全国的に暑くなることが予測されている夏に向けて「異常気象と気候変動の関係と子どもの健康問題」についてセミナーを開催
このような考え方を参考にして開発した方法が、「イベント・アトリビューション」という、1つの異常気象に対して地球温暖化の影響を証明する研究になります。
疫学では「人のデータ」をたくさん集めてきますが、異常気象に対する地球温暖化の影響を証明する「イベント・アトリビューション」では、「地球」をたくさん集めてきます。気候モデルによって、たくさんの模擬的な地球を作り出すことができるので、一つの異常気象に対してたくさんのシミュレーションを行います。
ただし与える条件を少し変えて、片方のグループは温暖化が進行している現実的な状態、現実的な温室効果ガス等の排出量を与えた状態でシミュレーションをします。もう1つのグループでは、温暖化しなかったと仮定した仮想的な地球、人間活動による温室効果ガス等のレベルを産業化前のレベルに落として、その上でたくさんの地球を作り出す。この2つのグループを比較して、実際に観測されたような異常気気象がどれくらいの確率で起こったのかを検討します。
・異常気象と気候変動の関係性を証明した「イベント・アトリビューション」で見る2023年の猛暑
実際に過去に発生した異常気象に対してこのイベント・アトリビューションを適用した例を紹介すると、やはり皆さんの記憶で1番新しいのは昨年の猛暑だと思います。
高温イベントの発生頻度
このグラフは、横軸に書いてある気温は日本の上空1,500メートル付近の気温です。
そして実際に観測された気温が縦破線です。そしてヒストグラムを滑らかな線でつないだ山形で書かれている2つの線が頻度分布です。
100個の地球があって、その100個の地球における日本上空の気温がそれぞれどの値に位置していたのかをヒストグラムで表しています。
赤い線は「温暖化ありの現実的な条件」で計算した100個のシミュレーション結果で、青い線は「もし地球温暖化がなかったらという条件」で計算した100個のシミュレーション結果です。
昨年の猛暑にイベント・アトリビューションを適用してみると、温暖化している条件では発生確率が1.65%、温暖化していないと発生確率が0%なので、温暖化がなければ昨年のような異常なことは起こり得なかったということが証明されたわけです。
・今後「イベント・アトリビューション」に期待する健康被害への警告
イベント・アトリビューションの結果は、今後、健康影響や人間の体への影響につなげていかなければいけないと考えています。