全国的に暑くなることが予測されている夏に向けて「異常気象と気候変動の関係と子どもの健康問題」についてセミナーを開催
熱中症死亡者数の推移
過去に熱中症で死亡した数、死亡者数の数が1番多かった年は2010年の猛暑の時でした。この年は日本漢字能力検定協会が発表する「今年の漢字」が「暑」になったぐらい暑い年でして、7月、8月が当時非常に暑くて、年間で1,700人近くの方が亡くなったという年になります。その2番目に来るのが2018年、「最大級の猛暑」という言葉が話題になった年になりますが、この年は7月の時点で1,000人を超える方が亡くなっていました。
2018年は、200名近くの方が亡くなった7月初めの西日本豪雨が非常に大きく悲惨な異常気象として皆様の記憶にも残っていると思いますが、その後の1ヶ月に熱中症でその5倍近くの人命が奪われていたことは、あまり報じられていませんでした。というのも、熱中症による被害は、季節が終わった後にデータが公開されるので、認識されにくいという現実があります。
このように熱中症の被害と、イベント・アトリビューションのデータを結びつけて、熱中症による被害者に対しても地球温暖化がどれくらい影響しているのかをきちんと定量化できるように手法を改善していこうと、今、医学の研究者の方たちと協力しながら取り組みも進めております。
イベント・アトリビューションの1番の意義は、目の前で起こった異常気象に対して地球温暖化の影響をエビデンスで示す、ということです。そもそも地球の温度が1度や2度上がることがそんなに大変なことなの?と思っている方達に、本当に大変なことなのですよ、と実感してもらうことを目的に取り組んでいます。
実感を通して、今度は皆さんにぜひその将来に対する想像力を持ってほしいと思います。現在、この地球温暖化によって異常気象が起こってしまっていて、これがさらに温暖化が進行したら我々の生活はどうなってしまうのだろう、というのを、目の前の異常気象を通して想像していただきたいということです。その上で、本セミナーのテーマである子どもたちへの健康被害を想像していただくというのは「備え」という意味では非常に重要だと思いますし、また、そのようにならないために、どのような対策が必要かを、1人1人に考えていただき、問題解決に向けた行動、特に国が打ち出す緩和策にどのように協力していくかということをぜひ考えていただければと思っております。
■東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 教授 藤原先生「気候変動と子どもの健康」