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【インタビュー】森七菜「彼女たちの強さを守る」覚悟して挑んだトー横のリアル

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【インタビュー】森七菜「彼女たちの強さを守る」覚悟して挑んだトー横のリアル


夢と光を求めて新宿・歌舞伎町へ流れ着いた少女、じゅじゅ。カルト宗教を信仰する厳しい両親と家庭環境から逃れた彼女が、この街で生き、やがて“炎上”事件を引き起こすまでの150日間を描く映画『炎上』。監督を務めるのは、『WE ARE LITTLE ZOMBIES』の長久允。街のニュースや現場取材をもとに、5年の歳月をかけて物語を構築し、新宿・歌舞伎町でのロケも敢行。個性的な映像表現で注目を集める彼が、外から批評するのではなく、この場所で生きる人々の息遣いを独自の視点ですくい取っている。

ヒロインを演じるのは森七菜。『国宝』『フロントライン』など話題作への出演が続き、その演技力に高い評価を得る中、本作では社会問題を内包した役どころに挑み、これまでにない表情を見せている。作品に込めた思い、そして“じゅじゅ”という少女をどう生きたのか、その胸の内を聞いた。


新宿に寝泊まりして挑んだ役作り


――どのような思いで、本作への出演を決められたのでしょうか。

決めたと言うよりは、この映画で“じゅじゅ”として生きて行くんだろうなという予感のようなものを受け取りました。もちろん、素敵な脚本だったこともありますが、ご縁を感じ、直感のようなものが強く働いて。脚本を読んだ瞬間から、やることが決まっているように感じ、覚悟ができていました。

――監督は実際に綿密な取材を重ね、深刻な社会問題を取り上げています。作品で描かれているような生活を送る当事者がいる。この作品と向き合うと決めたとき、ご自身の中でどんな思いがありましたか。

実在する場所が舞台ですし、本当にある問題だからこそ、この映画によってトー横にいる子たちが傷つくことは決して許されないと思っていました。
彼女たちの強さを守る、その強さを守ったままこの映画を作りたいと思っていました。勉強したり、長久監督からお話を伺ったりして、慎重に作ろうと思っていたんです。

――役づくりのために、工夫したことはありますか?

実際、新宿に寝泊りしました。他にもいろいろな方法で、まずは、じゅじゅに近づけるように努めました。最初、主人公はトー横にいないという設定なので、長久監督が作られた世界観の中に、自分自身がじゅじゅとして飛び込んでいく気持ちで馴染んでいけたらいいなと思って演じていました。

――実際に新宿に寝泊りすることで、肌で感じられたものは大きかったですか。

大きいですね。新宿は特殊でとても特別な場所。
私も大好きな街ではありますが、東京のカオスのような部分が多く含まれる街。空が暗いか明るいかだけでしか昼なのか夜なのかが判断できない。酔った人も常にいるし、通勤している人も常にいる。時間の感覚が曖昧になるあの感じは、そこに住まないと体験できない。新宿に住んでいる時ならではの自分、体調のようなものを感じました。

“じゅじゅ役”は「奇跡のような出来事」


――撮影後、森さんは「自分自身がどこにいるのか分からなくなる撮影期間でしたが、彼女たちの強さを守るために進んだ一ヶ月半でした。見てくれた方がこの物語をどんな風に捉えることになるのか想像がつきません。だけど私たちから何も奪えないことを、地獄には知って欲しい」とおっしゃっています。
心に傷を持つ「じゅじゅ」に挑んだ並々ならぬ思いを感じました。

出演を決めた当時は、事の重大さをあまり感じていなくて。じゅじゅが受けた影響がどれほど強く、どれだけ重いものだったとしても、演じている時は辛いとは思っていませんでした。ただ、作品を2回観ましたが、2回目に実は辛かったという感情を思い出して。「そうか、辛かったんだな、自分」と思ったら泣けてきて。演じていた時は麻痺していた感覚が戻ってきたという感じです。

――それだけ役に入り込んでいたということですね。

そうであれば理想形。
そうだといいなと思っています。

――俳優さんには、ある時期にしかできない役というのがあるかと思います。「じゅじゅ」はまさに、今の森さんだからこそできる役だと感じました。

もうすぐ十代の役もできなくなるし、じゅじゅに喜んでもらえるように誰よりも思いを込めて作ったつもりです。長久監督の5年という着想期間を経て、ちょうど年齢的にも私がじゅじゅ役に選んでいただけるタイミングが来た。奇跡のような出来事だし、自分が初めて一人で主演するのがこの作品で本当に良かったと思っています。――長久監督は森さんについて、「ピュアな役をたくさんやられている印象があったが、森さんの内側にはもっとドロドロとしたマグマのような真っ赤なエネルギーを抱えているのではないか、と勝手に想像していました。そんな森さんは本作の主人公・じゅじゅにぴったりだと感じオファーをしました」と語っています。


嬉しいです。 自分のことを、表面にとどまらず、その奥まで見ようとしてくださった。すごく信頼のできる方だと感じました。

“じゅじゅ”として「今」を生きる


――完成した作品を観て、まず感じたこと、そして観終えた後の感想を教えてください。ポップな演出でシリアスな出来事や心理状態を描ききる点に、今のトー横のリアルを感じますが、この演出についてはどう感じましたか?

こんな風になっているんだって驚くことも多かったです。予想してない部分もいっぱいありました。普通だと思ってやっていたことに、客観的になることで気づけたこともありました。

――森さんがトー横のティーンエイジャーたちの強さを守りたいと思って演じていたものが、監督によって作品の中で生かされていたところを実感できたということなんでしょうか。


はい。驚くようなことだけどこの街では普通に行われている、そんな感覚を根底に持ちながらお芝居していたので、画面にもそれが映し出されている。映画を見たときにそれが作用していたんです。監督のおかげです。安心しましたね。

――本作は光を求め続けた少女の物語だと感じました。ただし、光の側にはかならず影ができる。でも、いつかどこかで、きっと光を見つけて欲しいと感じました。

じゅじゅの行く先みたいなものを質問されて、正直なところ、初めて自分が彼女の未来について考えたことがなかったと気づいたんです。

――じゅじゅとしての「今」を生きていたんですね。

ラストシーンの撮影の時も、ここからじゅじゅがどうなるんだろうと、観ている方は考えると思うんですけど。私はずっと、じゅじゅの今しか考えていなかったですね。

(text:June Makiguchi/photo:Jumpei Yamada)

■関連作品:
炎上(2026) 2026年4月10日より公開

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