UK出身の若き注目株、マーティン・コムストン『アリス・クリードの失踪』インタビュー
(Photo:cinemacafe.net)
ダニー役には「“若いコリン・ファレル”が欲しかった」と語るJ監督だが、アリス役のジェマ・アータートン、中年男ヴィック役のエディ・マーサンが決まっていく中で、ダニー役だけが撮影2週間前になっても難航していた。そんな中で名前が挙がると同時に、Jが頭の中で「カチリと噛みあった」と一種の安堵感を感じたのがマーティンの存在だった。
しかし、当のマーティン本人は当時をこうふり返る。
「実はこの脚本をもらったとき、僕はアメリカに行こうと考えていたんだ。それにある意味、僕はこの脚本を熱心に読んでいなかった、だってジェマとエディがキャスティングされていて、僕がこの役を得なかったら本当に落ち込むだろうし、多少気の滅入るような状態でアメリカに行くことになってしまうと思ったんだ」。
だが、彼の抱いていたあらゆるプレッシャーは、監督率いる製作チームと対面したことで、払拭されたという。
「僕の人生の中で最も素敵なオーディションだったと思う。彼らはランチにやって来て、僕らは座って1時間ほど雑談をしていたんだ。自分が上手くやるよう期待されているのが分かるのは、素晴らしいことだったよ。それは常に自分に対して多少の自信をもたらすしね」。
そして、若き才能との出会いは、互いに引き寄せられるように確固たる信頼を生みだした。Jとの共同作業を通して、マーティンは「彼はとてもいい監督だし、欲しいもの、必要なものを得ている。そうしながら彼は僕らを自由にして、僕らがやりたいことをやらせてくれた」と語る。
生へのしぶとさを見せる人質のアリス、そして一寸の狂いも許さない首謀者のヴィックに挟まれ、ひとり頼りなさを漂わせるダニーだが、あらゆる予想を裏切り、やがてねじれていく彼らとの力関係が見どころの本作。マーティンはダニーをこう分析する。
「もっとも良い説明の仕方は、おそらく“操られバカ”だろうね!若い俳優が演じるのには素敵な役だ。彼は主犯じゃない、エディのキャラクターはその場を仕切っていて、ダニーはただの召使い、だけど彼が実はある理由で騙されたフリをしていて、全員を互いに対立するよう仕向けていると分かってくるんだ」。
生き残りを賭けたせめぎ合いの中で、ある意味最も強欲で、本能のままに従っていく一番の“正直者”とも言えるダニーだが、それゆえに致命的な失敗を犯してしまう彼の人間らしさに、マーティンは共感を寄せる。
「ある意味では僕は彼のことが好きなんだ。だって彼はとても日和見主義で、いまこの瞬間を生きている、それは役者として演じるのは素晴らしいものだよ。彼は物事の結果について考えず、自分自身を嘘の網に巻き込んでしまう。でももちろん、ひとつの嘘を隠すためにもうひとつ嘘をつくし、彼はそれがどこへたどり着くのかあまり考えず、ただ次の10分間を持ちこたえようとしているだけなんだ」。
そんなダニーの欲望の的となっているのは、金、そして…。この先はネタばれになるので控えるが、Jの言葉を借りるなら、本作は単なる騙し合いのサスペンスではなく、“ある種のねじれたラブストーリーへと変化する誘拐スリラー”だ。その中で、時にコミカルを含んだ形で表れる、マーティンの“変貌”に、親しみを感じずにはいられないはず。さて、あなたはダニーの運命にどう賭けてみる?
特集:『アリス・クリードの失踪』
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アリス・クリードの失踪 2011年6月11日よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開
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