「本当にこれでよかった?」加害者親との話し合いは決裂…私の対応は間違っていた?<子どもトラブル>
安田ふくこさんの三男・ケイくんが小学2年生のときのお話です。ある日、ケイくんは小学校の敷地内で、同じクラスの女子・Sさんの兄に、「Sにひどいことをしたんだから、ごめんなさいを言ってよ」と身に覚えのないことで謝罪を求められ、泣かされてしまいました。実はクラスの女子・Aさんが、ケイくんの発言を歪曲してSさんに伝えたことで誤解が生じていたのですが、その事実を担任の先生がSさんの母に説明しても、聞く耳を持ってもらえなかったそう。Sさん家族について情報収集をするうちに、Sさんの兄がふくこさん宅前の靴屋でアルバイトをしていたことがあり、品出しをしながら、ふくこさんの家の様子をうかがっていた可能性があることも判明。学校側には、必要なときにはSさんたちと距離を置かせてもらうようにお願いしたものの、校長先生も、教育課の支援教育部のマネージャーも、きれいごとばかりを並べて、今回のトラブルを穏便に収めようとするのでした。
そんな中、偶然なのかSさん親子がふくこさんの目の前に現れたため、冷静に話し合いを試みることに。しかし、Sさんの母は「あの子が勝手にやった」と、自分を守ることしか考えていない発言を繰り返すばかり。
ふくこさんが、「しかるべき手続きを踏んで、大事なものをなんとしても守らせていただきます」と真正面から伝えると、「はいはい、ウチが悪かったですっ! どーもすみませんでした!」と言葉を残し、Sさんの母は子どもを引きつれて立ち去ってしまったのです。
その後、担任の先生は今回のことを謝罪してくださる一方、校長先生や教育課の支援教育部のマネージャーは「参りましたね……」と言うばかり。
厄介な親だと思われたとしても大事なケイくんを守るため、ふくこさんは「ご経験が豊富な先生方には、どうか現場の先生を支えていただきたい」と、正直な気持ちを先生方に伝え、ケイくんのもとへと向かったのでした。
「そうなってしまう分岐点」は意外と身近に
帰宅後、振り返ってみると「これでよかったのか」と思うことばかり。
ふくこさんは、その日学校で起きた出来事と、その場で考えていたこと、自身の対応で後悔したことなどをすべて夫に聞いてもらいました。
そんなふくこさんの気持ちを受け入れ、夫は「急なことだったのによく頑張ったよ」と認めてくれたのでした。
また、ふくこさんにも、子育てがつらく孤独だった時期があったからこそ、「夫が何ひとつ変わっていなかったら、私はどうなっていたんだろう……」という思いも頭をよぎります。
Sさんの母親のようになる「分岐点」は意外と近くに、そして誰にでもあるのかもしれないと思ったのでした。
圧倒的な孤独感の中で育児を続けるのは、とてもつらいこと。
ふくこさん夫婦のように、本音を打ち明けることができ、協力して一緒に歩んでくれる人がいると、とても心強いですね。パートナーと支え合い、互いに歩み寄れる関係を維持するためには、ふくこさんが意識しているように「ありがとう」という気持ちを言葉にすることが大切なのかもしれません。
著者:マンガ家・イラストレーター 安田ふくこ