ココ・シャネルもびっくり!? 袖に魂が宿る古き良きもの【私をしあわせにしてくれる1000のアイテム】#0065
着物という言葉は、「着るもの(着物)」として幅広い衣服をさします。
しかし、世界的に洋服が主流になった今、着物は「和服」として分類され、普段着とは違う特別な時に着るものとして、位置づけられてしまっているようです。
着物を着ることは、日本人特有の贅沢な特権。
せっかく日本に生まれ、いつでも着物を着ることができる特権があるのに、着物を特別な時しか着ないという現代の流れはとても残念です。
留袖や振袖、訪問着、小紋など、着物の種類は実にさまざま。洋服のように夏服・冬服というだけではなく、季節によっても着る着物が変わってきます。
さらに着物や帯には、柄や紋の数、色合いや雰囲気によって決められている「格」があり、T.P.O.に合った着物の選び方やコーディネートが求められます。
それゆえ、着物を着るには最低限のマナーと知識が必要となります。
このような堅苦しさや難しさが、現代の着物離れが進む原因となり、より気軽で動きやすい「洋服」を選ぶことが多くなっていると考えられます。
“着物一枚に帯三本”
昔から言い伝えられているこんな言葉があります。「着物が一枚と帯が三本、それさえあれば着こなしの幅がとても広がる」という、素晴らしい言葉です。
日本にはこんな素敵な言葉もあるくらいなのに、それでも着物は“何だか大層でとっつきにくいもの”とされていて、とても悲しいものです。
私の実家には、着物がいっぱいにつまった桐箪笥が2つあります。これらは、大好きな私の2人の叔母から譲り受けた、大切な宝物。
そして、叔母たちもまた、自分の母親、つまり私の祖母からこの大切な宝物を譲り受けたそうです。
叔母たちの幼いころは、けして裕福でなく、どちらかといえば貧しい方に分類される家庭だったにもかかわらず、みすぼらしい恰好をしたことがなかったそう。
「着る物だけはきれいなものを」。
それは私の祖母の口癖であり、古き良き時代の日本女性のプライドと、子供への大きな愛情がそこに存在したのだと、感慨深くなります。
着物には不思議な力があります。
着物を着ると、背筋をシャンと伸ばしたくなり、自然と女らしいしぐさになります。普段はスカートのシワなんて気にならないガサツな私でも、着物を着たときは裾や袂(たもと)に気を使い、おしとやかな動きがしたくなるのです。
昔から、着物の袂には魂が宿ると言われており、愛する人に向かって袖を振ることで相手と心を通わせることができると信じられていました。
物言わぬおしとやかな大和撫子だからこそ、自分の気持ちを愛する人に伝える方法が、着物の袂を振ることだったのです。
日本という国は、なんて情緒的でロマンチックなんだろうと思いませんか?
着物に触れ、着物を着ることによって、私たちは古くから伝わる日本女性の美しさや清楚さ、芯の強さを自然と教わっているような、そんな気がしてやみません。
だからこそ私は、日本人女性にもっと着物を身近に感じ、着物を着る機会がもっと増えてほしいと願っています。
Photo by Pinterest