全国的に暑くなることが予測されている夏に向けて「異常気象と気候変動の関係と子どもの健康問題」についてセミナーを開催
姫路の夏の平均気温が1度上昇すると、奇しくも香港と似たような数字ですが、夜間の受診が1.2倍増えます。これらのデータから言えることは、熱が直接、喘息のリスクや病状悪化のリスクを上げているということです。
気温上昇で喘息が悪化するメカニズム
では、なぜ熱が喘息の原因になり得るかについてですが、1つは熱い気温に晒されると気管支のC繊維(知覚神経)が刺激されて、気管が閉まるようにできているからです。例えば、火山の火口に立った時にものすごく熱い空気が出てきたら息してはいけないとなるイメージです。もう1つは、気温が上がることによって花粉やカビなどのアレルゲンが増えることで、リスクを上げるだろうと考えられています。
・「早産」や「発達障害」も
他に考えられる健康影響としては、「早産」と「発達障害」が挙げられます。
「早産」に関して、1日の平均気温が30度になってくると、平均気温が16度と比べて早産のリスクが8%という解析結果があります(同じ季節、例えば初夏の平均気温が16度だった頃と、平均気温が30度になる場合を比較すると、早産のリスクが8%程度高まってくるという解釈)。メカニズムは、気温が高くなると脱水を引き起こして、子宮への血流が減ってしまう。
そうすると母体を守ろう、胎児を出さなければと分娩が誘発されるといった説明がされます。
「発達障害」については、気候変動というか、気温、熱によって、直接発達障害のリスクを上げるという事実はまだないのですが、間接的に、気候変動によって増加すると考えられる大気汚染や農薬の使用が、発達障害のリスクという風に考えられています。PM2.5の程度も違うので、直接的に日本に応用できるかは分かりませんが、アメリカのデータによると、2歳までのPM2.5の暴露によって、自閉症スペクトラム障害のリスクが1.5倍近くになるといった例があります。
日本に関連するエビデンス:発達障害
発達障害のメカニズム
このような健康被害に対する対策としては、熱中症など直接的な影響に関しては医者からの注意喚起も大事だと考えています。さらに間接的な影響に対しては、空気が綺麗な広い遊び場を確保する、早い時期から外遊びを通して汗をしっかりかけるようにするなど、また間接的な影響へのもう一つの対策は、化学物質使用の規制など、レギュレーションをしっかり決める必要があると考えています。