コーエン兄弟インタビュー 登場人物をいじめ抜くヤツらの流儀!
(Photo:cinemacafe.net)
物語の舞台は1967年のアメリカ中西部。2人の子供時代を反映させたと思しき本作だが、物語の中心にいるのは子供ではなく、ごく平凡な大人のラリー(マイケル・スタールバーグ)である。
イーサン:取り組み始めたときには、大人の視点と子供の視点がもっと等分に分かれていたと思うんだけど、脚本を書いているうちに、大人の方に引き寄せられていったんだ。なぜなのかは分からないけど。
でも、僕らはこの作品を自伝的なものだとは思っていない。舞台となっているのは確かに僕らが育った場所なんだけど…。
ジョエル:その当時、僕らはダニー(※ラリーの息子)の年齢だった。でも僕らはダニーのキャラクターがなんらかの形で僕らを代弁するような存在だと思っていなかった。この設定の外側のストーリーの出来事は作り上げられたものだ。僕らはヘブライ学校に通い、バーミツバーの儀式(※ユダヤ系の少年が行う13歳の成人式)をし、同じようなコミュニティの中で暮らし、父親は(劇中のラリーと同じ)大学の教師だった。でも、ラリーとダニー親子に起こったことは、全てフィクションだよ。映画の中では音楽を聞いていたとしても、現実の僕らは授業中に音楽は聞かなかった。
実際、ジミ・ヘンドリックスとか、何曲かは1967年以降のものだしね。
それでも、本作が2人の“私的な”映画であることをイーサンは否定しない。ジョエルはまた違った意見を持っているようだが…。
イーサン:ある意味ではそうだと思う。なぜ全部肯定しないかって?この映画で描いているのは、僕らが育った場所であり、時代だけど、起こることについては、自伝的なものではないから…。でも設定は大きいよね。それが物語の全体の感じを決めるから。その意味では、ほかの映画とは違って、僕ら個人につながるものはあるかもしれないけど。
ジョエル:僕らがここで描いていることが僕らのほかの映画とは違っているように感じられるってこと?僕はそう思わないな。設定だけじゃないよね。“私的”ってどういう意味なのかな?僕らはユダヤ人だ。僕らがどこで育っていようが、それが僕らのアイデンディティの重要な部分を占めている。僕らはミネソタで育ち、ミッドウェスタンの感性に特徴づけられている。それが、僕らは何者かということだ。でも、映画を作る過程で、自分が何者かということが影響することは確かなことだ。月に猿を送る映画だったとしてもね。
まあ、みんながそんな風に言うのは理解できるけど。
それにしても、ラリーに押し寄せる運命は見ていて気の毒なほど…。なぜ、2人は、自分たちの映画の登場人物をいじめずにいられないのだろうか?
ジョエル:イーサンも言うように、良いことより、悪いことが起きる方が、より面白いストーリーのネタになるんだよ。悪いことの方が、別のことにつながっていくんだよね。7月にクリスマス映画を撮るようなものだ。宝くじに当たると何か悪いことが起きる。その方が、ストーリーがダイナミックになるんだ。僕らはそのことを愉しんでいるんだよ。
イーサン:誰かに悪いことが起きるというのがコメディの常套手段だ。誰かの不幸っていうのは他人にとっては滑稽だからね。
他人の不幸を愛してやまない兄弟…。それでも運命の女神、いや、人々は彼らを支持するのだ。コーエン兄弟をコーエン兄弟たらしめる不条理なドラマにご注目あれ!
© AP/AFLO
特集「2011年 第83回アカデミー賞」
http://www.cinemacafe.net/special/oscar2011/
■関連作品:
第83回アカデミー賞 [アワード]
© Bob D’Amico/ABCシリアスマン 2011年2月26日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開
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