年生の時に地域のトレセンに合格し、大きな大会にも参加させて頂きました。
当時はコーチのお子さんも合格していましたが、6年生になってトレセンに合格したのは、我が子(CB)とGKの子2人だけでした。

先日、理不尽な出来事がありました。

息子がトレセンの大会出場のため2日間チームの練習を休んだ翌週の大会で、コーチから現場で突然「今日はFWやって」との指示がありました。

息子は4年生からずっとCB固定で、5、6年のトレセンもCBで合格しています。困惑し、落ち込んだ様子でしたが、何とか切り替えて大会の2日間FWをやり切るも、「遅い、走れてない」とすぐに交代となり、長時間ベンチに座っている場面もありました。

今まで練習もしたこともなければ、やり方も教わったことのないポジションを、突然試合でやれと言われても無理があります。

少し離れた所で試合を見ていたトレセンのコーチに「何で今日はCBで出ていないの?どうしたの?」と聞かれたそうです。

案の定、息子は自信をなくし、試合後落ち込んでいました。
トレセンの大会出場のためやむなく自チームの練習を2回休んだだけで、ポジションを外されるのは当然のことなのでしょうか。トレセン選手への理解が無いことの表れではないでしょうか。

息子にこれからどうしたいか尋ねたら「本当はCBをやりたいけれど、コーチには言えないのでこのまま我慢する」と言っています。(子どもの話を聞いてくれるタイプではない)

本人に何の説明もなく、試合当日に急にポジションを変更するのは理不尽ではないでしょうか。

夫が「うちの子はなぜCBではなく、FWをやっているのか?」と、聞いたところ、「トレセンの試合でいない日の練習で、CBに適した選手が見つかったので、あなたのお子さんには、FWをやってもらいます。加えて、あなたのお子さんは足が遅いので一発で抜かれるのが怖い」。との回答でした。

繰り返しますが、息子はチームからの推薦で2年間CBとしてトレセンに合格しています。
4年生からずっとポジションはCBで固定しています。

こんなにも理不尽なコーチの要求に耐えるべきでしょうか。私はいじめにさえ感じています。

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

トレセンで留守にした後、チームの試合で通常とは異なるポジションを命じられた。が、そこでうまくいかず、子どもが落ち込んでいる。理不尽ではないかというご相談です。

いただいたメールでしか判断できないので、間違っていたらごめんなさい。
息子さんが落胆していることを心配されていますが、文面からは非常に感傷的になっていることが伝わってきます。感傷的というのは、過度に感情に流されやすい状態を指します。

もしかしたらこのことが一番堪えているのはお母さんかもしれません。お母さんと同じようにサッカーをしていた子どもを持つ親なので、お気持ちは察します。しかし、親が感傷的になった結果、子どもが不安定になったり、成長を阻害したりすることは少なくありません。

■一見コーチへの疑問のようで、主語がお母さんになっている息子さんの自己決定を見守って


例えば、ご相談文にある以下の三つを並べてみましょう。()内は文脈の説明です。

「今まで練習もしたこともなければ、やり方も教わったことのないポジションを、突然試合でやれと言われても無理があります(←無理があると私は思う)」

「トレセンの大会出場のためやむなく自チームの練習を2回休んだだけで、ポジションを外されるのは当然のことなのでしょうか(ポジションを外されるのは間違っていると私は思う)。
トレセン選手への理解が無いことの表れではないでしょうか(理解がないと私は思う)」

「こんなにも理不尽なコーチの要求に耐えるべきでしょうか(耐えるべきではないと私は思う)。私はいじめにさえ感じています」

これらすべて、主語がお母さんです。

一見すると「コーチの要求に耐えるべきでしょうか」と疑問形になってますが、「このコーチ、おかしいですよね」とこころの叫びをぶつけているようです。

小学6年生。あと半年少しで中学生になります。お子さんが、自分自身が感じたことを自分の言葉でコーチに伝えたほうが彼の成長につながるはずです。逐一親の意向で誘導してしまうと、例えばお母さんたちがこのコーチともめてしまって新天地に移籍したとしても、そこでうまくいかなかったとき息子さんはあなたがた親を責めるでしょう。

