子育て情報『早期英語教育で育った子どもが日本語と英語を「ごちゃ混ぜ」に話すのは心配不要?』

2022年7月22日 11:00

早期英語教育で育った子どもが日本語と英語を「ごちゃ混ぜ」に話すのは心配不要?

この見解が日本の乳幼児健診の場や保護者などに共有されているとは考えにくい。そこで本論文では、バイリンガル児のCSを言語発達の問題として危惧するべきか否かの検討を目的に位置付けた。

■ コードスイッチングで言語発達の問題を診断することは困難
特異的言語障害のバイリンガル児18人と定型的な言語発達のバイリンガル児18人(平均5〜6歳)を比較した研究(Gutierrez-Clellen et al., 2009)によると、CSを含む発話の割合は両群で差がなかった。また、両群ともに、CSを含む発話文は文法的であり、大人のバイリンガルと同様の典型的なパターンであった。CSそのものが言語障害の診断基準にならないことを示した研究の一例である。

また、言語障害児のCSの特徴を明らかにしようとした研究もある。例えば、Greene et al. (2012)は、アメリカ在住のスペイン語・英語のバイリンガル児(5歳)606人を対象にした大規模な調査を行った。結果、言語障害の疑いがある幼児が定型発達児とは異なる特徴をもったCSを行う可能性が示されたが、それらが言語障害と直接的に関係しているかは明らかになっていない。
別の研究(Iluz-Cohen and Walter, 2012; Bhat and Chengappa, 2005)においても、CSの特徴によって言語障害の有無を見分けることは困難であることが示されている。

よって、バイリンガル児は言語障害の有無にかかわらず同様のCSを行うため、CSそのものが言語障害の兆候である可能性は低いと考えられる。言語障害児が何かしら定型発達児と異なる特徴をもつCSを行う可能性は否定できないが、もしそうだとしても、それらが言語障害によるものなのか、言語以外の障害によるものなのか、もしくは個人的な言語経験(各言語への接触頻度や使用場面、意識など)や社会的状況(発話時の環境や相手など)によるものなのかを明らかにしない限りは、CSのある特徴を言語発達の問題と結びつけることはできない。

■ コードスイッチングはバイリンガル特有の高度な能力
本論文で取り上げた言語病理学的研究では、共通して、CSは「symptom(症状)」ではなく「ability(能力)」と表現され、二言語を活用したバイリンガル特有のコミュニケーション力として捉えられている。こうした二言語の使い分けは、発語が始まったばかりの乳幼児にも見られ、CSは二言語の混乱や二言語の区別がつかないことの表れではない。

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