【労働を売るしかない都会の苦しみ】おばあちゃんから見た若者の働く姿って?
それからずいぶん歩いて、やっと家が見えてくるって感じの田舎です。もう着くだけで息が切れてしまいますが、今回のおばあちゃんは81歳になる人で、現役で農家をやっていらっしゃる方です。
今日は若い人たちの仕事についてどう考えているか、お聞きしたいと思います。
仕事、ですねぇ、このあいだニュースでもやっていましたけれど、時給が1,500円でも、人が来ないところがあるそうですね。
だけど、そういうところって、たぶん2,000円に上げても人は来ないと思いますよ。
時給は関係ないのです。
ただ、機械みたいに忙しく働くのは、非常につらいのでしょう。
給料は安くても、もっとやりがいのある仕事を求めているんじゃないですかね。
とはいえ、都会に住んでいると、やりがいのある仕事でも、長続きしないんじゃないでしょうか。
また田舎とは違った大変さがあるんだと思いますよ。
ずっとひとりで住んでいらっしゃいますが、不安はありませんか。
夫が亡くなり、ひとり暮らしになってもう6年目です。次男が一緒に住もうと言ってくれましたが、断りました。
やはり嫁と姑の問題も出てくるでしょうし、ここでは何をしていても、動いているっていうことを実感するので、補助はいらないんです。
都会に住んでいる人の方が不便かもしれませんね。周りにはコンビニも病院もあるでしょうけど、そこに行くには「自分の労働」を売るしかないからです。
給料を貰うっていうことは、大変なことですよ。
私は今の時期、近所の人に頼まれて、ナシを仕分けして梱包するんですよ。時給にしたら安いのかもしれませんが、そのお金で孫たちに何か買ってやることもできます。
おばあちゃんは、そう言ったあとに、ナシを新聞紙に包み、ビニール袋に入れて「持っていきなさい」と差しだされました。
こちらが断ると「どうせ傷がついとるから、いいとよ」と笑いかけてくれました。
すぐそばに見える山は、もう紅葉の季節になっています。
もみじと銀杏、それに流れる川を眺めながら、帰りのバスを待ちました。ナシの重さを感じながら、ここに来てよかったな、と考えました。Photo by Pinterest