よって、お母さんが息子さんに「これからどうしたい?」と尋ねたのはとても良い対応です。
その際本人は「本当はCBをやりたいけれど、コーチには言えないのでこのまま我慢する」と言った、と書かれています。

息子さんは自己決定したのだから、そこで「オッケー。自分でそう決めたんだね。じゃあ、がんばれ。いつでも話は聞くよ」と言って見守ればいいのです。

■「共感は良いけど同化はダメ」子どもに寄り添うのは大事だけど親の方が感傷的にならないで


加えて、こんなふうに対応できませんか。

「いきなりフォワードで出たの?うまくいかなかったの?そっかー、残念だったね。でも、街クラブとかじゃ小学生のうちはいろんなポジションをやらせるって聞くよ。
プレーの幅が広がるんじゃないの?」 そんなふうに、子どもの負の感情に共感しつつも、冷静なアドバイスをこころがけてください。

そもそも、私たち親に子どもの人生のかじ取りができる力などありません。子どもが自分なりに気持ちを整理してベストな状態にもっていく力、そんな主体性が育つよう見守ってほしいと思います。 この連載で何度か書いていますが「共感は良し、同化はダメ」とおぼえておきましょう。

息子さんの残念な気持ちに共感して寄り添うことは、親として大事なことです。しかし、親のほうが落ち込んで感傷的になってしまうと、子どもの感情に同化することになります。同化すると、親としての立ち位置や役割を見失ってしまいがちです。

息子さんにまつわるどんなことも「結果」よりも「プロセス」を見てください。寄り添う大人がプロセスを重視するほうが子どもを成長させることが脳科学的にわかっています。

この試合でどうだった、あの試合ではこうだったと目先の結果ばかりを追いかけて干渉してしまうと、子どもの意欲やモチベーションをつぶしかねません。

■子どものサッカーで親が入っていいのは、暴力や暴言、ハラスメントと思われる事象が起きたとき


その点からすれば、ここに書かれている指導者たちの言動は残念です。トレセンのコーチから「何で今日はCBで出ていないの?どうしたの?」と聞かれた、とありますが、そんなことを子どもに尋ねるほうがおかしい。

所属の指導者と話せばいいことです。トレセンにもチーム同士の対抗戦があり、そこで勝つことを目標にするコーチももしかしたらいるかもしれません。

所属の少年団コーチによる「トレセンの試合でいない日の練習で、CBに適した選手が見つかったので、あなたのお子さんには、FWをやってもらいます。加えて、あなたのお子さんは足が遅いので一発で抜かれるのが怖い」の説明も耳を疑います。

とはいえ、お母さんはご相談文に「トレセン」の言葉を7回書いています。そのうえ「繰り返しますが、息子はチームからの推薦で2年間CBとしてトレセンに合格しています」とあります。自慢なのかもしれません。が、もしかしたら態度や言葉ににじみ出ていて、コーチたちの反感を買っているのかもしれません。

サッカーの時間と空間は指導者と選手のものです。そこに親が口を挟むべきではないと私は思います。親が入っていいのは、暴力や暴言、ハラスメントと思われる事象が起きたときです。

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■ポジションの件は今後のサッカーキャリアを考えると些末なことそれよりも......


トレセンでチーム練習を休んだら、大会当日やったことないポジションにさせられた。理不尽な要求に応えるべきか悩む問題
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

結論を言うと、息子さんが楽しく精一杯自分なりにサッカーに取り組んでいるのであれば、そのことを認めましょう。

いまチームでどのポジションをやろうが、彼の長いサッカーキャリアを考えれば些末なことです。

この機会をぜひ「子どもの手を離す時間」にしてください。どんなときも「君に任せるよ」と言える。本当はやや心配でも「好きなようにしなさい」ときっぱり言える。そんな態度が息子さんの主体性につながります。
揺れる、戻る、の繰り返しかもしれませんが、少しずつ手を離しましょう。

トレセンでチーム練習を休んだら、大会当日やったことないポジションにさせられた。理不尽な要求に応えるべきか悩む問題

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)

ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「ファジアーノ岡山「地熱」の奇跡 親会社なき市民クラブがどうやってJ1昇格を遂げたか 」(竹書房)

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