子育て情報『早期英語教育で育った子どもが日本語と英語を「ごちゃ混ぜ」に話すのは心配不要?』

2022年7月22日 11:00

早期英語教育で育った子どもが日本語と英語を「ごちゃ混ぜ」に話すのは心配不要?

そして、CSを行う理由は、二言語間の語彙知識の差を埋めるためであるとは限らない。実際に、1歳半の子どもが言語を切り替えた対象は、もう一方の言語でしか表出したことがない語彙である場合もあれば、両方の言語で表出したことがある語彙の場合もあった、という研究報告(Lanvers, 2001)がある。
また、Raichlin et al. (2018) は、5〜7歳の幼児が両言語で知っている語彙に対して相手や話題、状況に合わせた言語に切り替え、効果的なコミュニケーション方法になっていたことを報告している。さらに近年の言語学では、CSは、効果的にコミュニケーションを図ろうとするバイリンガル特有の能力として肯定的に捉えられている。

では、バイリンガルは、どのように二つの言語知識を脳内で処理しているのだろうか。心理言語学・神経言語学の分野における研究によると、バイリンガルはそれぞれの言語を完全に別々の知識としてもっているのではなく、二言語間で何らかの知識を共有している可能性がある。また医学の分野においては、バイリンガルの脳では第一言語使用時の活動部位と第二言語使用時の活動部位が部分的に重複していることが実証されている。例えば、バイリンガルは、モノリンガルよりも多くの部位が言語に関わり、両言語において活動する共通領域と、どちらか一方の言語でしか活動しない特異領域が存在していた(Rounx et al., 2004)。
さらに、近年は、バイリンガルが言語を切り替えるときに働く脳領域も明らかになってきている。
それは、あらゆる認知機能の働きをコントロールしながら複雑な状況下で目的を実行するために必要な「実行機能」を担う脳領域である(Hernandez et al., 2001)。相手が理解する言語やその環境で使用されるべき言語を察知する、効果的に伝える方法を考える、適切な言語を選択する、選択した言語で話し続ける、状況に応じてもう一方の言語を使用する、というように、この「実行機能」と呼ばれる高度な認知能力がバイリンガルの複雑な言語処理を支えているのだ。

■ 大抵の場合、コードスイッチングは心配しなくても大丈夫
本論文で提示した言語病理学的研究によると、バイリンガル児は、言語障害またはその疑いの有無にかかわらずCSを行う。一つの発話や文章の中で二つの言語を交互に使用することは、言語発達の遅れや言語障害の兆候ではなく、二つの言語知識を活用してコミュニケーションを図ろうとするバイリンガル特有の言語行動であり、言語の切り替えは高度な認知能力を必要とする。

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